第11話 緊急クエスト2


「信頼出来そうか?」


俺はシズルに聞いてみた。


「う、うん。出来そうだよ」


顔を赤くしてそう返してくるシズル。


今も、てい、たぁ!っとポコポコモンスターを殴り続けてるサーシャを見た。

さっき見た時よりレベルが上がってた。


俺が教えてあげたことを守っているな。レベリングなんて、面倒くさくてもできる時にやれと教えてある。


どうせそのうち上げることになるんだから、って。


「シズルも行ってきたらどう?しょせん、この世界は数字が全ての世界。レベルさえ上げてしまえば恐怖感も薄れるんじゃないか」

「うん!」


シズルはサーシャの方へ向かっていった。

いい方向に進んだかな。


最低限強くなってもらわないとさ。ペット連れて戦場に来てるわけじゃないから自衛くらいはしっかり出来るようになってもらわないとね?


後俺がサボれない。


「ふぁ〜」


アクビしながら家の2階に上がって割れた窓ガラスから屋根に上がる。


「そろそろ真面目にやりますか」


屋根裏から状況を観察する。


おー、頑張ってる頑張ってる。


その時、タッと音がして誰かが屋根裏に昇ってきていた。

Sランク冒険者のグンダだ。


「こんなところで何をしてるんだ?君」

「1人くらいはこうやって全体を見れる位置にいることは大事だぜ?」


実際はサボってるだけだけどそれらしい事を答える。


「君は剣士だろう?こんなところで何ができると言うんだ?」


グンダにそう言われ俺は横に手を置くと瓦を1枚引き剥がしてそれをモンスターに投付ける。


もっともグンダは気付いていないみたいだったけど、ガン!と当たる瓦。


それはベランダからグンダの仲間を弓矢で攻撃しようとしていたゴブリンに当たり倒れる。


グンダの仲間達は「え?!何なの?!今の音!」「やべぇ!俺たちゴブリンに狙われてたんだ!誰かが助けてくれたんだ!」とこちらもやはり気付いていなかったようだ。


「なっ!こ、この距離から瓦を当てるだと?!20メートルはあるだろ?この距離からあんな小さな的に?!しかも俺ですら気付かなかった敵に気付いて?!Sランク弓兵クラスの狙撃技術だぞ?!」


驚くグンダに答える。


「な?1人くらい全体見ておいた方が良かったろ?」

「そ、それもそのようだが、き、君は一体?ほ、本当にDランクなのか?」


そうだよと言って答えるとグンダはこの区画にいるリストを見始める。


「ミズキ……か。知らない名前だな」


そりゃそうだ。俺はブラウンの名前を貰えなかったしあの家の人間として認められなかったから名前はそれしかないし。


俺はもう一度街を見て何も無いことを確認すると目を閉じてサボりを続行。しかしグンダが口を開く。


「こ、この作戦が終われば俺たちのパーティに来ないか?ミズキ」


その内容は何かと言うと勧誘だった。


「本当は、と言うと君をこのままA区画まで向かわせたいところだが許可は降りないだろう。この作戦が終わったら、だ。君を我がパーティに」

「そういうのいいから」


答えてダルそうな目を向ける。


「俺もうパーティメンバーいるし」

「な、ならそのパーティメンバーも迎えよう。君なら本当に即戦力なんだ」


俺だけじゃなくパーティ毎引き抜きにかかるグンダ。

それ程までに俺を引き抜きたいらしいが。


「断るって言ってるの分からないかな?」


そう言うと1歩下がるグンダ。


「す、すまなかった。しつこかったかもな。生まれてきて初めて見るような逸材だったから熱くなってしまった」

「別に気にしてない」


そう答えていると


「うぐ……囲まれてしまいました!!!たすけてくださーい!!!」


サーシャ達がモンスターに囲まれていた。

モンスターが攻めてくる速度に処理速度が追い付いていないようだった。


「は、早く助けよう」


そう言って降りようとするグンダを止める。


「下手に降りるなよ?巻き込まれるぞ?」


その瞬間サーシャを囲っていたゴブリンが一気に氷漬けになる。


「なっ……あ、あの数のゴブリンをこの距離から詠唱なしで?!!!!!」


驚くグンダ。

別にこの程度は普通にやっている事だったんだけどな。


「こ、ここまで出来るなら幼少期は神童とか呼ばれてたんじゃないのか?だが、ミズキなんて名前……」

「別にそんなことないさ」


俺はただの望まれていなかった子だよ。

そう答えて氷を割る。


パリーンと割れて砕け散る氷の破片。

その中から俺に感謝するサーシャとシズルの声。


俺の姿は下から見えないはずなのに2人とも俺を信じているらしい。

俺がやったものだと確信を持っていた。


その時A区画から作戦終了の報せが全域に届く。


「これにて作戦は終了だ。各自ギルドまで戻れ。尚第二波がある場合は確認が取れ次第追加で緊急クエストを発令する」


それだけ言って終わるルーシー。

俺は聞き終えて屋根から飛び降りてサーシャ達と合流する。がグンダがまだ付いてきていた。


「い、一応一旦集まってくれないか?点呼をとる必要があるから」


そう言って向こうの広場に全員を集めると言ってグンダはD区画にだけ指示を出していた。


「仕方ないな。指示には従っておこう」


そうしてグンダの指示でやってきた広場。

このまま直帰したかったけど指示であれば仕方ない。


面倒事にもしたくないしな。

そう思い向かった広場。


既に結構な数のメンバーが集まっていたがそれを見たシズルの顔が曇った。


「どうしたんだ?シズル」

「な、何でもないです」


なんでもない訳ないだろ?

そう思った次の瞬間俺は理解した。

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