第12話 アンナ(1)
「ここから出してよ!!」
アンナの断末魔の叫び声と扉を叩く音が地下牢に響き渡っていた。
ルミタス帝国では人の精神に干渉する精神魔法を禁忌とし魅了魔法は洗脳魔法の次に危険だとされ、産まれた時と10歳の時に行う検査でスキルを持つ者は、魔法師を総括する魔法塔でスキルを封印される。
他国の魔法師でも帝国で精神魔法の使用は禁止されている。帝国民、他国民関係無くルミタス帝国で使用した場合は、魔法塔にある魔力封じが程してある地下牢に投獄されるのだ。
地下牢はとても狭い部屋なのでベッド、トイレ、洗面台はあるが、それで部屋がいっぱいになってしまっている。窓が無く換気が出来ていないので、衛生面が劣悪で悪臭が満ちている。
鉄の扉は内側にはノブは無く外からしか開けられない。扉の下に小さな扉があり、そこから食事が出されるのだが、拳程のパンが二つだけで、それもカチカチに硬いパンだ。
「なんで私がこんな目に……」
力尽きたアンナはベッドに横になり泣き出した。
田舎の農家の三女だったアンナは生まれた時から前世の記憶があり、10歳の時に検査で訪れた帝都にある魔法塔に行くと、その景色でこの世界は大好きだった乙女ゲーム「私のシンデレラストーリー」で、自分がヒロインのアンナだと気が付いて大はしゃぎした。
そして、ゲーム通りに16歳の成人になると帝都に働きに出て、食堂で住み込みで働いていた。
お忍びで店に来ていたゲームの攻略対象である、魔法学院に留学しているウラル王国第三王子クリスティン・ラウルに、ゲーム通りに悩みを解決して気に入られ、滞在先である皇城に侍女として連れて行ってもらった。
礼儀作法も知らない、紅茶も淹れられない何も出来ないアンナは下女として洗濯の仕事から始まった。毎日ディナーに誘ってくれるクリスティンにミハイルやマリアンヌの兄のヨシアンと近衛騎士団長の子息アルバーノを紹介してもらい、城に来てから1週間が過ぎた頃には、みんなでアフタヌーンティーをするまでに仲良くなっていった。
ミハイル、ヨシアン、アルバーノの攻略は上手くいっているのに、ラファエルに会えないの事を疑問に思っていた。
ミハイルの弟で攻略対象でもある、第二王子のラファエルに接触してゲームの知識を使い全員を一気に攻略し、1番の推しであり隠しルートであるロイド・シルベスタと会いたかったのだ。
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