第29話 仲間じゃないらしいので


俺達は3階層までたどり着いた。

先頭の役がミーナに移った。


アーシェはずっと拒否している。私はいい、と

だから俺とミーナで回すことになるだろう。


「よし、行きますよ!」


そう言って進んでいく彼女。

細い通路に差し掛かった時


「止まれミーナ」


歩いていた彼女の肩を掴んで引き戻す。


「ぐえっ!」


戻ってきた彼女を両手で支える。


「どうしたんですか?」

「よく見てみろ罠だ」


俺はミーナに前を向かせた。

丁度足を動かす位置に細い糸が貼られていた。


あれに当たると横の小さな穴から矢か何かが飛び出す仕掛けなんだろう。


「な、なんでこんな物が?でも凄いですねこんな細いものに気付くなんてまた助けてくれてありがとうございます♡」


不思議がってから俺に感謝してくるミーナ。

俺にはこれを仕掛けた奴の気持ちが何となく分かるけど


「それは本人にあって確認してみたら?」

「本人?」


その質問には進めば分かるよと答えて俺はルーシーに目をやった。


「正直このまま進み続けるのは気に食わないよ」

「だが、どうするんだ?先に進む以外の進み方なんてないけど」

「こうするんだよ」


このダンジョンは下に下に潜っていくタイプのダンジョンなのは今まで下り階段なのを見て分かるし下の氷の床は次の階層が薄らと透けている。


俺は手にファイアを出して床に押し付ける。

ジワーっと溶けていく氷。


もっと火力を強める。


どろっ。

溶ける氷の床。


それを先に落ちていく。


「なっ!ま、またダンジョンのギミックを無視して!今度からテストにギミックを無視しては行けません、って付け加えるぞ!」


ルーシーが怒っていた。


「流石ミズキ様ですね♡ミズキ様の行く手を遮れるものなど居ないということですね」


ぴょん穴に入ってくるサーシャの体を受け止めて下ろす。

その後もシズル達がどんどん降りてきて


「あんたはどうするんだよルーシー」

「今回だけだからな」


そう言って飛び降りてきた。

念の為上に氷魔法を使って通路を復活させておく。


現在4階層だ。

残り時間9時間。


余裕だ余裕。

そう思いながら進んでいると


「てぇ!」

「やぁ!」


そんな声を出しながら雑魚狩に勤しんでるクーズ達が見えた。

しかし


「グァァァァ!!!!!」


この階層にいる雑魚は雑魚であっても弱くは無い。

アイツらが相手しているアイスウルフのレベルは60とかになっていた。


レベル45とかのクーズでは中々苦戦するだろう。


「ファイア」


俺はアイスウルフにファイアを飛ばし倒しながら進む。


「な、何でお前らがもうこんなところにいるんだよ」


そう聞いてくるクーズ。


「何で?って普通に来たんだよ」

「わ、罠があっただろ?!何個も何個も!こんなに早く来れるわけが!10個はしかけたぞ!」


口を滑らしたクーズ。

それを見逃さなかったミーナ。


「しかけた?」

「うぐっ」


言い淀むクーズ。

そのままクーズは力なくその場に膝を着いた。


「あー俺達が仕掛けたさ。お前が悪いんだぞミーナ!」


叫ぶクーズ。


「な、私の何が悪いんですか?」

「この前の昇格試験からだ。お前は俺らがいるのにミズキ様ミズキ様ってミズキの話ばっかしてたじゃねぇかよ!」


正直そんなことだろうと思ってたよ。


「ミーナがそいつのこと好きなように俺達だってミーナの事が好きだったんだよ!」


そう叫ぶクーズ。


「だから、何なんですか?」


冷たい目を向けるミーナ。


「ミズキ様が罠にかかったらどうするつもりだったんですか?」


その言葉を聞いてクーズはニヤッと顔を歪めた。


「そいつが罠にかかればダサい姿をお前に見せられるだろ?そうすればお前はミズキに幻滅するだろうが」


臆面もなくそう口にしたクーズ。

実際には回避余裕だったけど。


こいつらの策は全部無駄だ。


「なぁ、ルーシー。いくつか質問があるんだが」

「何?」

「現状のあいつらって仲間判定なの?あいつらが先に離反したけど」

「ふむ、実戦基準ならば勿論仲間では無いな」

「仮に見捨てたらペナルティある?」

「ない」


言質は取れた。

俺はサーシャやミーナ達を連れてクーズ達の向こうに渡る。


そこにはボスが何処にいるかを示す絵があった。

その絵は下を示している。この下。


クーズ達のいる床の下を覗くと水がありその中を泳ぐリヴァイアサンの姿があった。


今までの会話から何か察したらしい、奴らが口を開いた。


「お、おい、何をするつもりだ?」


聞いてくるクーズに答える。


「え?何をするってボスを倒すんだけど」

「お、俺たちのポイントが足りてないんだ。も、もう少し待ってくれよ」


急に慌てて懇願してくるクーズ。


「仲間なら待つけどお前ら仲間じゃないし」

「ゆ、許してくれよ。お前怪我してないんだからさ」


俺は字面を靴の裏で叩く。

ボウ!!!!


火が俺の足下からクーズ達の方に燃え広がる。


ジワーっと溶け始める床の氷。


「それよりさっさと退かないとそこ、溶けるよ?」

「あっち!退けねぇんだよ!熱すぎて!何とかしてくれ!悪かったって!」

「だって溶かさないと戦えないしなぁ」


そう言ってるとぴきっ!

ギャリーン!!!とリヴァイアサンが氷の床を突き破って現れたその拍子に


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


噛み付かれたクーズ達。

ムシャムシャと美味しく頂かれているようだが俺には関係ない。


仲間じゃないんだから。

そうやってお食事中のリヴァイアサンの隙を逃さない。


「サンダー」


雷を放つ。


「キュウウウウウンンン!!!!!!」


そんな鳴き声を上げながら倒れてくるリヴァイアサン。

そのまま出てきた水の中に落ちていき、その死体はプカプカと浮かぶ。


それを見たあとにボスの居場所が描かれた壁の文字が変わる。


【凍てつく祠の攻略条件を確認しました】


そう出てきてその壁の前に帰還装置が現れた。

じゃあ、クエストも終わったし帰ろうか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る