第19話 確かな絆


メイルが動かないままドラゴンは溜めたエネルギーをブレスとして放つ。


「ちっ!フォースシールド」


俺はメイルの前に立ちそれをフォースシールドで防ぐ。


その間も先に離れたサーシャとシズルが魔法を撃っているが、どうやらドラゴンには効いていないようだ。


「Aランク以下の魔法は全部無効化にされるよ……。わ、私が食い止めるからみんな逃げて」


やっと動き出すメイルだったが


「インフェルノフレイム」


俺は右手に作り出した巨大な火の塊をドラゴンに向けて投げる。


「ギャァァァァァァァァ!!!!!!!!」


魔法を放つと燃えていくドラゴン。


その時相当この土地自体が限界を迎えていたのか、その衝撃で地面が崩れた。

幸いサーシャとシズルは範囲外にいたようだが


「ちっ」


俺はメイルの手を掴みながら反対の手で崖に捕まったけど、上から瓦礫が落ちてきて


「フォースシールド!」


シールドを展開しようとしたけど間に合わなかった。


「あっ」


掴んでいた崖が崩れたのだ。

そのまま俺達は谷へと飲み込まれていった。


落下中にメイルを手繰り寄せて抱きしめたまま落下して



「フォースシールド!」


地面に落ちる前に片手でシールドを貼り衝撃を受けないようにした。


「よっと」


瓦礫が飛び散ってくるので直ぐに落ちた場所から離れる。

そこまでして抱えていたメイルを下ろした。


「メイル?」


震えてるメイル。


「どうしたの?」

「ご、ごめん。足の震えが止まらないんだ。私、ドラゴンに故郷を破壊されたから」

「トラウマか。俺にもあるさ。気持ちは分かる」


そう呟いて俺はメイルの手を掴んで進み始める。


「み、ミズキ?」

「でも。地上でサーシャ達を待たせてるんだ。頑張って歩いて欲しい」


そう言うだけ言って進んでいく。


「かなり落ちたみたいだね」


落ち着きを取り戻したのかやっと話してくれるようになったメイル。


「そ、その何から何まで助けてくれてありがとう」


照れたように顔を赤くしてお礼を言ってくる。


「その、ミズキがいなかったら確実に死んでたよ」

「気にするなよ」


そう言って歩き続ける。

歩き続けても歩き続けも光が見えない。


「さっきから同じところ歩いてる気がするんだけど」

「俺もそんな気がしてたよ」


そんなことを言っているときだった。


「で、出られないのかなここから」


不安そうな顔をするメイル。


「ね、ねぇミズキ」


俺の顔を見てくるメイル。


「何?」


メイルは指輪を外して俺に渡してくる。


「この指輪ミズキにはめて欲しい。ちゃんと」


意味が分からないけどはめてやると


「形だけじゃない。だんだんあなたのこと好きなってた」


そう言ってきて


「このまま死んじゃうかもだよね?最後に恋人らしいことさせてよ」


俺の視界がメイルによって埋め尽くされた。





「え、えっと、そ、そろそろいいですか?」


その声が聞こえてメイルが慌てて乱れてた服を戻して俺から離れた。

声の聞こえた方を見ると


「お久しぶりですねぇ。覚えてらっしゃいますか?ミズキ」


そこに立っていたのはヘルヘイムだった。


「あんなに可愛かったミズキがあんなに激しく女の子を愛してしまうなんて、このヘルヘイム声をかけられませんでしたよ」


照れたような顔をするヘル。

それに反応するのはこっちも顔の赤いメイルだった。


「へ、ヘルヘイムってもしかして神様の?」

「はい。そのように言われてますわね」


腰を折って優雅に一礼するヘル。


「な、何でミズキは神様と知り合い風なの?」

「メイルには言わなかったっけ?俺は神様に育てられたんだよ」


基本的には他の人には話していないけどメイルには話したような話していないようなそんな感じだったけど、話していなかったか。


「えぇぇぇぇぇぇ?!!!!聞いてないんだけど!!!!」


メイルが叫んだ後にヘルが口を開いた。


「ここは忘却の森と呼ばれる場所ですわ。正しい道順を知っていないと一生出れない森なのです」

「迎えにきてくれたんだろ?」

「はい。そうですよ。可愛い可愛いミズキのためならこんなところだって迎えに来ます」


俺は正しい道順とやらを聞く。

そしたら首を傾げるヘル。


「はて、正しい道順ってどれでしたっけ?忘却の森なので忘れてしまいましたね」


俺がじーっと見てると


「じょ、冗談ですよ軽いジョークですよ」


そう言って彼女は俺たちに付いてきて下さいと言ってきた。


やがて霧に包まれた森を出た。


「これがゴールですよ」


そう言って案内を終えるヘル。

前には壁があってその壁の上を見ると空が吹き抜けて見えていた。


「ハーデス様が特別に今回は出るの手伝ってあげると言ってましたよ」


ヘルがそう言うとやはり反応するのはメイルだった。


「は、ハーデスってあのハーデス?!」

「あのハーデス様で合ってると思いますよ。この世を統べる女帝です」

「えぇぇぇぇぇぇ?!!!!!み、ミズキってそんな人達に育てられたの?!」


言ってなかったっけ?

って思いながら頷いた。


「ここに落ちてきてさ。ハーデス、ヘル、シバの3人に育てられたよ」

「うふふ。あの時のミズキは本当に可愛かったですわ」


そう言って俺のへそくらいに指を押し当ててつーっと上になぞるヘル。


「肉体の方は本当に男らしくなってしまいましたね。ずっと私が可愛がってましたが、今度はミズキに可愛がられてしまいそうですね」


それを見てはわわわと慌てるメイル。


「や、辞めてよ。私の旦那を誘惑するの辞めてよ//////」


そう言って俺をヘルから奪うメイル。


「旦那ですか。ふふふ、お姉さんはお呼びでは無いようですね」


そう口にしてヘルは合図を出す。すると俺たちの横にいつも見てきた黒いモヤモヤがでてきた。

そんな俺の内面を見たように口を開いたヘル。


「アビスゲートですわ。あなた方の言語で言うとそれは移動魔法です」

「ハーデスにも礼を言っておいてくれ」


そう言ってから俺はメイルの手を掴んでアビスゲートと呼ばれたモヤモヤに手を突っ込む。


俺の体が完全に消える瞬間に


「では、ご武運を。また、会いましょうね」


そんなヘルの声が聞こえた。

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