第20話 Bランク昇格クエスト


黒い道を歩いて出たら目の前には「どうしましょうどうしましょう」と暴れ回っているサーシャとじっとしているシズルがいた。


「帰ったよ」


声をかけると


「ミズキ様〜!!!」


泣きついてくるサーシャそれから


「おかえりなさいミズキ」


ちゃんと俺の帰りを待ってくれていたシズル。

周りにはモンスターの死体がいくつかあったが


「ちゃんと自分達で凌げたようだな」

「私達だってちゃんと訓練してますからね〜」


答えるサーシャを連れて今日のところは帰ることにした。


夕暮れ時だが今から帰れば夜までには付くだろう。


その道中


「ミズキ。私もう大丈夫だから。あなたがいてくれるから。私は強くいられる」


そう呟いて俺の手をぎゅっと握ってくるメイルだった。




翌日。

Bランクへの昇格クエストが受けられるようになった俺達は試験を受けるためにギルドに来たのだが、その時カランカランとギルドの扉を開ける音が聞こえた。


その男が現れた途端静まり返るギルド内。まるで目をつけられたくないかのように話すのを辞めた。


そいつはアルマのカウンターに一直線に向かう。


「ちっ!落ちてもうたんはしゃあないわな。もっかい受けたるわテスト」

「え、えっとタカシ様でしたよね?」

「そうやそうや。タカシであっとる。Bランク昇格テスト受けに来たわ」


そう言って急かし出すタカシ。

まだ10秒も経ってないのに何で急かせるのかは分からない。


「はよせぇやトロイやっちゃなぁ。こっちゃこの後も予定びっちりなんやで。忙しいんや。こんなだるいもんはよ終わらせたいんやこっちは」

「す、すみません。用意出来ました」


バチン!

タカシがカウンターに上げたアルマの右手をはたく。


「ひっ!」

「用意できたんならはよせぇや。急いどんねん。分かるか?」


頭を人差し指でトントンと軽く叩くタカシ。

そうしながらアルマの用意した受注したクエストを手に取るタカシ。


「ほんまつっかえへんトロイアマやのう。やめたらええんちゃうんか?この仕事、えぇ?それか、お前に会っとる仕事教えたろか?」


ギルドのカウンターに唾を吐き捨てて去っていこうとするタカシ。

その前に立った。


「謝ったらどうなんだよ?」

「はっ。知らんわもやし退けや。俺は急いどるんや。どついたるぞわれ。どかんかいなボケが。殺すぞダボ。」


視界の端に見えたアルマが首を横に振っていた。

今は特に何もしないで欲しいと言ってるように見えたので道を譲る。


「初めからそうしとけやボケ。頭ついとるんか?えぇ?ボケ〜ダボ〜ボンクラ〜」


俺の服に唾を吐きかけて出ていくタカシ。

アルマに止められている以上これ以上は手を出せないな。


カウンターから出てきたアルマがティッシュで吐き捨てられた唾を拭き取ってくれる。


「ご、ごめんなさい。ミズキ。私のせいで服が汚れちゃいましたね」

「いや、気にしないでくれ。別に高い服でもない。買い直せばいいしね。それよりアルマに吐かれなくて良かったよ。せっかくの素敵な君が台無しになるからね」


そう言ってやると顔を赤くするアルマ。


「み、ミズキ……//////」


視界の端でメイルの目が細くなっている。何故かは分からないがアルマもそれに気付いたのか少し顔を青くしていた。


「だ、だめですよ。そういう事ホイホイ言っちゃ怒ってますよ奥さんが」


どうやらそのようだな。


「よし、拭けました」


そう言ってからアルマは俺に注意してくる。


「さっきのタカシという人にはあまり強く出ない方がいいですよ。この辺りのヤクザなんですよ。まだそこまで大きくないですが気性が見ての通り荒くてですね」

「そうなのか」


はい、と答えてみんな怖くて注意も出来ないし困ってるんです。と言ってた。


あの口調と名前からして召喚された人なんだろうなぁとか思う。

多分あの辺に住んでる人だあれ。


「それから気をつけてくださいね。あの人はSランクまで進んで、何故かここまで落ち込んできてまたテストを受けてる人です。恐らく実力はありますから」


そんな注意の言葉を受けて俺達も現地へと向かうことにした。


現地に着くと例によってギルドマスターのルーシーがいた。

ある一定以上のランクの昇格テストになると毎回出てきて説明をするらしい。


大変だなギルドマスターも。

そう思いながら説明を聞く。


今回からはダンジョンでの現地テストとなり、それにはギルマスのルーシーも同行するらしい。

そして中での動きを採点され合否を決めるそうだ。


細かい説明は中に入ってからするとの事でそこまで説明したらタカシが


「はよ、いこや姉ちゃん。チンたらチンたらせんでええて。もうええでほんまノロマに合わせられるこっちの身にもなってくれや」


めちゃくちゃせっかちだなあいつ。


「そうだな。もうここでする説明は終わりだ。ダンジョン内へ進もう」


そう言うルーシー。

ここからタカシがどれだけ暴言を吐くかを考えると頭が痛くなってくるな。

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