第8話 魅了の魔法

ホールの中央で騒ぎが起きて人だかりが出来ていた。

オリヴィアとロイドは何が起きたのかと、騒ぎが起きている方へ向かった。


しかし、オリヴィアが立ち止まってしまい「オリヴィア?」と、声をかけてオリヴィアを見て目を見開いた。身体を震わせて怒りに満ちた顔をしたいたのだ。


「……魅了の魔法だ」


「魅了だって!」


「ああ、強力な魅了の魔法だ……、それに、あの黒い魔力……。アイツだ……」


「アイツって!まさか!」


「ああ、アーロンクロイツだ……」


「そんな!アイツは君が倒したじゃないか!」


「確かに倒した。だが、間違いなくアーロンクロイツがいる」


オリヴィアは唇を噛み締めた。唇が切れたのか口の中に鉄の味が広がったが、噛み締める唇を広げて口の中に親指が押し込まれてきた。


「唇を噛むな、代わりに俺の指を噛め。オリヴィアが血を流すのは見たくない」


口の中にロイドの匂いと汗の塩っぱさが広がり、オリヴィアの怒りに満ちていた気持ちが落ち着いた。そんな自分に戸惑い(ロイドのくせに!)と、悔しくなって思いっきり親指を噛んだ。


「もっと噛んでいいよ、オリヴィア」


顔を赤らめて嬉しそうな顔で見つめてくるロイドに、ドクン!と、心臓が跳ねると、オリヴィアは恥ずかしくなり腕を掴んで引っ張り口の中から指を抜いた。


「ふふ、オリヴィアの歯型がついたよ」


「な!なにするのよ!」


ロイドは愛しそうに歯型の付いた親指を見つめながら、自分の口の中に入れた。


「!!!変態だ!!!!」


羞恥で真っ白な顔を真っ赤にしながら、口に入れた指を抜こうとロイドの手を掴むオリヴィアを可愛いくて愛おしいと思いながら抱きしめた。


「俺の婚約者がすっごく可愛くて愛おしいよ」


「だ!誰が婚約者だ!?」


「君だよ、オリヴィア」


「離して!こんな事してる場合じゃないでしょ!」


「離れないでって言ったのはオリヴィアだよ?」


「そ、それとこれとは!」


ロイドの腕の中きら抜け出そうともがいていると、魅了の魔法が発動されたのに気付き移動魔法で移動すると、第二皇子が女に魅了魔法をかけられようとしていたので聖魔法で結界を張り女を弾き飛ばした。


「殿下、ご無事ですか?」


オリヴィアは第二皇子に声をかけると女を睨んだ。


(違う!この女じゃない!)


「アンナ!」と、叫びながら四人の男が駆け寄って来ると、黒い煙が身体に巻き付いている男が一人いた。


(アイツだ!間違いない!)


オリヴィアが「アーロンクロイツ」と、小さな声で呟くと、男が薄らと笑ったのだった。

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