第28話 ギスギス


名前:凍てつく祠

難易度:A

階層:5

制限時間:15時間


合格ポイント:100ポイント以上


俺はクエスト詳細を見ながら思う。

前回のテストではこの合格ポイントというのがなく、とにかく攻略までいければ合格だったのだが、今回は確実に行くならどこかでポイント稼ぎした方がいいなと思う。


「さぁ、行きましょう!ミズキ様!」


先頭を引き受けたミーナが俺の腕を組んで歩いていく。

拓けた場所に着いた。

その時、シュン!!!!!!!


飛んでくる氷の矢。

狙いはミーナだった。


「フォースシールド」


俺はシールドを展開してミーナを守りつつ全員に指示を出す。


「障害物に隠れるんだ」

「ミズキ様♡守ってくれてありがとうございます♡」


俺の両手を掴んでそう言ってくるミーナ。

その時


「クソミズキが」


誰かがそう呟いたのを聞いて反応するサーシャ。


「誰ですか?今ミズキさんの悪口言ったの」


いつもの笑顔が消え失せて


「あなたですか?!」


と、ミーナのパーティを1人ずつ確認していくサーシャ。


「え?い、いや違うよ」

「俺も違う」

「聞き間違いじゃないの?」


そんな否定の声が3人からそう聞こえるだけだった。


「絶対誰か言いましたよね?私のミズキ様を馬鹿にするなんて死にたいのですか?」


そう言いながら杖を持つサーシャを止める。


「やめろ、サーシャ。あんまりやると減点されるぞ」

「ご、ごめんなさい」


落ち着くサーシャ。

何かの聞き間違いだろ。そう思いながら俺は状況を分析する。

ほんとにこんなことしてる場合じゃない。


拓けたフロアに目を戻すと


「ウォォォォォォォォ!!!!!!」


アイスゴーレムが立っていた。

あいつがさっきから氷の矢を作り出して投げている。


「プロミネンスフレイム」


俺は超高温の炎を奴に飛ばす。

ジュワァァァァと溶けていくゴーレム。


「皆さん、ミズキ様のおかげで進めるようになりましたよ。先に進みましょう」


そう言うミーナに連れられて俺たちは先に進むことにした。


「ミーズキっ」


その時片方の空いてる腕を組んできたメイル。

その後シズルもサーシャも近寄ってきた。


「ミズキ様の腕暖かいですね♡」


ミーナがそんなことを言い出す。


「ミズキー。そう言えば前にチョコ作ったの。食べる?♡」


対抗心でもあるのかメイルがアイテムポーチに手を入れた時


「ちっ……」


露骨に舌打ちが聞こえた。

険悪な空気が流れる。


そりゃそうか。ルーシーとアーシェ以外の女の子全員が俺の周りにいるんだ。

他のやつからしたら面白くないだろう。


「みんな、離れてくれ。今はテスト中だ。もう少し真剣にやろう」


そう言うとやっと離れてくれる女の子達。

このまま険悪な雰囲気になって最悪な事になるのは避けたいしな。


俺も別に男連中と進んで仲を悪くしようと言う気持ちもないし。


俺が少しミーナ達から距離を取るとここぞとばかりにワラワラ寄ってきた彼女のパーティメンバー。


困惑しているけどミーナはそれでも指示を出していく。



やがて階段まで辿り着いた。

ここまで2時間くらいだった。


次の階に進む俺たち。


2階層に入ったら

先頭は俺に譲られた。


現状のポイントを確認した。


俺が今15ポイント

次点のメイルで13ポイント


稼げてる俺達でもこのままのペースじゃ100はボス戦次第って感じだな。


「俺はこの階層で稼ぎをやるべきだと思う」


そう告げると反対意見が上がる。主に男からだった。


「稼ぎ?!残り12時間だぞ?そんなことやってる場合かよ」

「言いたいことは分かる。先が見えない以上あまり時間をかけたくはないからな」


移動しながら会話をする。

サーシャ達は勿論俺を信じてここで稼ぎをやる気満々のようだ。

ミーナも


「私はミズキ様を信じます」


そう言って稼ぎをやるらしいが、男連中は違うらしい。


「付き合ってられっかよ。俺は先に進む」


ミーナパーティの剣士、クーズは俺には付き合わないらしい。

そうしてクーズは残りの2人見て


「お前らはどうすんの」


2人もクーズに同行するらしい。


「ギルマス?いいよな?俺たち先行しても」

「仲間との意見の食い違い。それによる衝突は実際にあるからな。別に構わないが、私は後続のミズキに合わせる必要がある」

「そうかよ」


そう言ってクーズは先に進んでいく。


俺とすれ違う時に


「てめぇばっかいい思いしやがってよ。死ねよゴミ」


そう言って歩いていった。

俺にしか聞こえないくらいの声量なせいで


「何なんですか?あの人達はミズキ様の素晴らしい作戦を理解できないなんて可愛そうですね。ぷぷっ」


サーシャに笑われていたが君らのせいだよとは言えないな。


「ふぅ……」


この前と同じように稼ぎをやった。

今回もヒールポイントとかは弄られていなく前と同じ手法で生贄を捕まえてそいつで稼ぐ。


1時間で全員のポイントが100に届いた。


「このような抜け穴があったんだな。面白いことを考えるな」


それを見たルーシーは呟く。


「次からはヒールと弱点のポイントを下げて討伐のポイントを上げるべきだろうか?いや、しかしそれならヒーラーのポイントが……」


そう呟くルーシー。

どうやら彼女の中では完璧なバランスだったようで困っているらしい。


「普通にジョブ毎に必要なポイントを分けたらいいんじゃないのか?」


一人言を言っていたルーシーに助言をすると


「なっ!その手があったか!」


俺の両手を掴んでくる。


「ありがとう!ミズキは天才だ!そうか!その手があったな!これで公平なバランスを作れるだろう!」


そんなことを叫んで色々とメモし出すルーシー。

そんな彼女の横で俺は残りの時間を確認した。


残り11時間か。


まぁ、余裕だとは思う。

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