第34話 僕《しもべ》として
ガブリエルは意識を取り戻すと、テント中で薄い布団の上で寝ていた。
「僕は……、死んだはずでは……?」
自分の身に何が起きたのか分からないでいたが、戦争の事が気になりテントの外に出ると、意識が朦朧としている時に現れた白髪の女神様が負傷兵を治療していた。ガブリエルに気付いたのか、眩しい笑顔で笑い手を振りながら走って来た。
「起きたのか坊主!」
「あ、あなたは?」
「私は聖女のオリヴィア・カールトンよ!」
「だ!大聖女様でしたか!」
「あはは!そんな大層なのじゃないわよ!」
「大聖女様が、僕を助けてくれたのですか?」
「私は蘇生魔法のリザレクションをかけただけ、敵兵から貴方を助けたのは、あそこの真っ黒い奴だよ」
「ほら、あそこ!」と、指差した方を見ると、髪も瞳も着ているローブも真っ黒な男が、兵士達にパンと水の入った瓶を配っていた。
「もしや、あのお方は、アーロンクロイツ様ですか?」
「そだよ〜!坊主を襲った敵兵を、やっつけてくれたんだよ!」
「なんと…、お二方がいらっしゃらなければ、僕は死んでいました。助けて頂いたこの命、お二方の為に捧げましょう!」
「まじか!したら坊主は、
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ガブリエルはウエイザー大公家と絶縁をして、アーロンクロイツとオリヴィアの
帝都にあるオリヴィアの邸宅で3人で暮らし、魔法、剣術、体術を学び平和に暮らしていた。オリヴィアが父ブラームスの策略により殺されるまでは。オリヴィアを陥れた貴族と暗殺ギルドの者達を皆殺しに、ブラームスを殺してアーロンクロイツが公爵家の当主になった。
「ガブ、神殿にある禁書に、時間を操る魔法が書かれた本がある。それを、見つけろ。時間を巻き戻して、姉様を守るぞ。奴らに殺させはしない!」
禁書は最高司祭しか閲覧出来ない。なので、ガブリエルは10年振りにウエイザー公国の土地に足を踏み入れた。元々強い聖力を持ちオリヴィアに聖魔法を教え込まれていたので、通常は助祭から司祭になるまでに40数年は掛かるが10年という速さで司祭になった。
最高司祭になるには司祭長達の投票で決まるので聖人君子を演じながら大陸全土を旅し、各地の教会で子供達に祝福を与え怪我人や病人を回復魔法で治療していった。60年が経ち最高司祭が崩御すると、投票でガブリエルが最高司祭に就任した。
それからは必死に禁書を読み漁り時間魔法の研究に明け暮れた。だが、最高司祭として各地に訪問しなくてはならず、逆行の魔法陣が完成する迄に30年掛かってしまった。
魔法陣が出来たので、帝都にいるアーロンクロイツを訪ねた時に、『オリヴィアは聖女ではなくて魔女で、ロイド・シルベスタを魔法で操っていた』と、噂が広まっていた。
その噂の中心には皇太子ミハイルの婚約者アンナがいた。
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