第40話 私が…

とある洞窟の中に、青白く光る巨大な結界水晶があった。その中には純白の長い髪の白いマーメイドドレスを着た女性が眠っている。

結界水晶の前には涙を流しながら女性を愛おしそうに見つめるダークブルーの短髪の男性がいた。

オリヴィアの父のブラームス・カールトンだ。


水晶に手を触れ「解放」と、唱えると水晶が白い煙になり、中にいた女性をブラームスが受け止めた。


「これで全てが揃った。もうすぐ君に会えるんだね、アンジェリーナ」


―――――――――――――――――――――

薬で眠っていたオリヴィアは目を覚ますと、見た事のない白髪の女性が眠っていた。そして、自分が血で描かれ赤い光を放っている魔法陣の中にいる事に気が付いた。そして、ピチャっと水の落ちる音がして身体を起こしながら上を向くと、血の涙がを流している石像に恐怖を感じて「うわ!」っと、声を上げてしまった。


「なんの……、儀式を……」


「オリヴィア…、生きてて、良かった」


アーロンクロイツの声が聞こえて後ろを振り向くと、そこには、倒れている父ブラームスの胸部に聖剣を突き立てているアーロンクロイツがいて、その光景を目にして怒りに顔を歪ませた。


「アーロン!何をしている!」


「…コイツを、殺しただけだよ」


「お父様を殺しただと!なぜそんな事を!」


「さあね、なぜだろうね」


「それに、この魔法陣はなんだ!なんの儀式をしようとしている!」


「う〜ん、何かを召喚しようとしたのかもね」


「召喚だと!この女性と私を、贄にしようとしたのか!」


「姉様は知らないんだね。その人は僕達の母様だよ」


「母様」の言葉にオリヴィアは驚き目を見開いた。今まで継母のカトリーヌが母親だと思っていたからだ。


「母様って……」


ブラームスの身体に突き刺していた聖剣を抜くと、オリヴィアの元に行き跪いた。

不気味な笑みを浮かべながらオリヴィアの両手を取り、聖剣をその手に握らせた。


「この聖剣で俺を貫けば、僕達の母様が蘇るよ」


「……え?ちょっと待って、この聖剣は!」


「ああ、カールトン家に代々伝わる、初代大聖女の聖剣だよ」


「なんでアーロンが持っているのよ!」


「色々とね。オリヴィアはどうしたい?母様を蘇らせる為に僕を殺す?それとも、父親を殺した仇で僕を殺す?」


オリヴィアはアーロンクロイツが何を考えているのか分からずに目を見つめるが、絶望が支配しているような生気のない冷たい瞳をしているアーロンクロイツに悲しさを覚えた。


「アーロン、あなたは何を考えているの?」


「僕が何を考えているかって?それはね……」


その瞬間、アーロンクロイツが氷剣を作りオリヴィアに切り掛かって来た。既の所で氷剣を防ぐと、聖剣に聖力を込めて押し返した。


オリヴィアの力に後ろに飛ぶと、アーロンクロイツは楽しそうに笑った。


「さあ姉様!僕を殺さないと、姉様を殺して母様を蘇らせるよ!」


「アーロンを殺すなんてイヤよ!」


「そう、じゃあ、死んで!姉様!」


―――――――――――――――――――――

はあ、思い出したわ……。

アーロンの首を切って、殺したんだ。その時にロイドが助けに来てくれてそれに甘えてしまった。

それは間違いだったんだ。その時にちゃんと見極めなきゃいけなかったんだ。


全ては私が浅慮だったからいけなかった。ヒキニートになって100年経ってやっと気が付いたんだ。

全ての出来事は私を起点に動いていた事を。

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