第41話 もう、終わっている

2人は参道を抜けて塔門の前に来ると、笑顔で迎える男が1人いた。幽閉の館では一般の司祭服だが白いカズラには銀糸と金糸で聖花である白百合の刺繍が施され、最高位の色である赤色のストラが肩から垂れていた。そう、最高司祭の祭服を見に纏ったガブリエルが笑顔で待っていた。


「大聖女オリヴィア、ロイド・シルベスタ魔法部隊総長様。お待ちしておりました」


「ガブリエル!あなた最高司祭になったの!?」


「はい、オリヴィア様とアーロンクロイツ様のお陰で、最高司祭になる事が出来ました」


「そうか!頑張ったんだな!」


「禁書が目的で、最高司祭になったのでは?」


「さて?何の事でしょう?」


「凄いな」と、喜ぶオリヴィアに聞こえるか聞こえないくらいの声で呟き、訝しむような目で見てくるロイドを、ガブリエルは笑顔でかわした。


「さあ、オリヴィア様。アーロンクロイツ様が魔女の部屋でお待ちです」


「……魔女って」


「平民アンナの振りをしている、土屋美咲と名乗る異世界からの魔女ですよ」


「異世界って!!」


「教誨堂へ向かいながら、ご説明いたしましょう」


「最高司祭殿!この神殿には教誨堂があるのか!?」


 ロイドは余計にに訝しんだ。この世界で神殿、教会に教誨堂が置かれている場所はなかっからだ。

教誨堂は罪を犯した罪人に精神的、倫理的、メテリウス教を元に人道を説き、更生へと導くように尽くす場所で収容所のような場所だ。


穢れた者達が神聖な場所に居るなんて有り得ないないのだ。それに、教誨堂の所在地は帝国で厳しく管理していたはずだった。


だから、帝国の魔法部隊総長であるロイドが知らないはずがないのだ。


「彼女は異質なんです。神聖力も魔力も少ない者は、直ぐに魅了されて傀儡にされてしまいます」


「魅了だと!」


「はあ、」と、面倒臭いのを隠さずガブリエルはため息を吐くと、歩き出した。その後ろを2人は着いて行くが、オリヴィアは力強く握られる手から、ロイドの不安を感じ取っていた。


「そうです。彼女はこの世界に存在しない力と創造スキルを持っていました。私は、生まれたばかりの彼女に、能力略奪スキルで創造スキルを奪いました」


「まて!ガブリエルは略奪スキルなんて、なかっただろうが!」


「それは、オリヴィア様が引き篭もる前の話ですよ、私はその後にスキルを取得したのです」


「……お前達は、何をしそうとしているんだ……」


「オリヴィア様は誤解してますね」


「誤解、だと……?」


ガブリエルは不敵な笑みを浮かべながら振り向いて言った。


「私達の目的は、すでに終わっているのです」

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