第9話 結婚(仮)
勇者パーティの聖女メイルはカウンターにやってきて
「退いてくれる?」
と一言。
「あぁ」
どくと彼女はアルマと会話して依頼を引き受けていた。
そのまま出ていこうとするメイルを呼び止めた。
貴重な勇者パーティとの接触チャンスだと思った。
「待ってくれないか?」
「なに?」
だるそうな目で見てくるメイル。
呼び止めたはいいけど何を話せばいいか決めていなかった。
「何も無いなら行くよ?私」
そう言ってどこかへ行こうとするメイルに、何でもいい。
とりあえず口を開けと、思った俺は余りにも適当なことを言ってしまう。
「ま、待ってくれ君のことが好きなんだ」
「は、はぁ?」
振り向いた顔は赤くなっていた。
「じょ、冗談でしょ?」
「い、いや本気だ」
「うぅ……//////」
その場で顔を赤くしているメイル。
「ていうか、あなた誰?」
「ミズキだ」
「い、いいよ?ちょっとだけ付き合ってあげるよ。クエスト受けながらでいい?」
そう聞かれた俺は適当にシズル達に話をつけて今日の所は先に帰ってもらうことにした。
場所が移って草原。
「で、ほ、本当に私のことが好きなわけ?」
顔を赤くしながら聞いてくるメイル。
こういう事には意外と慣れていないのかもしれない。
「ごめん。適当に呼び止めるために何か言ったらそうなってた」
「びっくりしたよ。いきなり知らない人に告白されるもん」
あははと笑うメイルに本題を聞くことにした。
「勇者の事なんだけど」
「何で今?あいつの話しないでよ」
露骨に機嫌が悪くなる聖女。
何かあるのか?
「嫌いなのか?」
「嫌いに決まってんでしょあんなの。みんな何がいいのか分からないよ」
そうまで言ってからハッと気付いたような顔をするメイル。
「ごめん。今言ったこと忘れて。あいつの耳に入ったらやばい」
「誰にも言わないよ。俺もあいつの事好きじゃないんだよ」
「何かあったの?一般人受けはいいはずなんだけどな。後私以外のパーティメンバーには嫌われてないし」
怪訝な顔をするメイルに全て話す。
俺はメイルに自分が転生者であることを話す。
そしてあいつが俺の兄であるかもしれないこと。
「嘘でしょ?そんなことしてたの?あいつ」
「分からない。まだ可能性があるかもってだけ」
「でも、あいつたまにポンコツって言葉言うわね確か」
そう言って思い出すような顔をするメイル。
やがて俺に目を向けた。
「私と結婚して欲しい」
「え?」
首を傾げる。
なに?どういうこと?
「勘違いしないで形だけだから。知らないの?契約結婚。お互いはお互いのことを裏切れなくなる特殊な結婚」
聞いたことがあるな。
金とかそれだけの関係で繋がるための結婚。
それが契約結婚。
「これ以上私と話したいなら結婚するって約束して欲しい。まだ信用出来ない。教会はあなたが選んでいいから」
そうして俺は形だけの結婚を終えてまた草原に戻ってきた。
まさか結婚することになるなんてな。形だけだけどさ。
「私はアシュレイのこと信じてないよ。気持ち悪いんだよねあいつ」
「気持ち悪い?」
「結婚しよう結婚しようって寄ってくるのよ」
そう言って俺を見て微笑むメイル。
「でもこれで私には何も言えなくなるよ。もう結婚してるから」
薬指の指輪を見せてくるメイル。
彼女の要望で自腹で買って付けている。
ここで俺と結婚したのは言い寄ってくるのがウザかったからなのかな。
「ねぇ、ミズキ」
「なに?」
「あなたの話聞いてたら怖くなっちゃったから、これから泊めてくれないかな?」
確かにメイルは女の子か。
俺の幼馴染が殺された、なんて話されたら怖くなるかもしれないな。
そんな相手がすぐ近くにいるなんて俺も耐えられないし。
「家じゃなくて宿だけどそれでもいいならどうぞ」
「いいの?じゃあお邪魔しようかな」
メイルはクエストの完了をギルドに伝えてから俺の宿にやってきた。
「ふかふかー」
直ぐにベッドに飛び込んだメイル。
そんな彼女が口を開く。
「私そろそろ勇者パーティやめようかなって思ってたんだ。もしやめたらパーティに入れてくれない?これでもSランクだから即戦力だと思うよ」
確かに勇者パーティに入れるほどのメイルが入ってくれるならこのパーティにとって即戦力にはなるけど。
「勿論いいけど。メイルこそこんなパーティでいいのか?」
やったっと小さくガッツポーズする彼女。
「うん、むしろここがいいかなー」
そう続けて言ってから俺に寄ってきた。
「ミズキ。優しいしね」
「流石勇者パーティですね。ミズキ様のお優しさに気付くなんて。目の付け所が違います」
会話に入ってきたサーシャ。
そこでメイルがサーシャについて質問してきたので俺の奴隷だと答える。
「奴隷なのに綺麗な服だよね。よっぽど可愛がられてるみたいねあなた。こういう細かいところ気を配ってるのもやっぱり信じられるなって思うよ」
サーシャの髪を撫でながらそう口にするメイル。
毎日サーシャには触られたり触ったりするから綺麗にしてるだけなんだけど。
「ところでミズキ様?お客様がいらっしゃっていますが今日も私にミズキ様を刻み込んでくれるのですか?」
毎晩の楽しみなのか知らないけど聞いてくるサーシャ。
俺はどっちでもいいしメイルに目をやると顔を真っ赤にしていた。
「す、好きにしたら?私は居候してる身だし何も言えないわよ」
「ではシャワー浴びてきますねミズキ様♡」
そう言ってサーシャはシャワーを浴びに行った。
「ごめんなメイル。我慢してくれ」
「分かってるわよ。でも出来れば声は抑えさせてね」
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