第21話甘えん坊
俺は一体何を聞かされているんだ?
ロイド・シルベスタは地下牢の通路で困惑していた。オリヴィアがアンナに話を聞くと言うので心配でついて来たのだ。
練習場の結界の中でのアーロンクロイツとの戦いを終えたロイドは、戦いでぼろぼろになった格好のまま急いでオリヴィアのいるホールへ向かった。
ホールにいるオリヴィアを見て、久し振りの大聖女の制服姿を見て懐かしく思いながら、自分の色のドレスを脱いでいる事に寂しく思った。
ぼろぼろの姿でホールにやって来たロイドに気が付いたオリヴィアは、「楽しそうだったな!」と、笑いながら声をかけた。
そんなオリヴィアに、俺の事を本当に分かっているなと、嬉しく感じた。
「ごめん、逃げられた……」
「そっか、逃げたか……」
「ご褒美……、貰えないね……」
「全く、いい歳した爺さんが、子供みたいな事を」
悲しそうにしょんぼりとした子供のような顔をしたロイドを慰める様に、オリヴィアは優しく抱きしめながらヒールで傷を治してやった。
「ロイドが無事で良かったわ」
「……オリヴィア、ありがとう」
ロイドはオリヴィアが抱きしめてくれて目を見開いて驚いたが、無事で良かったと、心配してくれた事に胸が温かくなり、抱きしめながらオリヴィアの肩に顔を埋めた。
やっぱりオリヴィアの匂いは落ち着くな、甘くて優しい匂い。
ドレスだったら、オリヴィアの肌の温かさも感じれたのに。
ジャケットの詰襟が高く首をすっぽりと隠している大聖女の制服にガッカリしながらも、他の男にはオリヴィアの肌を見せたくないと、ロイドは葛藤していた。
「まったく、私よりも年上のくせに、相変わらず甘えん坊だな!」
「……2歳しか変わらない。オリヴィアだから甘えたいんだ」
「はいはい」
オリヴィアは甘えてくるロイドを可愛いと思いながら、ボサボサになった髪の毛を整える様に撫でた。
「師匠と総長様は本当に仲が良いですわね」
「そうだな、まるで夫婦のようだ!」
「なっ!何を言っている!」
シルフィとベンジャミンの言葉にオリヴィアは真っ赤な顔をしてロイドから離れようとするが、ロイドは離さないとばかりにビクともしない。
「は、離せー!」
「いやだ!」
「っな!」
「もう少しだけ…、落ち着くまで…」
「……落ち着くまでね」
「ありがとうオリヴィア」
ロイドが魔力を消耗しているのに興奮が収まらないのは、魔剣での戦いがそれほどまでに激しかったかを感じとった。魔力を込めて魔剣を使うとロイドは極限の興奮状態になる、楽しそうにしてたから魔剣を使ったのは分かっていた。
オリヴィアは自分の匂いでロイドの興奮状態が収まるのを知っていたから、抱きしめて落ち着かせていた。
いつもなら直ぐに落ち着くのに、今日は全く興奮が冷めないようだった。
「ベンジャミン、シルフィ、話は後でする」
「分かりました師匠」
「ここには誰も入れないようにしておく。シルフィは私と執務室に来てくれ」
「はい、陛下」
2人が出て行くと、ホールにはロイドとオリヴィアの2人きりになった。
オリヴィアはロイドを抱きしめながら覚悟を決めていた。
「ロイド、ジャケットを脱ぐから、離れて…」
「……俺が脱がせてあげる」
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