第25話 エルザの誘い

王城から帰ってきた翌日。

ギルド前に来るととんでもないものが目に入った。


【ギルド公認】と垂れ幕がしてあって何でも屋をしているタカシの姿があった。


「よう、兄貴!どうよ!俺の店は!」


話しかけてくるタカシ。

無視だ無視。


「俺は心を入れ替えたで。物は奪うんやない。人から与えてもらうもんなんやって気付けたんや兄貴。友情って大事やなぁ」


気持ち悪いことを言っているこいつの店に、人が物珍しさか集まっていた。


雨漏りが酷いんで何とかしてくれと頼まれるタカシ。


「おうよ。若いのを後で寄越すわ。報酬は後払いでええで」


そんな事を言って依頼を受けていくタカシ。


「俺はなぁ兄貴。このギルド前に兄貴が剣掲げて龍を踏んどる修羅像を立てたいと思うとるんや。きっちり金貯めてな」


へっへっへと鼻を擦るタカシ。

そんなもん立てんでええわ、と思いながらギルドに入る。


中にはエルザがいた。

アシュレイじゃないらしい。


今日は何かあるのかと思いながら見ていると案の定エルザが話しかけてきた。


俺たちが話しているのを見たギルド内が騒がしくなった。


「最近噂のミズキさんと勇者パーティのエルザじゃないか。何かするのか?」

「そうじゃねぇの?ミズキさんって人最近引っ張りだこらしいよな。羨ましいー」


そんな声が聞こえる中エルザは本題を切り出す。


「急で悪いがクエストに同行してくれないか?勿論メイル達も連れてきてくれて構わない」


そう言われて俺は頷く。

彼女が持っているのはBランクのクエスト。


初めて受けるランクのクエストだしSランクが2人いたらやりやすいだろうし。



そうして移動してきた世界樹の森という場所。

そこを進みながらメイルが口を開いた。


「エルザは勇者パーティやめないの?」

「私にはメイルが何故やめたのか分からないがな」

「アシュレイ。だってなんか不気味だもん」


メイルに答えるエルザ。


「気味が悪いほどに完璧なのは理解できるが、いや辞めておこう。お前とは話が合わない」


そう口にして彼女はそこでやめた。


「それよりも、先を急ごう。このダンジョンに落ちている世界樹の葉というアイテムが必要なんだ」


彼女は何故このクエストを受けたか説明してくれる。

王様が病気でその治療に必要なのが世界樹の葉ということらしい。


「それならば急がないとな」


エルザはどんどんダンジョンを進んでいく。


そしてモンスターが出てきた。

ウルフ。

その全てをエルザが切り裂く。


「さぁ、急ごう。こんなところで雑魚に気を取られてる場合じゃない」


そうして最奥まで進むとかなり大きな木が生えていた。

上を見上げれば空まで届きそうなほど天に伸びている本当に大きい。


「これが世界樹だ」


その周りに落ちている葉を拾い集めるエルザ。


「何を見てる?手伝ってくれ」


そう言われたので俺はどんどん拾い集めていく。


メイル達も拾い集めるがサーシャが1番よく頑張って拾っていた。


性格が出るよなぁ、こういうの。


「これだけ、大きくなる木だ。葉っぱにも栄養が詰まっていると考えられててな。古くからこうやって治療に使われるんだ」


そう説明してくるエルザ。

そうだったのか。


今度は帰り始めるエルザだったが。


「今日は夜営をしようか。暗くなってきたし歩き回るのも危険だ」


そう言ってエルザは夜営の準備を始める。


「頑張っちゃいますねー」


サーシャはやっぱり張り切って準備をしていた。


俺は適当にやってるフリをしてサボる。

そうして準備が終わったので食事を始めた。


食材はその辺に生えていた植物だ。

メイルが詳しいらしいので毒がなかったり美味しかったりするものを集めてきてくれた。


「すごいねメイルさん。植物に詳しいなんて」


シズルがそんなメイルのことを褒めていた。


「私聖女でヒーラーだったから勉強したんだよね」


メイルはそう答えて顔を赤くしながら火を通した食事をスプーンに乗せて


「はい、あーん♡」


俺の口の近くまで持ってくる。

食え、ということか?


「食べてくれないの?」


そんな悲しそうな顔をするなよ。

パクッと食べる。


そうして俺が飲み込むのを確認したらメイルがニヤッと口元を歪めた。


「これで、ミズキは私のモノ♡」


そう言って真正面に移動してきて俺の膝に乗って顔を見てくるメイル。


「ごめんね。今混ぜたものにドキドキしてくる薬草混ぜたんだ♡即効性だよ♡」


そう言われると確かにさっきから心臓がいつもより早く鼓動している気がしていた。

その時


「ぎゃっ!クモ!」


俺の後ろにクモが垂れていたらしくそれを見たメイルが素早くどいて逃げ出すと、ガーン。

木にぶつかって


「きゅ〜」


バタリと横になる。

そこで俺の目に入っていたのはシズルだった。


さっきから本当に胸がドキドキするし立ち上がった俺はシズルに近付いて


「君はなんて可愛いんだシズル」


俺はシズルの手を取っていた。


「え?え?ミズキ?」


驚いてキョロキョロして赤面しているシズル。

さっきからキョトンとしているサーシャと。


「先程から何をしているんだお前らは」


と注意してくるエルザだけど。

何も視界に入らなかった。


「なぁ、シズル。今すぐ愛させてくれないか?」

「え?えぇぇ?!!!!そ、そんな悪いよ。メイルさんがいるのに。だ、だめだよ」

「イヤなら振りほどきなよ。俺は君がいいんだよ」


そう言ってシズルを抱き抱えてテントに直行する。


シズルはむしろ俺の首に両手を回してきた。


その時やっと動き始めるサーシャ。


「メイル様〜起きてください〜。ミズキ様がなんか変なんです〜」


ペチペチペチ。


頬を叩くサーシャだがメイルが起きる様子は無いらしい。


でもそんなものどうでもいい。


「なぁ、シズルは世界で1番綺麗だよ」

「や、優しくして……ください//////」


テントの中に入っていく。

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