第6話 息子は何を!

ルミタス帝国の皇帝ベンジャミン・レイサム・アム・ルミタスは玉座に座りため息をついた。

それは、息子であり、第一皇子であり、誕生パーティーの主役であるミハイル・ハインリ・アム・ルミタス皇太子が婚約者ではない平民の女をエスコートしていたからだ。


ベンジャミンとミハイルは外見だけでなく生活もよく似ていた。

サラサラと揺れるアッシュグリーンの髪に、彫刻の様に美しい彫りの深い顔立ちをしていて、皇族に受け継がれる金色の瞳が宝石の様に輝いている。

長身でありながら剣術で鍛え上げられたガッチリとした体格だ。女性にモテない筈がない。


ベンジャミンも数多の女性と浮名を流していたが、正式に婚約者が決まるとピタッと辞めたのだ。

だからミハイルの事も大目にみていた。けれど、誕生パーティーであり正式に決まった婚約者をお披露目するこの日に平民をエスコートしているのだ。


婚約者であるマリアンヌ・トリバー公爵令嬢は一人でパーティーに来ている事に気付き、第二皇子であるラファエルにマリアンヌをエスコートする様に告げた。


(アイツは何をしておる!マリアンヌ嬢ではなく、平民なんぞ連れて来よって!)


ピンクブロンドのふわふわとウェーブした長い髪に、小さな顔に大きな水色の瞳を潤ませながら、折れそうに細い華奢な身体をしていて加護欲をそそられる。


しかし、貴族ではない平民なのだ。皇城に貴族以外が足を踏み入れるのを良しとしないベンジャミンは息子に怒りを覚えた。


「陛下、落ち着いて下さいまし」


隣の玉座に座っていた皇后は声をかけてベンジャミンの手の上に手を重ねた。


「アイツは何を考えておるのだ……」


「今は様子を見ましょう、マリアンヌもラファエルに任せれば問題はありません」


「うむ、……事の次第によっては考え直さなければならぬな」


「……そうですわね」


馬鹿な真似はするなと、二人は願うのだった。

しかし、その願いは叶わないのであった。

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