第16話 王城にきた
ギルドに戻りアルマからカードを受け取った。
彼女の話を聞くと後1クエストでBランクへの昇格クエストを受けられるらしい。
なんて事を話していたら、カランカランとギルドの扉が開いた。
入ってきたのは忘れもしない男。
勇者アシュレイだった。
そいつは綺麗な金髪を揺らしながら俺たちのところに来る。
「こんにちはミズキ君だっけ?」
俺に話しかけてくる。
「そうだよ」
俺がそう答えるとギルド内が騒がしくなった。
「お、おい!勇者アシュレイさんがきてるぞ!」
「ほ、ほんとだ!勇者アシュレイだ!」
なんて会話でギルド内は直ぐに騒がしくなった。
「俺になんの用?」
「これと言った用はないよ。ただ、最近噂の君に挨拶に来た、だけだよ。グンダから聞いたよ。凄まじい狙撃をしたって。すごい腕前の冒険者がいるってさ」
そう答えて俺に手を差し出してくる。
握手という事らしい。
「悪いな。男と握手する趣味はない」
そう答えると
「うーん。そっか。残念だ」
手を戻して顎に手を添える。
この男からは今のところ悪意は感じないけど。
「僕は君みたいに中性的な子なら全然いけるけどね。パッと見女の子かと思ったよ」
ウィンクしてくる。
「勘弁してくれ。これでも男だから」
「それは失礼したね」
俺の兄貴ならそろそろ目を左右に動かしてチラチラサーシャ達を見る頃だと思うけどそんな様子は無い。
ずっと俺に視線を注いでいる。
と思ったがサーシャ達にもしっかりと視線を合わせる。
「君たちの事を王城に招待したいと思うんだけどどうかな?ご同行願えないかい?」
そう聞いてくるアシュレイ。
「お、王城ですかぁぁ?!!!そ、そんなわ、私のような奴隷なんかが行っちゃうと失礼ですよ!!!!」
必死に否定するサーシャ、だが
「奴隷と言ったのかい?」
悔しそうに拳を握りしめるアシュレイ。
「奴隷なんてシステム僕は憎んでるよ。この世界から消えて無くなればいいと思っている。人間は平等なのだから」
こいつは人間じゃなくエルフだけど、とは言わない。
にしても表はほんとに理想の勇者様みたいな感じだ。
裏の顔は分からないけど。
まぁいいか。
「分かった。招待してくれるか?王城というものも1回くらい行ってみたいし」
「良かったよ。招待を受けてくれて」
爽やかな笑みで答えるアシュレイ。
俺たちはそんなアシュレイについて行く。
◇
俺達は先に王城の王室に案内された。
「よく来たな。ミズキとやら」
玉座でふんぞり返っている王様に話しかけられた。
「入れてくれてどうも」
そう返すとサーシャ達の顔とアシュレイの顔が凍った。
「貴様口の利き方を知らんのか?両親に何を教わってきた?」
「母親は父親に殺されたよ。俺に何か教える前に死んじゃったよ。俺は父親から逃げたんだ」
「要らぬことを言ったな。許せ」
謝ってくる王様。
「ということはスラムで生活していたのか?ならその口の利き方にも納得できるが」
スラムと言えばスラムみたいな場所だったけど楽園と言えば楽園みたいな場所だった。
答えようがないな。
俺の沈黙をどう受け取ったのか分からないけどグスグスと涙を流し始める王様。
「お前の生き方を想像してみると涙が止まらんぞぉぉぉぉ」
うおーんうおーんと泣き始める王様。
「自身がそんなに苦しい立場でありながら少女3人の面倒を見るなど並大抵の人格ではできぬ事だろう」
その様子を見てアシュレイが口を開いた。
「まさかそんな過去があるなんてね。それにしても王様を感動させてしまうなんて、大したものだよ君は」
そう口にするアシュレイ。
そうしてしばらく、王様との面会も終わった俺たち。
「次は勇者パーティの訓練の様子でも見てもらおうかな」
アシュレイがそう言って次に案内したのは王城の敷地内にある訓練場だった。
中には50人程の冒険者達が必死に訓練していてその中にはメイルの姿もあった。
アシュレイが現行の勇者パーティのメンツだけ集合をかけた。
そうすると近寄ってくる3人の女の子。
メイルだけは近付きながら俺に気付いていたのか。少し顔が赤かった。
「な、何でここにいるの?」
メイルが最初に俺に聞いてきたが
「僕が呼んだのさ」
アシュレイが答える。
「ふーん」
つまんなさそうに返事をするメイルだったが
「アシュレイ。私勇者パーティやめようと思うの」
そう声を出すメイル。
「何故?ほんとうにやめるの?」
聞かれてメイルは手に着けた指輪を見せた。
「私もうミズキと結婚してるから」
そう言って俺の横に移動してきて俺と腕を組んでくる。
「だからもう言い寄らないで欲しい」
「もしかして僕が言い寄ってたのが気に入らなかったかな?それならすまない」
そう言って頭を下げるアシュレイ。
俺の兄貴と違ってすごい人格者らしいけど。
そして顔を上げると俺を見てきた。
「彼女辞めるみたいだからよろしく頼むよミズキ。流石の僕もそこまで言われては引き止められないな」
そう言って少し悔しそうな顔でそう言ってくる。
何なのだ?この人格者は?
俺がそんなことを思っていると
「ミズキか、聞いた事のない冒険者だが」
俺に話しかけてくる女。
「私は剣聖のエルザと言う。手合わせ願えないだろうか?本当にメイルの結婚相手に相応しいのかどうか確認したい」
とんでもないことを言い出した。
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