第10話 緊急クエスト


「眠れなかったんだけど結局」


死にそうな顔をしているメイルと反対にウキウキしているサーシャ。


「メイル様どうしたんですか?ご気分が優れないのですか?」

「お陰様でね」


肩を落とすメイル。

サーシャは首を傾げていた。


あれな話なので誰も突っ込めない。


「じゃあ私こっちだから」


そう言って勇者パーティの方に行くメイルを見送ってから俺たちはギルドに向かった、のだが。


ギルドに入るなりアルマが駆け寄ってきた。


「緊急クエストが来ていますが興味ありませんか?」


そう言って俺に紙を渡してくるアルマ。

別に俺だけじゃなく他の冒険者にも配りに行っていた。


紙面に目を通すと【憧れの勇者パーティと冒険に出よう!】というデカデカした見出しがあった。


クエストの内容は防衛戦らしい。

緊急クエストというだけあって緊急な内容だな。


多分本当に急に来たのだろう。


モンスターが大量に迫りきているから、モンスターを殲滅するか撤退させるのが勝利条件らしい。


その時一際目立つ声が聞こえた。


「私がギルドマスターのルーシーだ。ただ今発令中の緊急クエスト是非とも参加して欲しい!各々のパーティのランクに合わせた場所に配置されるから、ランクの心配は必要ない!」


そう言い切るルーシー。

報酬固定なのかな?そう思いながら紙面を見ると


「げっ、そんなにランク差による差はないんだな。まぁ俺はいいけど」


EとSでやっと報酬が2倍になるだけだ。

多分労力は2倍以上になるから正直Eランクで参加して適当に参加賞もぎ取るのが1番楽なんだろうなぁって感じる。


Dランクならそこそこ楽な場所割り当てられるでしょ。

そう思って参加を表明して提出する。


しばらくするとルーシーが説明を始めた。

まず、区画をAからEまで作る。


Aから順に難易度が高くなっておりEが1番難易度が低い配置になる。

冒険者は自分のランクと同じ区画に配置されるそうだ。


今回防衛する場所だがコの字型になっている場所で真ん中に近いほど難易度が上がりA区画となり外に行けば行くほどD区画E区画となるらしい。


つまり俺たちは殆ど1番外の防衛に当たることになる

さっさと雑魚倒して、サボるか。とかそんなことを考える。


説明を終えたルーシーは


「説明は以上だ。各員準備が出来たものから担当区画へ向かえ!参加時間が長ければ報酬が上がるぞ!」


と発言して会議は終わった。


俺は特に準備物もないしシズルやサーシャが準備を終わったら担当区画へ移動することにした。


ちなみに今回の防衛戦の舞台となる場所だが既に廃墟となっている街だ。

昔にモンスターの侵略を受けて手放したらしい。


「ギィィぃぃぃい!!!」


そのせいなのか、たまにモンスターを見かけるが


「はぁっ!」

「やった!倒したぞ!」

「すごいじゃないか!俺達も負けてられねぇな!」

「おうよ!」


熱心な冒険者によって倒されていた。

ご苦労なもんだ。


ちなみにモンスターを撃破することによる報酬の増加はほとんどない。

つまりサボるのが最適解ってわけ。


そう思いながらバレないように建物の中に避難してサボる。


「はぁ、早く終わんねぇかなぁ」


壁に背を預けて座って欠伸しながら呟く。

すぐ近くに窓があるから厄介事が迫ってきたら直ぐに見えるようになっていた。


「き、緊張感ないですねミズキ」


横で同じようにサボるシズルに言われる。


「どうせ俺ら戦力として見られてないしな。気張ることないさ」


その戦力として見てないというのを表すようにSランク冒険者達は各区画をバラけて配属されているしな。


この区画のDランク冒険者は基本的にはSランクが狩りきれなかった分のフォローに回る事になるだろう。


ちなみにこの区画にはSランク冒険者グンダさんという人が配属されていた。


窓から覗くとそんなグンダがみんなに声をかけていた。


「みんな!この防衛戦乗り切ろう!」

「おーーーー!!!!!」


すげぇ、あいつらで勝手に盛り上がってるよ。

俺はあんなのに混ざるタイプでもないし日陰でサボりを続行する。


「そんな気張らなくてもこの辺りにくるモンスターのレベルなんてせいぜい15が限界だろうよ」


そう呟きながらシズル達のレベルを見る。

ステータスは色々と項目があるけど基本的にレベルの数字が勝っていれば負けることは無いから見るのはぶっちゃけレベルだけでいい。


名前:シズル

レベル:23


名前:サーシャ

レベル:22


余裕だよ余裕。


だと言うのに


「い、生きて帰れますかね?私防衛戦なんて初めてで」


シズルが急に不安そうな顔をする。

それから無意識にかは知らないけど俺の手を掴んできた。


「自分の力を出せば問題ないさ」


そう言いながらサーシャに目をやった。

彼女はもっとレベルを上げたいと言って稼ぎに行った。


「もっと来ても構いませんよ!えい!」


サーシャは杖でポコポコモンスターを殴り倒して経験値稼ぎをしていた。

彼女があぁやって出来るのは初めからこの世界出身だからだろう。


それもあるしいざとなれば俺が助けに来ると信じて、あぁやって敵の前に立ってるって言ってた。


でもシズルは転移組で心細くて中々踏ん切りが付かないのかもしれないな。

それに俺もこんな事に巻き込まれているシズルの事を不憫に思う。


「なぁ、シズル。まだ本格的な作戦開始まで時間がある」


俺もそんなサーシャと同じで彼女を信じてる。

ここでサボっててもサーシャがこの近くにいるモンスターを部屋の中に入れないって信じてる。


「な、なに?!」


俺はシズルに俺の顔を見させた。


「嫌なら拒否しなよ。力なんて全然入れてないから」

「な、何を//////」


顔を赤くするシズル。

分かるだろ?と目で聞いてから口を開く。


「やばかったら俺が助けるよ。だからもっと自信持って武器振ればいいさ。俺の事を信じなよ、サーシャみたいにさ。信じられないなら信じられるようにしてみせるさ」


じゃないとシズルは何時までも前に進めないとそう思う。

それにしても最高だなこの体。


3人の女神にも可愛がってもらえたし。

やりたい放題じゃん。

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