第13話 アンナ(2)

アンナは前世でロイドに本気の恋をしていた。

 

誰よりもロイドを愛していて、ロイドを幸せに出来るのは自分だけだと、本気で思っていた。ロイドが居ないと生きていけないとも…。


そして、部屋に引きこもり何日も食べる事も寝る事も忘れてロイドルートを繰り返しプレイしていたら、赤ん坊になっていたのだ。なんと、前世の記憶そのまま異世界転生したしまっていた!


きっと神様がロイド様の世界に転生させてくれたんだ!


アンナは自分がプレイしていた乙女ゲーム「私のシンデレラストーリー」に、転生したと確信していた。


そして、10歳の検査で魔法塔を訪れた時に運命的な出会いをした。ロイド・シルベスターが今年の魔力・スキル検査の不正が行われていないか監視しに来ていたのだ。


ロイド様と私は結ばれる運命なのね!


検査ではスキルは無く魔力も微量しかなかった。ゲームでは錬金スキルがあったはずだと不思議に思っていたが、ロイドで頭がいっぱいになって気に留めなかった。


検査が終わり家に帰るとゲームの攻略方法をノートに書き連ねていき、最短でロイドルートに入れるように計画を練っていたのだ。


城で下女の仕事をしながらクリスティン、ミハイル、ヨシアンの攻略は毎日アフタヌーンティーとディナーを共にする迄に順調に進んでいた。

 

そして、アフタヌーンティーの時にアンナは「侍女や下女達から虐められる」「でも、私が仕事が出来ないからいけないの」と、ミハイル達の前でワザと怪我やアザを見せて泣く様になった。そして、ミハイルの客人となり部屋は寮から客間に移り3人の侍女と護衛騎士が1人付いた。


実際はアンナを虐める者は誰一人居なかった。だから、ワザと怪我やアザを作り虐められてると嘘を付いていたのだ。そして、侍女達からは「関わってはいけない危険人物だ!」と、思われていたからだ。


何故なら、仕事初日から「私はクリスティンに見初められたの」と、侍女達に言っていたからだ。


3人とのイベントも卒なくこなして親密度が上がり、デートイベントの頃には抱き合ってイチャイチャしながらキスする迄になっていた。


そんなアンナにマリアンヌとヨシアンの婚約者のメアリーは「婚約者のいる殿方に触れたり、2人きりで出掛けるのは良くない」と、注意すると、アンナは泣き出してしまった。「ひどい……、私の事が嫌いだからって」と、護衛騎士に抱きついて助けを求める始末だ。


それは日に日に酷くなり、顔を見かけただけで「睨んでくる」「無視をされた」と、ミハイル達に泣きながら訴えるのだ。


そして、不思議な事に男達は「愛らしいアンナに嫉妬をしている」「俺に相手にされないと、アンナを怨んで虐げている」と、婚約者達を罵っていった。


1週間後に迫ったミハイルの誕生パーティーの準備を進めていると、アンナが「私も誕生日パーティー出たい!」「ミハイルにエスコートして欲しい!」と、ミハイルにせがんだのだ。


何故なら、ミハイルの誕生パーティーが断罪イベントの舞台なのだから。

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