第18話 俺だけが知らなかったはずの会話
結局寝なかったが特に問題はなかった。
アシュレイ達に見送られて俺は王城を出てギルドに戻ってきたが、特に何もする気が起きない俺は、何かやりたいことがあるなら、とサーシャ達に任せることにした。
その相談している間ほんの少しだけ仮眠を取ったから多少はマシになった。
ちなみにスミレは俺たちとは一旦距離を取るらしい。
近所の商店で雇ってもらうとか言って出ていった。
そしてやってきたのはCランククエスト。
サーシャが言うには私たち今乗りに乗っているので行ってみましょうとの事だった。
「悪い、体調があまり良くない」
先に言っておくことにした。
「あまり期待しないでくれ。まぁメイルがいるから大丈夫だろうとは思うけど」
元勇者パーティのメイルは正式にこのパーティに所属してくれた。
俺がいない穴くらいは埋められると思うけど。
「ま、このくらいの難易度だと大丈夫だよ」
そう言ってサーシャに進ませるメイル。
俺は1番後ろをメイルと歩いていた。
「ごめん、私は寝てたよね」
謝ってくるメイル。
「気にするなよ。結局何も無かったし、何よりメイルが寝てくれたおかげで今日も動けるんだしな」
瞼が今にも閉じそうな中それでも気合を入れて進む。
踏む度にガラガラと廃墟の残骸が崩れていく。
ここは前の緊急クエストで行ったところと同じように既にモンスターに襲われて潰れてしまった村だ。
そこに住み着くようになってしまったミノタウロスというボスモンスターを狩って欲しいらしい。
ボスを探しながらメイルと話す。
「アシュレイはどうやって勇者になったんだ?やっぱり勇者を選ぶクエストとやらを勝ち抜いたのか?」
「そうだけど、アシュレイは初めから資格を持って生まれてきたよ」
資格?俺が聞くと説明してくれた。
勇者の証という紋章が体に浮かび上がることがあるらしい。
今の勇者アシュレイはそれを生まれた時から持っていて生まれながらの勇者という話らしい。
「ふぅん、生まれながらの勇者か」
俺とは違うな。
俺は生まれながら誰かのものまねしか出来なかった人形みたいなもんだ。
やっぱり出来るやつは初めから決まってるんだな。
そう思う。
「ちなみに、名門でも何でもない家の出身だって。私が知ってるのはここまで」
そう口にするメイル。
そうか、と返事をしておく。
「アシュレイがあのまま良い奴でいてくれたらそれが一番いいけどね。俺は今のこの生活があればいいと思うし」
俺を黙って見てくるメイル。
何なんだろう?そう思っていたら
「ミズキ様!!ミノタウロスいましたよ!!!!」
サーシャが俺のところに来て報告してくる。
前を見るとたしかにミノタウロスが前方にいた。
早く終わらせようか。
「ダイヤモンドダスト」
俺はミノタウロスに向け魔法を使った。
体が凍りついてそのまま生命活動を終えるミノタウロス。
それを確認してから皆に帰ろうかと提案した時だった。
くそ……眠いな。
「悪い。少し寝させて欲しい。枕が変わって寝れなかったんだ」
そう言い訳して空いている廃墟まで移動して謝ってから少し寝かせてもらうことにした。
メイルもいるし問題ないだろう。
◇
話し声が聞こえて目が覚めた。
まず耳に入ったのはパチパチと鳴る焚き火の音とサーシャたちの声だった。
「誰からする?」
シズルの声だ。それに答えたのはサーシャ。
「ここは結婚してる正妻のメイル様からがいいと思います」
「せ、正妻?!。い、いや正妻が最後じゃないの?」
驚くメイル。
何の話してるんだろう?気になったからもう少し寝ている振りを続けみよう。
俺が寝たからって悪口大会でも開くんじゃないだろうな?
思えば、そうない機会だから盗み聞きしておく。
「分かりました。では私から」
サーシャが俺の横まで移動してきたらしい。
そうして俺の頭を撫で始めた。
「愛していますよミズキ様♡」
俺の頬に何か柔らかいものが触れた。
「寝ているミズキ様にするのも中々いいですね♡」
そうやって離れるサーシャ。
次はシズルが口を開いた。
「わ、私もする」
同じように近寄ってきて
「う、嬉しかったよミズキさん。あの時、私に勇気をくれて。好きです……」
また何かが触れた。
何をしてるんだコイツら?
「次、メイル様の番ですよ?」
サーシャの言葉にメイルがまた驚いたようだ。
「わ、私はやるなんて一言も……」
「正妻なのにやらないんですか?」
「わ、私は……その結婚してるけど」
何やら言い淀んでいるらしいメイル。
困っているようだしそろそろ起きるか。
「み、ミズキ?!起きてたの?!」
俺が体を起こしたのに気付いて驚いたらしいメイル。
「メイルの声で目が覚めたよ。まぁ大分眠気は飛んだな。3人とも助かったよ。モンスターとか倒してくれたんだろ?」
頷く3人組。
「じゃ、じゃあ帰りましょうかミズキも目が覚めたみたいだし」
話題を変えたいのかさっさと立ち上がるメイルだけどそれに気付いたサーシャが口を開く。
「続きしなくていいんですかぁ?」
「や、やらないわよ」
そう言ってメイルが立ち上がったその時だった。
上空を何かが横切ったかと思えば
そのまま急降下してきた。
ドォォォォォォォン!!!!
地面を振動させながら着地するのは
「ど、ドラゴン、Aランクモンスターが、何で、こんなところに、」
1番近くにいたメイルに目を向けているドラゴン。
口にエネルギーを溜め始めた。
「サーシャ、シズルは早く下がれ」
指示を出す。
2人はすぐに頷いて下がるが。
メイルはドラゴンを見上げたまま動かないままだった。
「どうしたんだ?」
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