第29話 死んでないの?
「「こちらが、203番の部屋でございます」」
ここに収容されている罪人達は名前では呼ばれず、部屋番号で呼ばれていた。
1階は101番〜108番、2階は201番〜210番の計18部屋あり、1階は先月に麻薬ポーションの違法製造、人身売買、売春斡旋の罪で有罪になった貴族達で一杯になっている。
2階の201番にはヨシアン・トリバー、202番にはアルバーノ・レイソルが収容されていた。ミハイルは皇太子なのでここに収容する訳にはいかなかった。
罪は冤罪でマリアンヌ・トリバー公爵令嬢を陥れようとした事だが、魅了魔法がかけられている疑いがあるので、ここに収容されミスフィット姉妹に監視されながら、魔法解除をする予定なのだ。ミハイルは自室に軟禁されて、魔法塔の魔法師が魔法解除をする。
そして、記憶を全て無くして気を失ったアンナは、203番に連れて来られていた。
案内されたアンナの部屋は、壁際にセミダブルのベッドが置かれて、座り心地の良さそうな2人掛けのソファーのローテーブルがあり、大きな鏡の鏡台には化粧品らしい物が2本並んでいる。
奥にはカーテンで区切られているスペースには、トイレと湯船とシャワーがあり、オリヴィアは思ったよりも広い部屋に「私の小屋よりも、良い部屋じゃないか」と、呟いた。
しかし、自殺、逃亡防止で開かない小さな丸い窓が1つしか無く、魔道具で部屋の中を灯している。囚人達には魔封じの足輪が付けられているので、朝の7時〜夜の9時迄での時間で館の魔石で管理されているが、オリヴィア達が来るのでアンナの部屋だけ、明かりを灯したままにしていた。
気を失っていたアンナは鏡台に座り、自分の顔を嬉しそうに眺めていた。
オリヴィア達に気が付き振り返ると、頬を赤らめはち切れそうな笑顔で叫んだ。
「ロイド様だ!!」
記憶が戻ってまた妄想話が始まるのかと2人は身構えたが、なにやら様子がおかしかった。
「最推しのロイド様と会えたって事は、ロイド様ルートに入ったの!?」
「最、推し?」
「でも、ここはゲームの私の部屋じゃないし、聖女が大っ嫌いなロイド様が、聖女と一緒にいるの、おかしくない?」
訳わからない事をぶつぶつと言うアンナに困惑したオリヴィアは、記憶が戻ったのか確かめようとした。
「はじめまして、私は
「はぁー?なんでオリヴィアが生きてるの?設定では100年以上前に死んでるのに!」
「……貴様、何を言っている」
「きゃー!!声までゲームのまま!!浩志様のイケボで喋った!!」
「ちょ、ちょっと、貴方は誰なの?」
「私?私は土屋美咲!ここってさ、ルミタス帝国でしょ?」
「ええ、ルミタス帝国の皇城の…」
「やっぱり!それに、ここがお城の部屋なら、ハーレムエンドて、ロイド様ルートになったって事よね!」
「土屋、美咲さん?さっきから何を言ってるの?」
「何って、ここはゲームの世界でしょ?アンタは死んでるキャラなんだから、ちゃんと死んでてよ!」
「……え?」
「だから、私とロイド様を邪魔しないで!」
「「大聖女オリヴィア様に、なんて事をいうの!」」
「だから!オリヴィアは死んでなきゃいけないの!私とロイド様の愛を邪魔しないでよ!」
「貴様、死にたいらしいな」
「やはり、
隣に銀糸のように綺麗な腰までの長い髪をした、ピンク色の瞳には憎しみの炎を灯している、透き通る様な色の白い女性か男性なのか分からない中性的な顔をした、白い司祭服を着た長身の人間がオリヴィアの隣に現れた。
「ガブリ、エル……?」
「お久し振りでございます。オリヴィア様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます