第7話 初めてのクエスト

「もういい」


アルマ達にそう言い俺は凱旋を見るのを辞めた。


「ど、どうしたのですか?ミズキ?」


よく分からないような顔をしながら付いてくるアルマ。


『おめぇも道連れだよばーか……致死量の2倍だ。確実に死ぬぜお前……バイバイ【ポンコツくん】』


俺は前世で兄と刺し違える事になった時のことを思い出していた。

候補として覚えておくことにしよう。


それにもしかしたら心を入れ替えてるかもしれないし。

それから別人なのかもしれないし、様子見は必要だ。


それより、勇者パーティにはどうやって近付こうか。遠くからじゃ様子見も難しいし。


今の俺達Eランクが近付いて相手をしてくれるとも思わない。


とりあえずランク上げになるのかな。

とは言えもう今から行く時間もなさそうだな。


アルマと酒場で食事をして宿を取って寝ることにしようか。



翌日。

依頼を受けるためにギルドに来たのだが、


「あ、あの」


他の冒険者に話しかけられていた。

元気そうな黒髪の女の子の冒険者だった。


「お、同じEランクの冒険者の人ですよね?」


そう声をかけられて頷く。


「よ、良かった〜。一緒にクエストに同行してくれる方を探してたんですよ。ご一緒どうですか?依頼はオーク三体の討伐なんですけど」

「いいよ、別に」

「ほ、本当ですか?!受注してきますね!」


そう言って少女はカウンターへと向かっていった。

うん。いいんじゃない?こういうの。友情って感じで。


「受けてきました〜行きましょ〜」


そう言ってクエストに行く少女達の後ろを付いていく。


やってきた草原。


「ふぁ〜ねむ」


岩に座って少女達が戦っているのを見守る。

声をかけてきた子はシズルというらしい。


相手はオーク三体。

レベルは7とか8。


俺が手を出せば一瞬で終わる。

それじゃつまんないかなーって見守っていると


「ミズキさん、手伝ってくれませんか?」

「ん?手伝って欲しいの?」

「さっきからずっと座りっぱなしじゃないですか」

「本当に手伝って欲しいの?」

「ま、まさか戦えない感じですか?」


そう聞いてきてはぁ、と溜息を吐く。シズル。


「こんなの勧誘するんじゃなかった。あのサーシャって子はちゃんと戦ってるのに」

「仕方ないな。退きなよ」


不審者を見るような目で横に退くシズルの前で俺は石ころを拾った。

それを火属性魔法で高音にしてから親指と人差し指で2匹のオークに向けて弾く。


周りには誰もいない。オーク2匹だけだ。


「そんなもので倒せるわけないでしょ?やっぱあなた戦えないだけなんですね。昨日のを見て声をかけたんですけど」


何やらグチグチ言ってくる横で俺は続ける。


「ウォーターボール」


呟いて水の塊をオークの近くに落下させる。

その瞬間石ころは丁度ウォーターボールに接触して


ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンンン!!!!!!!


盛大に爆発。


「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


俺の横にいたシズルが爆発の衝撃で吹き飛ばされそうなのを手首を掴んで支える。


「な、何ですかぁぁぁぁぁぁ?!!!!!!この爆発はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!スカートがめくれちゃいますぅぅぅぅ!!!!!!!!!」


サーシャの声が響いているがサーシャのいる位置には弱い風しか来ていない。

やがて収まる爆発の影響。


そして依頼書は


【オークの討伐数1/3】


から


【オークの討伐数3/3】


に変化。


それを見てから口を開く。


「本当に俺に手伝って欲しかったの?もう終わっちゃったけど」


俺はサーシャが戻ってくるまでさっの石に座って待つのだが


「文句言ってしまい、すみませんでしたぁぁぁぁ!!!!」


土下座するシズル。

まぁ終わったものは仕方ないし、しばらく土下座していた少女だが顔を上げると


「は、剥ぎ取ってきていいですか?」

「剥ぎ取るもの残ってるかな?」


俺はそう返しながら現場を見てみた。

死体が消し飛んでいる。


無からは何も剥ぎ取れないだろう。


「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


同じものを見たシズルが頭を抱えてその場で蹲っていた。


「な、何なんですか?!今の爆発は!!!」


駆け寄ってきたサーシャが聞いてくる。


「え、エクスプロージョンなのですか?!凄いです!そんな魔法も使えたんですね!ミズキ様は!素晴らしいです!」

「今のは水蒸気爆発だよ」

「???????????????」


何を言ってるのかよく分かってないのか首を捻るサーシャ。

何なんですか?それは、と聞いてくる。


「高音のものが水に当たった時爆発するんだよ」


簡単にそう説明してあげるけど


「わ、私には分かりませんけど天才なんですね!!!ミズキ様は。やっぱり凄いお方ですよ!!!」


軽く笑うだけに止めて俺はシズルに目をやった。


「わ、私の小遣い!どこ?!私の小遣い!」


必死に死体を探しているが吹き飛んだものなんて出てこない。

そんなこんなで意気消沈して帰ってきた。


「うぅ……私の小遣い」


ほら、だから俺は手を出さなかったんだよ。

加減できないから。


「それよりもミズキさんはどうしてEランクにいるんですか?あんなにすごい魔法使えるならSランクいますよね?普通は」


聞いてくるシズル。


「俺昨日登録したばっかだし」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!!!」


ひとしきり叫んだ後にまた話しかけてくる。


「そ、そうなんですか。私てっきり歴戦の猛者だと思ってました」

「そんことないよ」


そう答えてギルドに戻ってきてクリア報告を終えた俺たち。


「あ、あの次昇格クエストですよね?」

「一応そうらしいけど」


とりあえずSランクとやらを目指してみようと思ってる。

俺は一応その辺の事は把握してあって、次だったと記憶してる。


「それも一緒に受けませんか?」


そう口にしてから彼女は首を横に振った。

何か言い間違えたかな?


「むしろ、私をパーティに加えてくれませんか?」

「別にいいよ」

「そ、そうですよねぇ、ダメですよねぇ。私文句ばっかり言いましたもん。そりゃ嫌ですよねぇ」


勝手に悲観的になっているシズル。

聞いていないのかな?


「仲間にするよって言ったよ。よろしく、シズル」

「え、え?」


俺が手を差し出すと


「神様シバ様ミズキ様!ありがとうございますぅぅぅぅぅぅ!!!!この御恩忘れはしません!!!!!」


と涙を流しながら手を握ってくるシズルだった。

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