第24話 ごめんなさい忘れてました


ギルドに戻ったら朝になっていた。

晴れて俺達はBランクに昇格。


「それにしても凄いですね。Bランクの昇格テストは半分以上の人が毎回死んでたのに。快挙ですよ!快挙!」


そう口にするアルマ。


どうやら俺が無理やり道を作ってきた階層では遠回りすると中ボスがいたらしくそこで消耗した後にボス戦まで耐えられる人らが少ないらしい。


ショートカットした俺達には全く関係がなかった。


前のCランクの昇格の時も俺だけ異常な数字を出していたのもあって結構俺の名前は広まってきているらしい。


「そう言えば荒くれ者だったタカシさん達がギルドの傘下に入るらしいですよ」


そう口にしてきたアルマ。


「あんな荒くれ者の心を変えてしまうなんて素敵な方ですね、ミズキは」


そう言って俺の両手を握ってくる。


「一目見た時から思ってたんですこの人は特別だって」


その時、誰かが俺の服を掴んだ。

後ろを向くとミーナが立ってた。


「あ、あのこれからも見かけたら話しかけていいですか?」

「いいけどべつに」


そう答えると彼女は顔を赤くして走り去って言った。


何なんだ?


そんなふうに思っていたらギルドの扉が開いてアシュレイが顔を見せた。


「こんにちは。聞いたよ。Bランク昇格テストの死亡者0っていう素晴らしい快挙を成し遂げたんだってね」


僕でも出来なかったのに、とそう口にして続ける。


「王女様が呼んでるよ。君と話がしたいって」



アシュレイに連れられて俺は王女様とやらの部屋まで来ていた。


ちなみに今回はメイル達は同行できないと言われていた。


どうやらお呼びではないらしい。


「王女様。こちらがミズキでございます」


そう説明してアシュレイはごゆっくり、と部屋を出ていった。

取り残された俺と王女。


「わ、私は王女、レイリアと、も、申します」


俺より緊張してそうな感じで挨拶してくるレイリア王女。

そうして俺に近寄って来ようとして、ドタッと転けてしまった。


「大丈夫か?」


近寄って手を取って起こしてあげると目が合った。


「ほ、本当に素敵なお方……//////」


顔を赤らめておずおずという様子で続ける。


「き、決めました。私の婚約者候補になっていただけませんか?ミズキ様」


いまなんて?


「わ、私と婚約して欲しいのです。そのまま結婚でも構いませんよ」

「いきなりすぎない?」


流石に戸惑う。

出会って数秒なんだけど。


「以前この王城に来ていましたよね?私この窓から見ていたのです」


そう言われて窓に連れていかれる。

そこから見えた景色は俺とエルザ達が出会った場所。


「いつも代わり映えのしない勇者パーティの面々をここから見ていましたが、私はあの日あなたを見ました」


そう言って赤らめた顔で俺を見てくる。


「流れるような黒髪。危険な深い闇を見つめているような気分になるその瞳。全てが魅力的に見えました」


そう言って俺の両手を取ってくる彼女。


「一目惚れしてしまったのです、あなた様に。どうか私とご結婚してくださいませんか?」


そう言われてもさ。


「俺もう結婚してるんだけど」


メイルとは確かに結婚している。

少し寂しそうな顔をしたレイリアだったけど


「構いませんよ。私は。貴方ほどのお方。私が独り占めしてしまうのもきっといけませんよね」


そう言ってすんなり他重婚を認める王女様。


「どうか、私との結婚も考えてくださると幸せです。今答えを出さなくても問題はありませんので」


その後俺はレイリアと少し話をして……


「もう、日が暮れてしまいますわね」


そう言ってレイリアは俺を解放してくれることになった。


長い話だった。


レイリアが俺への気持ちをめちゃくちゃに伝えてきた時間だった。

こんな可愛い子にそれだけ言われて悪い気はしないけどさ。


「はぁ、」


溜息を吐きながら庭園を歩いていると


「ミズキー」


声をかけられた。

後ろを向くと知らない女の子が俺に近寄ってきていた。


はぁ、はぁ、と肩で息をして俺のところまで来た女の子。


「すごい久しぶりだね!」


そう言われて俺は首を傾げる。


「誰?」


こんなにお胸の大きい知り合いは知らないけど。

ガーンと肩を落とす少女。


「私だよ。覚えてないの?小さい頃たまに遊んでたじゃん。幼なじみって言えばいいのかな?ちょっと違う気もするけど、アーシェだよ」


そう言われて思い出す。

俺はずっと屋敷で過ごしていたけどたまに勝手に外に出ていたりした。

その時に出会ったのがこの子だった。


「あー、アーシェか」

「思い出してくれた?!うれしー!」


両手を握って再会を喜んでくれる。

彼女が12歳の誕生日に信託の儀式で聖女を授かったのを思い出した。


俺は信じて彼女を見送ったけどその後に起きた自分の惨状でそんなこと忘れていた。

ハーデス達による色んな教育で過去が吹き飛んでいたのもあるけど。


「ねぇ、私とした約束覚えてる?私が勇者パーティの聖女になれたらって……私選ばれたよ」


なんだっけ?思い出せないでいると彼女は頭を下げてきた。


「わ、私と結婚してください!っていう話をしてたんだけど」


頭を下げるアーシェだったけど。


俺はそんな話覚えてなかった。

今になってようやく思い出した。


でもそんなこと言えないよな。


全部ハーデス達が悪いことにしよう。


「私この日のために練習頑張ってきたんだ。全部ミズキと結婚したかったから……」


そんな俺の横で話していくアーシェ。


「で、でも聞いたよメイルちゃんと結婚したって。も、もうミズキは忘れちゃったのかな。そんな約束」


そんな顔しないでくれ。

色んなことがあって忘れてたけどさ、今思い出したよ。


「忘れてないよ。覚えてた、ずっと覚えてたよ」

「ほ、ほんと?!」


彼女がそう喜んだ時だった。

視線を感じて振り返る。


そこには誰もいなかったけど王城の建物の陰に消えていく赤い髪が一瞬だけ見えた。


エルザ?

この王城にいる赤髪と言えば俺はエルザしか知らないけど


「どうしたの?ミズキ?」


聞いてくるアーシェ。


「いや、何でもない」


アーシェも訓練が終わったところらしいし、彼女もそうだったんだろう。

そう思うと別に何も不思議なことは無いな。


それにしてもやけに求婚される1日だったな。


カスみたいな親父だったけど見た目だけはイケメンで産んでくれた事には感謝しといてやる。

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