第13話 緊急クエスト完
その後もスミレは俺たちの数歩後を着いてきていた。
「ごめんなさいシズル。本当にごめんなさい。仲間に見放されるってこんなに辛いことだったんですね」
「いいよ、もう」
俺は立ち止まってシズルに声をかける。
「なぁ、シズル。お前が許しても俺はそいつの事信じてないんだよね」
立ち止まって俺は奴隷用の首輪をシズルに渡す。
「魔法道具だ。奴隷契約ができる。これ以上それを俺の後ろに歩かせるつもりならそれで首輪をしてくれ」
奴隷契約をすると内心はどうあれ行動では主人を裏切れなくなる。
「俺はお前は信じてるよ。だからお前にさせる」
そう言ってシズルに首輪を渡した。
シズルは少し考えていたがスミレの首に首輪をつけ。
奴隷契約をした。
「こ、これでいいんでしょうか?ミズキ様」
俺に聞いてくるスミレ。
まさか快諾するとは思わなかった。
「それでいい」
答えて俺は今日も今日で屋上に上ってサボる事にした。
心を入れ替えた、か。
あのクソ兄貴が入れ替えてるとは思えないけど。
下ではサーシャとシズルが今日もモンスターを叩いてレベル上げをしている。
その中にはスミレもいて。混ざってモンスターを倒していた。
そうして今日の防衛も終えた頃俺は屋根から降りる。
今日もグンダに見つかって勧誘されていたところだ。
ちなみに最後までサーシャ達は自分たちの力で切り抜けていた。
成長が速いな。
「じゃあ、今日も点呼取るから集まってくれ」
グンダは先に行ったので3人を呼んで俺達も向かう。
向かった時剣崎と立野と呼ばれたヤツらが近寄ってきた。
「おい、ブス。お前どんな顔してそのパーティに入れてもらったの?」
話しかけてきたのは剣崎だった。
それから俺を見る剣崎。
「ミズキさんでしたっけ?俺らのパーティに来ませんか?次Cランクへの昇格クエスト受けるんですよ俺ら。あなたみたいな人は即戦力だ。そんな女だらけのパーティより絶対俺たちの方がいい」
そう言われるが首を横に振って鼻で笑う。
「1度スミレを裏切ったお前たちのパーティは1番ないな」
過程はどうあれ1度人を裏切った奴は、その後も簡単に裏切るようになるという話を聞いたことがある。
「そんな裏切りマンのパーティに入ると思ってるの?まともな人間ならその話聞いたら誰も入りたがらないよ」
そう言ってやると立野が口を開く。
「後で後悔しないでくださいね?もう遅いですから」
そう言ってクラスメイト達の方に向かっていくが、入れ替わるように何人かのクラスメイトがやってきて
「ごめん。カケハシさん。無視したりしちゃって」
「私もごめん、その変な噂流して孤立させちゃったかも」
みたいな感じで謝りに来ていた。
その全部にいいよ、と返すシズル。
本当に人ができてるな。
兄貴を叩き殺した俺とは大違いだ。
「それじゃ、また今度あったらよろしくね」
そう言って謝罪に来たクラスメイトは王都に戻っていった。
それを見ていたクラスメイト達がゾロゾロとそれに続いて謝罪に来た。
それを黙って見ていたのは剣崎と立野のパーティだけ。
「行くぞ!立野」
「ま、待ってくれよ剣崎」
2人は俺たちに目もくれずに直ぐに王都に戻って行った。
「本当にごめんなさいシズル。本当に謝りたいと思ってましたの」
そう口を開くスミレ。
「剣崎に告白されたのでしょう?」
「え?な、何でそれを?」
「剣崎が言ってましたの。シズルがその話を影で馬鹿にされたって。それで私腹を立ててしまい」
「し、してないよ。そんなの」
話を聞く限りその剣崎って奴が悪いのかな。
「ごめんなさい。昨日嘘をつかれたのかなって思いまして」
「そうだったんだ」
そんな話をする2人。
その時だった。
ルーシーからの報告が入る。
「ひ、非常事態だ!!!!Aランクモンスターのドラゴンがこちらに向かってきている!まだ残っているメンバーは対応に向かって欲しい!!!!!西方向からどんどん迫ってきている!!!」
そんな報告が入り。西を見ると確かにドラゴンが迫ってきていた。
その後も続くルーシーの言葉。
「ドラゴンとの距離30キロメートル!!30分後には接敵する!それまでにAランクは配置に!それ以外のランクの冒険者は設備を準……」
俺はこのテレパシー魔法を拒否した。
俺の周りにいたグンダ達も同時に受信出来なくなったらしい。
「何をしてるんだ?ミズキ。まだ指示の途……」
「黙ってあいつぶっ殺せばそれで終わりだろ?」
ルーシーが何でそんな事を単刀直入に言わないのか俺には理解できない。
「な、何を言ってるんだ?!ドラゴンなんてSランク冒険者10人集めてやっと倒せるモンスターだぞ?!ちゃんと指示を」
そう言ってくるグンダの横でグンダに口を開く。
このクエストは延長されても報酬の額は変わらない。
延長されればされるほどタダ働きさせられるってわけ。
「ごちゃごちゃうるさいな。黙って見てろよ。早く帰りたいんだよ俺は」
「っ?!」
何を感じたのか尻もちをつくグンダ。
左手に巨大な氷の弓を作り出す。
そして右手には2メートルを超える氷の矢。
それをすぐに構えるとグンダが俺の弓を指さしてきた。
「そ、それは……ば、ばかな……神話の……シバ神が放ったとされる……」
「
グンダが呟いた言葉を無視して俺はその矢を放つ。
光の速度で放たれたその矢は通った場所を凍らせながら飛んでいく。
「ギャァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
遥か遠くにいたドラゴンに当たると一瞬にして凍らせドラゴンは落下を始めた。
「ば、ばかな!な、何だ今のは!ど、ドラゴンが!落下したぞ!何だこの氷は!!」
またルーシーが律儀にテレパシー魔法を飛ばしてきたのを拒否する、
今の矢はシバに教えてもらった最後の技。
「ちっ……血が出てるな」
指先から血が滴っていた。
人間に許された技では無いと言われたけど教わった。
それがこの代償だ。
威力も何もかもシバのそれには追いつけなかったけどこの世界で使う分には十分だと思う。
「た、大変です!ミズキ様が!お怪我を」
すぐに寄ってきて俺の指にヒールをしてくれるサーシャ。
俺は腰の抜けたグンダを見てからサーシャ達に声をかける。
「さ、帰ろっか」
俺がそう言ってみんなと一緒にとりあえず姿を消したところ俺たちの後ろから色んな声が聞こえた。
どうやら人が集まってきたらしい。
「な、何だ今のは!凄い矢だったな!!!」
「グンダお前がやったのか?!」
「ばっきゃろう!Sランク最弱クラスのグンダにあんなのが出来るわけないだろ!」
そんなことを言われているグンダ。
「ち、違うんだ。でぃ、Dランクの冒険者がこれを……」
「はぁ?出来るわけないだろ?Dランクにこんなこと。寝ぼけてんのかよ。しっかしかってぇなぁこの氷。剣で殴っても割れねぇよ」
そんな言葉を返されるグンダ。
そして最後に微かに聞こえたのは
「やっぱりシバ神が降臨なさったんだなこれ!今日はシバ神が降臨して下さった日にしよう。そうだな。シバ神救国日と呼ぼうぜ!」
「それいいな!」
そんな会話だった。
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