第30話 準備は完了
「死亡者3名出てしまったみたいですね。でも高ランクのテストはこんなものですよ。それよりAランク入りおめでとうございます」
アルマがそうやってギルドカードを渡してくれる。
これで俺達もAランク入りになった訳だ。
ミーナはパーティメンバーがクズでごめんなさいと俺に謝ってきた。
それから新しくパーティメンバーを探すらしい。
「さてと」
俺は呟いて王城に向かうことにした。
アーシェは先に王城に向かっている。
後は上手くやってくれたらいいが。
ここからが1番アーシェにはきついかもしれない。
王城に付くと俺を出迎えてくれたのはレイリア王女だった。
「ミズキ様。お待ちしておりました」
そう言って俺に駆け寄ってこようとしたレイリアは小石に躓いて俺に突っ込んでくる。
それを両手で支える。
「大丈夫か?」
「は、はい。私は大丈夫です」
そう言ってくれる彼女に俺は手を取られた。
「ここに来てくださったということは私とご結婚下さるのですよね?」
「あぁ。結婚するよ」
そう言うと彼女は涙を流し始めてそれを両手の指で拭っていく。
「う、嘘のようですわ。私がミズキ様と結婚出来るなんて夢のようです」
そう言いながら彼女は参りましょうと俺をパーティ会場まで連れていく。
パーティ会場に付くと既に準備が整っていた。
ここで俺とレイリアの結婚式を挙げるらしい。
「俺が来るのを信じてたんだな」
「はい。ミズキ様のこと世界で1番信用しております」
顔を赤らめてそう口にするレイリア王女。
この子可愛いんだよなぁほんと。
「お待ちくださいね」
とウィンクして舞台袖に消えていくレイリア。
正装に着替えるらしい。
俺は普段のままでいいと言われハーデスのお姉ちゃんに貰った服のまんまだ。
それにしてもこの服凄いな。
何か劣化しないんだよね。全然。
そんなことを思っていたら帰ってくるレイリア。
「可愛いじゃないか」
「ミズキ様……て、照れてしまいますよ」
顔を赤くする彼女。
そこにアシュレイが現れた。
「おめでとう2人とも。王女様おめでとうございます」
アシュレイは膝を着いて祝ってくれているらしい。
「アシュレイ、そこまで畏まらなくてもよいですよ」
そう言われても頭をあげないアシュレイ。
こいつの正体は早ければ今晩にも分かるはずだ。
何を思って行動しているのか全て分かるはず。
「まさかミズキが王女様と結婚するなんて思いもしなかったよ」
アシュレイにそう言われて適当に返す。
「こんな王国1の美少女に言い寄られては断れないよ」
「ま、まぁミズキ様ったら……//////」
照れるレイリア王女。
正直神父を呼んでーとか色々面倒臭いのでそこは簡略化してくれと頼んであるので特に結婚式らしいことはしない。
もっと言うとメイルと結婚した時なんて何もしてないし。
これでも何かしてる方だ。
俺たちが3人で談笑している時だった。
バーンと開け放たれる扉。
そこに立っていたのはアーシェで、そのアーシェは俺達の方にどんどんと歩いてくる。
周りからは何だあの子という声が上がる。
そんな中彼女は俺に近寄ってきてレイリアから俺の手を奪い取った。
「ど、どういうことなの?ミズキ。わ、私と結婚してくれるって約束したじゃない。王女様よりも前にしてたよね?約束。私5年間ずっと待ってたんだよ?」
彼女がそう言うとレイリアが驚きからか両手で口を押えた。
俺が何も答えないでいるとアーシェが続ける。
「ねぇ、なんとか言ってよ。私努力したよ?もし、私が勇者パーティに入ったら結婚してくれるって言ったよね?ミズキ」
演技だと分かっていても胸に来るものがある。
俺たちを見つめるアシュレイの目は段々鋭くなっていく。
「ね、ねぇミズキ。忘れちゃったの?」
そう言いながらアーシェがポケットから玩具の指輪を取りだした。
「子供の頃通してくれたじゃないこの指輪」
そこまで言われて俺は
「知らない。誰?」
そう返す。
アーシェの目に涙が浮かんだ。
「誰と勘違いしてるのか知らないけどちょっと前から俺に付きまとってたよね君。凄い本気だから話は合わせたけど知らないんだけど君のこと」
そう言ってレイリアの手を握り直して空いてる方の手で背中に手を回して抱き寄せる。
「俺は王女様と結婚した。悪いんだけど邪魔しないでくれるかな?」
それから俺はレイリアに
「1番愛してるのは君だよ」
そう言うとレイリアは顔を赤くして目をクルクルと回してしまった。
一方アーシェは手に持っていた指輪をしまって代わりにナイフを手に取った。
「アーシェ?やめるんだ」
アシュレイの声も聞かずに彼女は俺に近寄ってくると
「ぐっ……」
俺の腹をナイフで刺した。
にじみ出てくる血。
その後、後ろに倒れる俺。
アーシェも一緒になって倒れてくる。
この時にアーシェの体に魔法を仕込む。
フォースシールドだ。
発動条件は次に攻撃されたとき。
「ははっ、う、裏切り者には相応しいよね……」
魔法を仕込んだことを確認したアーシェは俺の腹からナイフを抜いてもう一度振り下ろそうとする。
アシュレイはここでやっとアーシェを組み伏せた。
「やめるんだアーシェ!」
「ぐっ!」
アーシェの握っていたナイフがカランカランと飛んでいく。
そのナイフを俺は何とか回収した。
俺は脇腹を押えながらアシュレイに言う。
「錯乱状態にあるみたいだ。気の毒だと思う婚約者に裏切られたんだろう。回復するまで客室にでも寝かせておいてやってくれないか?」
「し、しかしこの者は」
「女の子1人に逃げられるような集団なのか?勇者パーティは」
そう言ってやると頷くアシュレイ。
それから今までフリーズしていたレイリアがパーティの中止を宣言した。
さぁ、動けよアシュレイ。
舞台は整えたぞ。
これ以上ない揉め方をお前の前でしたぞ、俺たちは。
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