第5話 盗賊と奴隷とエルフと
屋敷で適当に金目のものをかき集めた俺は家を出る。
メイド達はいなかった。
屋敷の外に兵士がいる場合メイドには休暇が出されているからだろう。
ここにいた俺だから知っている。
「まぁ元々自分の家だし盗みじゃないよな」
そんなことを言いながら持ち出す。
これで、暫くの生活には困らないかな。
「髪どうしよっか。どのタイミングで切ろうかな」
なんか自分でやって変になってもやだしな。
そもそも、まぁいいか。
俺の姿を見られたのは3人で内二人はあの兵士。
職務放棄して俺を素通りさせたなんて言えないだろうし、残りの1人ステファニーは死んだ。
「死人に口は無いし、いいか」
あの世では神々の時間は止まっているようだが俺は違った。
背は伸びるし体は成長するし髪も伸びる。
あの世には散発なんて概念もないし。
結果このロン毛。
「元の世界じゃ有り得ない長さだけど、この異世界人っぽい顔立ちのお陰で最悪な感じになってないのは幸いか」
そんなことを言いながら歩く。
ステファニーの屋敷はそこそこの辺境にある。
王都まで歩いて半日くらいだったかな。
「とにかく歩くしかないか」
そうして数時間歩いて夜になった。
「あーあ。このまま歩いてもなぁ。迷子になりそうだしそろそろこの辺で焚き火でもしますか」
ポーチからテント等の夜営セットを出して組み立てる。
「お腹すいたよー。シバー?ごはー、」
いや、いないんだった。
いつもご飯を作ってくれていたからその偉大さに気付かなかった。
「はぁ……持ってきててよかったわ缶詰」
屋敷から持ってきた缶詰を開けて腹に詰める。
足りない。
もう一個食べるか。
そう思った時だった。
ガラガラガラ!!!!!!!
馬車の車輪の音が聞こえた。
どうやらこっちに向かってきているらしいが。
「ヒャーハッハッハッハッハ!!!!!!!夜中に焚き火してるバカがいるぜぇぇぇえ!!!!おい!お前!死にたくなかったらアイテムポーチ置いてけやァァァァ!!!!」
「襲え!襲えーーーー!!!!金目のもん全部巻き上げろぉぉぉぉぉ!!!!!!!カモがいやがるぜぇぇえ!!!!!!」
そう叫びながらこっちに近づいてきているようなだった。
盗賊かな?
剥き出しの敵意。殺意。
加減する必要は無いか。
声の数、呼吸音。
それらから人数を割り出す。5人くらいかな?
俺は缶詰を開けながら呟いた。
「ダイヤモンドダスト」
ピキーーーーーーン!!!!!
一瞬で全身が凍る盗賊たち。
こちらまで凍えるような冷たさが伝わる。
見なくてもわかる、全滅だ。
缶詰の中身を流し込む。
「さてと」
立ち上がって盗賊達が動かしていた馬車の方に寄る。
荷車には手を付けていない。
中に敵がいる可能性も考えながら荷車の中を確認していく。
1台目。何もなし。食い物が適当に入ってただけ。
「盗品だろうけど貰っとくか。ここに放置しても腐るだろうしな」
アイテムポーチに適当に詰めるともう1台の方に寄る。
中を確認してみると、
「人?」
俺は鉄格子の檻に放り込まれた1人の少女を発見した。
それは金髪のエルフだった。
胸はそんなにデカくないけど。
顔はいい。
なるほど奴隷か。
ステファニーに小さい頃から言われてきた。
エルフの奴隷だ。
それを買えるようになればお前は1人前だ、と。
「下らんな」
鉄格子を剣で破壊する。
「て、鉄格子を……切り裂いた?剣で……鉄を?ま、まさか鉄をも切り裂くと言われるSランク武器の斬鉄剣、ですか?」
話しかけてくるエルフ。
純粋に切り裂いた訳では無い。
ヘルに教えてもらった、剣に薄く火をまとわせる技を使い溶かしただけだ。
そのことを説明しても
「溶かすってどういうことですか?鉄って溶かせるんですか?すごいですね学者の人ですか?!!!!!」
この世界では鉄が溶かせるなんてこと広く知られていないのを思い出す。
教えるも面倒だ。
「好きなとこに行きなよ。君を縛るものはもうない」
そう呟いて俺はキャンプに戻ることにした。
パチパチパチと音を立てる焚き火を眺めてからテントに入るかと思ったところ
ピトッ。
何かが俺の右腕に付いていた。
「わ、私の帰る場所になってくれませんか?」
エルフだった。
「あの人たちに捕まってしまって、もう帰る場所も分からないんです。お願いします。私を連れていってください。何でもしますから」
金を出して奴隷を買うのは下らないと思ってたけど。
無料で貰えるなら貰うよ俺は。
「いいよ」
「ほ、ほんとですか!やった!」
しがみついて来るエルフ。
段々顔を赤くする。
「あ、あの一目惚れしてしまったんです!わ、私はサーシャと申します!」
そう名乗るサーシャ。
「奴隷契約をお願いします」
首輪を指さすサーシャ。
魔法道具の1つに奴隷の首輪というものがあって、これに触れたら触れた奴が主人となる。
そして主人を奴隷は絶対に裏切れなくなる。
「分かったよ」
その首輪に指を当てる。
「こ、これで私はあなたのものです。お名前を教えてください。素敵な人」
「ミズキ」
そう名乗るとサーシャは俺の手を掴んで
「ミズキさん、あなたの事を私に刻んでください。わ、忘れられない日にしてください!!!」
彼女は顔を赤くして俺をテントに誘っていく。
何年もの間おねショタを経験してきた俺に恐れるものは、もうない。
「で、でも、は、初めてなので優しくしていただけると……//////」
赤面するサーシャの背中に手を当てて俺はテントに向かった。
お母さん俺は大丈夫だよ、俺は今この世界を楽しんでます。
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