第37話 私も重度の
「それで、君達は何故神殿に行きたいのだ?」
研究室の奥にあり応接室に案内されたオリヴィアはパーティーでの出来事、アンナの事、ガブリエルがアンナを神殿に連れて行って事、そして、アーロンクロイツがクリスティンの身体で生きている事を、事細かくギルバートに話した。
「なるほど。しかし、そのアーロンクロイツってやつは、なんで、そんな面倒な事をする?それに、魂と身体が違うってあり得るのか?」
「分からない、オリヴィアの目が無かったら、俺は奴の姿を見る事は出来なかった」
「あれは魂がアーロンだった。もしかしたら、禁忌の魂の交換をしたのかもしれない」
神殿の禁書庫に入れる最高司祭のガブリエルなら、禁書に書かれている魂の交換を使えるのではないかとオリヴィアは考えた。
けれども、まだ16歳のクリスティンの魂と100年前に死んだアーロンクロイツの魂の交換は不可能だ。そして、ふと一つ仮説が頭をよぎった。
もし、あの時死んでいなかったのなら…。
「俺を本気で殺しにきた、あの懐かしい殺気は間違いなく、アーロンクロイツだった」
「なるほど。では、オリヴィア・カールトンは姉として、どう考える?」
「私は……、あの子は……、そうしなきゃいけない理由が、あるのだと思う…」
「なんで、そう思うんだ?」
オリヴィアはアーロンクロイツと共に過ごした日々を思い出していた。弟がいる事を知った日、両親に隠れて会いに行った日々、共に魔法の練習に明け暮れた日々、魔法師隊員として共に魔物を討伐した日々、そして、父を殺したアーロンクロイツを殺した日…。
オリヴィアが世界の全てだったアーロンクロイツは、何かを始めたり、怒ったり泣いたりするも、全ての行動理念はオリヴィアだった。
アーロンが何か行動を起こす時は、必ず私に関係があった。魔法を始めたのも、討伐隊に入ったのも、お父様の事も…。全てが私を守る為だったから。
「あの子は、私にしか興味が無い。私の為にしか魔法も使わないから」
「……確かに、重度のシスコンだったな。俺との婚約も認めてなかったし」
「私に誰とも結婚するなって、言ってたな」
「しかし、いくらシスコンだからって、殺されたら恨むだろ?それに、何故生きてる?」
「……あの子はわざと殺されたんだ。死んでなかった可能性すらある」
「それは、自分を魔法で仮死状態にしたと?」
「ああ、それも全て、神殿に行けば分かる」
「オリヴィア・カールトン、それも罠の可能性もあるのではないのか?」
「いいや、アーロンは神殿で私を待ってる」
「何故、そう思う。ガブリエルの言葉を、何故信じる?」
オリヴィアは「姉様」と、呼びながら笑うアーロンの顔を思い出して微笑んだ。
「だって、私も重度のブラコンだからね!」
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