第27話 Aランク昇格クエスト
翌日。
朝ギルマスのルーシーを家に呼び出した。
「急に呼び出してどうしたんだ?」
「聞きたいことがある。剣崎が殺されたのってどこ?」
「外だ。奴らは牢屋に詰め込んでいたのに何故か外で死んでいた。血は牢屋には付いていなかった」
そう口にするルーシー。
となると両方の事件は外で起きたものと考えるのが自然かな。
殺されてから運ばれた感じでは無いのか。
「奴らが牢屋にいることを知っていたのは?そんなに多くないよな?」
「我々ギルドの1部の人間。それから王様」
そう言ってから思い出したような顔をする。
「勇者アシュレイ、だな。この辺りは報告もしているから全て知ってる」
それを聞いて思う。
「俺は正直アシュレイが黒だと思ってるよ」
「何故そう思う?」
聞いてくるルーシー。
「彼に剣崎達とタカシを殺す理由がないと思う」
「俺にも全く分からない。それが不思議なんだよ」
まず整理する。
アイツはきっと俺と揉めた奴を殺してる。
剣崎とも揉めてたしタカシとも揉めた。
狙う対象は俺と揉めた人間だと仮定する。
「今回に関しても俺に罪を擦り付けたいならアイツがこんな庇うような真似する必要が無いんだよな」
俺は先日エルザにクエストに同行して欲しいと誘わた時のことも話す。
あいつとアシュレイはグルでエルザは俺にアリバイを作らせないために誘い出したのだとすると全て繋がる。
「無理があるんじゃないか?その考えは」
そう口にするルーシー。
「今もアシュレイはお前のために走り回ってるぞ。彼は無実だ。我々は犯人を捕らえて必ずそれを証明するって」
でも、あいつ以外考えられないんだよな色々な視点から見て。
その時家の扉がノックされた。
「ミズキ。僕だ開けてくれ」
アシュレイの声だ。
小声で話していたし漏れているわけないと思うけど、
俺は扉を開けてアシュレイの顔を見た。
「おはよう。今君の疑いを晴らすために奮闘中さ」
そう言って笑いかけてくる。
それから俺に手紙を渡してきた。
「これ、レイリア王女からの手紙だよ。1人で読んで欲しいってさ。このこのーモテ男は憎いねー」
そう言ってばいばーいと家から離れていくアシュレイ。
俺は扉を閉めてルーシーの近くに戻った。
「話し声が聞こえてきたけどあれが本当に殺しなんて出来ると思うのかい?」
鼻で笑ってくるルーシー。
「私にはとても君の考えがバカバカしいと思うけどね。考えすぎだよ考えすぎ。彼は英雄の理想像さ。それで昇格テストは受けられるけど今日受けに来るの?」
そう言って家から出ていくルーシー。
でも俺の疑念は晴れなかった。
レイリアからの手紙を読むとAランク昇格テストに合格したらまた王城に来て欲しい、との事だった。
それに応える訳でもないけど俺たちはギルドに来た。
周囲の目は厳しいがカウンターに近寄ると昇格クエストを受注する。
「気にしないでください」と口にするアルマだったけど俺は別に気にしてない。
問題はサーシャだ。
「コロシマスコロシマスコロシマスコロシマス」
呪文を唱えているようだった。
そんなに俺が疑われたのがショックだったらしい。
そんなサーシャを引っ張って俺はテストするダンジョンまできた。
「あ、ミズキー久しぶりだね」
呼びかけられてそっちを見ると幼なじみのアーシェがいた。
「私も昇格テスト受けに来たよ」
彼女は特例だった。招来有望な聖女として目をつけられれば冒険者ランクが幾つだろうと王城で勇者パーティ候補として訓練ができる。
だからこんなふうに後でAランクになるみたいなこともできる。
予め伝えておこうかな。
俺はアーシェの耳元で囁く。
「小声で話してくれ。悪いけど俺はこれからアーシェに厳しい態度をとるかもしれない。でもそれは本意じゃない」
「ど、どういうこと?」
訊ねてくるアーシェにこれまでの経緯を説明する。
俺はアーシェと表上揉めることにする。
揉めてアシュレイが彼女に手を出すのならその現場を抑えればいい。
もしアシュレイが手を出さないようなら振り出しに戻るけど。
やれる事をやるしかない。
とにかくこれ以上陰でこそこそやられるのがほんとにウザイし目障り。
「悪いな、辛い思いをさせるかもしれない。でも本意じゃない」
「わ、分かった。頑張るよミズキのために」
そう言ってくれるアーシェ。
俺はそんなアーシェとはそれ以上話さずにサーシャ達の元に帰り、テストのスタートを待つ事にした。
「集まったな。今回の参加者は、9名か」
そう口にするルーシー。
見ると俺たち以外にミーナ達のパーティが挑戦するらしい。
俺と目が合ったミーナは顔を背ける。
前のタカシみたいにアーシェは1人でスタートだ。
一応テストに入ると仲間という扱いにはなるけど。
可哀想だけどやるしかない。
正直俺だってやりたくないよ、こんなこと。
女の子の辛そうな顔なんて見たいわけないよ。
でも全部終わらせるためには覚悟を決めなくてはならない、ということだ。
「では、スタートする」
そう言ってダンジョンの入口までは案内してくれるルーシー。
中に入ると凄く寒かった。
「凍てつく祠という名前のダンジョンだ」
そう口にするルーシー。
ダンジョンの詳細を説明してくれる。
名前:凍てつく祠
難易度:A
階層:5
合格ポイント:100ポイント以上
「ポイントを得られる行動などはBランクの昇格試験とほぼほぼ変わらない」
そう言ってルーシーはまず誰が先頭を歩く?と聞いてくる。
「わ、私が行きます」
名乗り出たのはミーナだった。
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