第36話 実験台に!
「ロイドとは、もう一緒に寝ない……」
魔法塔に向かう馬車に揺られながら、寝不足で疲れ果てた顔をしているオリヴィアは、ポツリと呟いた。
アンナが神殿へとガブリエルに連れて行かれてから、アンナの収容されていた部屋に何か手掛かりがないか調べても何も見つけられなく、シルベスタ邸に帰って来た時には朝日が登り小鳥達が鳴き始めていた。
昼まで仮眠を取るつもりだったのに、ロイドが「一緒に寝たい」と、ベッドに潜り込んできてしまい、寝かせてくれたのが昼近くになっていたからだ。
「オリヴィア、大丈夫?」
「誰のせいだと思ってる!」
向かいに座っているロイドが心配そうに声を掛けてきたが、オリヴィアは「お前のせいだ!」と、心の中で叫んだ。
「オリヴィアが可愛いのがいけない!」
「まったく、お前という奴は」
暫く馬車に揺られると魔法塔に着いた。ここにはオリヴィアが神殿に行くに相談したい魔法師がいた。
魔法塔には魔法陣を研究している者達が集まる研究室ごあり、その室長は代々魔法陣を研究している家紋でもある。
そして、ここに訪れたのは、ガブリエルが使った魔法陣を知りたいのと、それがあれば早馬を3日も走らせなくても魔法陣で簡単に行けないか相談したかったのだ。
けれど、簡単には引き受けてくれる人間ではない事を知っているオリヴィアは、何を言われるのか不安があった。室長は依頼を受ける代わりに対価として、面倒な依頼をされる。
隣の国の神殿までだと、とんな無理難題なのかと、考えていた。
研究室に着くと、真っ青な顔色をして目の下には酷いクマがあり、何日も洗ってなさそうなボサボサの黒髪をした人達が机にしがみつき一心不乱に何かを書いていて、相変わらず顔に死相が出ている奴らだなっと、オリヴィアとロイドは思った。
「お〜い!ギルバート!いる〜?」
「いない」
何処かから声は聞こえたが、みんな顔を上げないので机にしがみついたままだ。
「あなたのロイドが会いに来たよ〜!」
「何!!ロイドが実験台になりにきたと!」
「オリヴィア!!何を言って!!」
「やっと、実験台になる決心がついたのだな!」
ロイドは顔面蒼白で恐怖に怯えた表情をしながらオリヴィアに詰め寄るが、あっと言う間に興奮している3人の男に囲まれてしまった。
それを見ながらケラケラと笑うオリヴィアを可愛いと思いながらも、よくも俺を売ったなと思い、悔しさに顔を顰めた。
「今日はギルバートにお願いがあって来たんだ」
「……カールトンのお願いに、ロクなのはない」
ロイドに抱きついている小柄な男がオリヴィアを睨みつけた。
「ウエイザー公国の神殿まで長距離移動が可能な魔法陣を描いて欲しい」
「なんだ、そんな事か。ラウル王国まで行けるのもあるぞ」
「本当か!ああ、だが、出来たばかりで実験が出来ていないがな」
「まじか!私とロイドが実験台になるから、神殿までの魔法陣を描いてくれ!」
「お、オリヴィア!」
「だが、対価はそれだけじゃ足りない」
「……何をすればいい?」
ギルバートはふふふと、不気味な笑いを浮かべてロイドの両肩に手を置こうとしたが、身長差で届かず腕をぽんと叩いた。
「ラウル公国のワルギニア村にあるダンジョンから、黒い魔石を取って来てくれ」
「「S級ダンジョンじゃないか!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます