第28話 邪魔しやがって!


「……俺達、魔法師を怨む奴なんて、数えきれないだろ?」


「……ごめん」


魔法師は魔界の住人や、裏世界に蔓延る魔法師の犯罪集団や、その犯罪集団に家族を殺された魔力を持たない者達、魔法師に犯罪を暴かれ爵位を剥奪された没落した貴族達など、魔法師に怨みを抱く者は多い。


その事を知っていたのに、忘れていた。そして、ロイドに辛い事を言わせてしまったと、自分に対して怒りを覚えた。


私はなんて事を言ってしまったの!魔法師は怨恨の存在だと、ふざけた事を言う奴らがいるのに!知っていたのに!


立ち止まり唇を噛み締めながら俯くオリヴィアを「気にするな」と、抱きしめて頭を撫でてくれる。


「魔法師は怨恨の存在、聖女は希望の存在。そんな事を言う奴は、俺達が子供の頃からいただろ?ああ、可愛い唇から、血が出ちゃったよ」


ロイドは噛み締めて血が出てしまったオリヴィアの唇を、舌で優しく舐めていく。


「オリヴィアの血って、美味しいんだね」


「お!お前!何言って!」


ロイドは舌をオリヴィアの口に押し込んで、舌を深く激しく絡ませる。口内で血と唾液が混じり合い、その味をもっと感じたくて、オリヴィアの頭を両腕で強く抱き寄せて、舌をもっと深く押し込んでいく。

 

俺の血は鉄の味しかしないのに、オリヴィアは血までも優しい匂いがする。鉄の味だけじゃなく、甘く落ち着く味がして、たまらなく美味しくつ、もっと、欲しい。今すぐオリヴィアを欲しくなる。


欲望がはち切れてオリヴィアを押し倒したい衝動に駆られた時に、2人の人間が近付いてくる気配がした。


「「シルベスタ総長様、大聖女オリヴィア様、お迎えに上がりました」」


オリヴィアは声に驚き目を開くと、近くにメイド姿の女性が2人の頭を下げて立っていた。


デリカシーの無い酷い事をを言ったのに、優しくしてくれるロイドのキスに酔いしれてしまって、人の気配に敏感な筈なのに全く気付かなかった。オリヴィアはキスをしている姿を2人に見られた羞恥心に、ロイドを思いっきり押し離した。


「た、助かったわ!ありがとう!」


「ちっ!邪魔しやがって!」


「「父上から、野獣と化したシルベスタ総長様から、大聖女オリヴィア様をお守りするよう、言われておりますので」」


「流石は、ディルバルトの子供達だわ!」


「カーライルめ、辺境に左遷してやる」

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