第38話 戻って来たのね
ウエイザー公国にある神殿には知られざる部屋があった。
そこは、少し広めの部屋で床も壁も天井も扉も全てが大理石でできていて、中央には大きな創造神メテリウスの大理石の石像がある。
その石像を中心とし血で描かれている魔法陣の上には、オリヴィアと白い長い髪をした老女が並んで横たわっていた。がっしりした体格の白いローブ姿の男が、魔法陣の外で剣身が細いながらも長さのある聖剣の剣先を上に向け両手で持ちながら古代語で詠唱していた。
すると、石像の両目から赤い涙が溢れてだして涙の雫が床に落ちると、魔法陣が赤く光り始めて2人を光で包んでいく。そして、オリヴィアの心臓を聖剣で貫こうとした瞬間に、大理石の扉が爆発音と共に粉々に吹き飛んでいった。
「姉様から離れろ!」
崩れた扉から突進してきたアーロンクロイツは氷剣で切り掛かってが、ローブ男の聖剣で受け止められてしまった。そして、ローブの中の顔と聖剣を見てアーロンクロイツは目を見開き驚いた。
「アンタは……」
――――――――――――――――――――――
ギルバートは一心不乱に3枚の手のひら程の紙に魔法陣を描いている。神殿、ラウル公国のワルギニア村、魔法塔へ移動する為の魔法陣だ。本来なら距離が遠い程に力が必要だが、神殿での戦いに備えて少ない魔力で移動出来るようにしろとオリヴィアのお願い(脅し)で、魔法陣を構築し直しているのだ。
「で……、でき、た……」
と、3枚の神をオリヴィアに渡すとギルバートは疲れ果てて机の上に横たわり気を失った。慌てて駆け寄った弟子がヒールをかけると、青白かった顔に赤みが差してきてイビキをかきはじめた。
オリヴィアは笑顔で紙を受け取ると、どれが何処に行く魔法陣か確認をして神殿の魔法陣をロイドに渡すと、残りを腰に下げている巾着タイプの異空間収納鞄に詰め込んだ。
「お疲れ様!流石はギルバートだ!2時間もしないで描き上げるとは!」
「神殿への移動には、俺が魔力を使う。オリヴィアは聖力を温存しておけ」
「ありがとう、ロイド」
「ああ、では、行こうか」
ロイドはオリヴィアを抱き寄せ左手の掌に乗せた紙に魔力を流すと、青白い光と共に2人は消えて行った。
2人が神殿の塔門へ続く参道に移動した。塔門へ向かって歩いていくオリヴィアの足取りは酷く重かった。
また、ここに戻って来たのね……。
オリヴィアは100年前にアーロンクロイツと戦った時の事を思い出していた。
そう、アーロンクロイツが父ブラームスを殺し、オリヴィアがアーロンクロイツを殺したのが、この神殿だったのだ。
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