第14話 アンナ(3)

「ロイド様に婚約者がいるってどういう事よ!!」


パーティー当日の昼食会でルミタス帝国の皇帝ベンジャミン・レイサム・アム・ルミタスからロイド・シルベスタが婚約者と参加すると聞き、アンナは侍女達に当たり散らしていた。


ゲームではロイド様の婚約者は死んでて、ヒロインの私が心の傷を癒やして、二人は結ばれて永遠の愛を誓うのよ!それなのに、婚約者ですって!


いったいどうなってるの!?ラファエルと会えなくて攻略出来てないから、シナリオが変わったの!?


「アンナ様、そろそろドレスに着替えないと……」


「分かってるわよ!私に命令しないで!」


侍女の左頬に思いっきり平手打ちをすると、早く着替えさせるよう命令をした。打たれて泣いている侍女を下がらせて、2人の侍女はミハイルがアンナに用意したドレスに着替えさせはじめた。


アンナの我儘と暴力が酷くて、ミハイルの補佐をしているヨシアンに相談をした侍女が、「アンナを侮辱した」と、クビにされてしまった事がある。なので、いつも暴言や暴力を振るわれる3人の侍女は、配属を変えて欲しいと侍女長に訴えても、聞き入れてもらえず耐えるしかなかった。


全くラファエルの攻略が出来ずにイライラしていたのに、昼食会でロイドに婚約者がいると聞いて余計に苛立っていた。


乙女ゲームの世界だもの、ロイド様の婚約者は、きっと悪役令嬢で、無理矢理に婚約させられたに違いないわ!私が救ってあげれば良いのよ!


3人は攻略済みだから、バッドエンドの娼館送りは回避出来てるし、ハッピーエンドの未来しかないじゃない!


そうだわ!ちょっとシナリオは変わっちゃったけど、ロイド様ルートは今日のパーティーから始まるんだもん!


ミハイルと婚約しても、ロイド様と愛で結ばれる運命なんだから!あ〜、早くロイド様といっぱいエッチしたいな♡


アンナは着替えた自分のドレス姿を鏡で見ながら、「私に一目惚れするのは、間違いないわね!」と、自信満々に意気込んだが、侍女達は呆れ顔だった。


ミハイルの髪の色の深緑色のシルクの生地に、瞳の色の金糸で刺繍を施されたプリンセスラインの豪華なドレスは胸元がVの字に大きく開いていて、小柄な身体のわりに豊満な胸の谷間が露わになり、ネックレスの大粒のエメラルドで、より胸元に目を奪われそうだ。そう、まるで娼婦ようなのだ。


白と金色の帝国軍の正装を纏うミハイルがアンナを迎えにて、部屋に入って来た。


「……アンナ、すっごく綺麗だ」


「ミハイルもすっごくカッコいい!!」


アンナはミハイルに駆け寄り抱きしめると、甘えた顔をしながら上目遣いで見つめた。


「……ミハイルがかっこよ過ぎて、欲しくなっちゃった♡」


「アンナは可愛いな、俺も欲しい」


「でも、時間が無いよね?」


「そうだな、こんな綺麗なアンナが、俺ので感じて淫らになってるアンナを見たら、一回じゃ治らないよ」


「じゃあ、パーティーが終わったら、いっぱい愛してね♡」


「ああ、明日は公務も無いし、一日中愛し合おう」


「嬉しい♡ミハイル愛してる♡」


「俺もアンナを愛してるよ」


しかし、パーティーが終わっても2人が愛し合える事はなかった。


2人に待っていたのは、断罪が失敗してアンナは地下牢に閉じ込められ、ミハイルは自室に軟禁される未来だった。

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