第20話 妄想の住人
「ロイドを、解放??てか、悪役令嬢ってなんだ?」
私の方がロイドから解放されたいんだけど!!
あと、悪役令嬢って何?悪役は良いけど150歳の私が令嬢って…。
オリヴィアは理不尽な事を言うなと思いながらも、ロイドもハーレムに加えようとしているアンナに苛立ちを覚えた。けれど、賢くなさそうだから上手く誘導すれば自分から色々喋るのでは?と、考えた。
「アンタみたいな性格ブスの女の事よ!」
「性格ブスは別にいいが、令嬢って歳ではないな」
「あ〜!ロイド様が可哀想!こんな女が婚約者だなんて!」
「いや、何故ロイドが可哀想なのだ?」
「そんな事も分からないの?100年前に死んだ婚約者を、いまだに忘れられずにいて、毎日その婚約者の夢を見て、涙してるのよ!」
「……へ〜、その婚約者とは、誰かな?」
「アンタ何も知らないのね、大聖女オリヴィア・カールトンじゃない!それを知らないでロイド様を脅迫して婚約するなんて、最悪な悪役令嬢ね!」
「そうだったのね、でも、なんで大聖女は死んだんだ?」
「父親のカールトン伯爵に生贄にされたのよ」
「……生贄?」
いや、私は生贄になってはないのだが?目の前に居て貴方と話してるんだけど?
「全く、本当に馬鹿な悪役令嬢ね!大魔道士ブラームス・カールトンは、炎の魔神アルゴルアムを使役しようと、大聖女オリヴィアと双子の弟、呪いの子を生贄にして召喚したが、駆けつけたロイド様によって、魔神アルゴルアムは討伐され、大魔道士ブラームスは首を落とされたの!」
「……はあ」
私の父は大魔道士ではないよ?前総長だよ?
それに、人の弟を呪いの子と言うな!
「そして、婚約者の大聖女オリヴィアは、ロイド様の腕の中で「愛してる、ロイド」と、言い残して死んでいった…。ロイド様は毎夜その時の夢を見て、涙にくれ眠れない日々…」
「……へぇ」
勝手に話始めたアンナを本当に馬鹿な子なんだと、オリヴィアは憐れみの眼差しで見つめた。
「100年の時を経て、ミハイルの誕生日パーティーで私と運命的な出会いをしたの!目が合った瞬間に惹かれ合う2人…。次の日、街で暴漢に襲われそうになった私を、ロイド様が助けてくれて、運命の再会をするの!その時にロイド様の過去を知った私は、錬金スキルで作った癒しのポーションで、ロイド様の傷付いた心を癒してあげたの」
「……ふ〜ん」
私は一体何を聞かされているのだろうか?
まるで朗読劇かの様に感情を込めながら話してるアンナを見ながらオリヴィアは頭が痛くなってきた。
そして、牢の扉は開けたままなので、外で待っている人はどんな気持ちで聞いているのかと思うと、笑ってしまいそうなってしまった。
「私はミハイルの婚約者。だけど、ロイド様との愛はどんどん深まっていくの、運命の恋人だから…。そんな2人を皇族の人達は引き裂こうとする…。皇帝陛下から魔王討伐の命を受けたロイド様…、私はロイド様への愛でエリクサーを作りあげたわ」
「……すごーい」
愛なんかで幻のエリクサーが作れるんだ〜、知らなかったな〜。
「夕日が差し込むロイド様の部屋で、見つめ合う2人…。ロイド様が「もう誰も愛せないと思っていたのに、アンナに出会って、一緒に過ごしていくうちに、殿下を殺したいほどに、嫉妬した自分がいた。アンナといると幸せな気持ちになって、ずっと一緒にいたいと思うようになり、アンナを失いたくないと思った。そして、気付いたんだ、アンナを愛してるって事に」って、私に告白してくれたの。
私は嬉しくて泣きながら「私も愛してる」って、ロイド様を抱きしめたの。そして、「帰って来たら、俺と結婚しよう」と、ロイド様が私にプロポーズをしてくれた。「はい」って、私が答えると、ロイド様は私を強く抱きしめて、深く熱いキスをしてくれて、2人は心も体も愛で結ばれたの。翌朝、ロイド様の部屋から出陣するロイド様を見送ったわ」
「……ひゅ〜」
ロイドって、そんな奴だったんだな〜、なんだか、外から殺気を感じるな〜。
「ロイド様の魔法と私のエリクサーで魔王は討伐されたの。お城で開かれた帰還パーティーで、ロイド様は皇帝の前に跪いて、大勢が注目するなかこう言うの。「私、ロイド・シルベスタとアンナの結婚を認めて頂きたい!」って!」
「……わ〜、かんど〜」
この女ある意味凄いな!凄まじ殺気が外から流れ込んでるのに、高揚しながら喋ってる!
アンナは頬を赤らめ目を潤ませながら両腕を広げて「あー!ロイド様」と、叫ぶ姿にオリヴィアは笑いを堪えるのに必死だった。
「そして、お城で結婚式を挙げたの!白い正装姿が超絶イケメンなロイド様!私のウェディングドレス姿を見て「俺の花嫁は、女神より美しい」って♡結婚式でロイド様はこう誓ってくれた。「アンナと出会えた奇跡、神に感謝する。永遠にアンナだけを愛し、必ず幸せにする事を誓う」って♡そして、誓いのキスを交わすと、神の祝福の白い小さな光が、帝都に降り注いぐの!それが、私とロイド様のハッピーエンドのエンディングよ!」
「ふむ、君が妄想の住人だと言う事が、分かった」
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