第2話 め、めがみさま?
「ぐべっ!」
無限に続くような穴に落ちたと思った俺だったけど生きてた。
着地しても無傷だった。
「結構な高さから落ちたと思うんだけどな」
見上げてみるとかなりの高さ。
というか上が見えないくらいの距離を落ちてきたはずなのにピンピンしてる。
ていうかここ、どこだ?
周りを見てみる。
室内?
青白い炎がそこら中に浮かんでいて禍々しい装飾の部屋だけど。
「な、何すか?」
声が聞こえてそっちに目をやると女の子がポカーンとした顔をしていた。
女の子と言っても今の俺より年上だろうけど。
てってってっと寄ってくる少女。
「おはようございますっす」
挨拶してくる女の子。
周りを見るとそんな時間でもないけど
「お、おはよう」
そう言いながら俺は落ちてきた大穴をもう一度見た。
「あー帰ろうなんて思っても無駄っすから」
説明してくれる彼女。
ここは死後の世界と生者の世界の中間であるけど基本的にはもう事後の世界寄りらしい。
例外的にどうしても帰りたい者がいるなら気分次第で送り返してやらんでもない、とのこと。
「ミズキでしたっけ?私今助手募集してるんすけどどうっすか?」
そう聞いてくる彼女。
とりあえず名前聞いてみることにした。
「私の名前?ハーデスっす。あー、私はここの世界を管理してる神様っす」
いやー、照れるっすけどねーと恥ずかしがってるハーデスと名乗った少女。
「助手って何するの?」
「肩もみ雑用お茶入れ洗濯物その他諸々。それ以外は自由にしてていいっすよ」
この世界のこともまだまだよく分からないし俺は頷いてOKを出す。
その助手とやらをやっている内は死にはしないんじゃないかな、と思うし。
「話が分かるっすね。じゃあとりあえず肩もみからよろしくっす」
そう言って彼女は自分の机に戻って座ると俺に本当に肩もみをやらせる。
神様と言う割には普通の女の子の肌の柔らかさだ。
「私こう見えて自分で何年ここにいるか分からないんすよ。あ、安心してくださいね、肉体は見た目通りの年齢で止まってるっす」
「16くらいかなって思ってた」
「まぁまぁ、お世辞が美味いっすね。+5万点っす」
何?その点はと思っても口には出さない。
「点数はしっかり稼いだ方がいいっすよ。私から特別ボーナスがあるかもっすから」
まぁデメリットはなさそう、か。
そう思って肩もみすること30分。
「じゃ、次はケルベロスの餌やりに行くっす」
そう言って彼女は俺に手を差し出してきた。
手をとると彼女は窓の方まで歩いていく。
「何で窓?扉反対じゃん」
「え?飛ぶんすよこっから。歩いて移動すんのダルいじゃないっすか」
窓をいきなり開けるハーデス。
それからマジで飛ぶ。
「ひぃぃぃいぃぃ!!!!死ぬぅぅぅぅ!!!!」
「もう死んでるようなもんじゃないっすか。はっはっは」
笑って飛んでいくハーデス。
やがてフェンスで囲まれた空き地に着いた。
中ではケルベロスが暴れ回っている。
近くの看板には
【†デスガーデン†】と書いてある。
それをちらっと見ているとハーデスは手馴れた様子でフェンスの内側に入っていく。
こちらに吠えながら全速力で向かってくるケルベロス。
全然懐いてなさそうだけど大丈夫なのかな?
「フォースシールド」
ハーデスは呟いて右手をケルベロスに向けて突き出すと魔法を使った。
金色のシールドが展開される。
ケルベロスの牙がそれに噛み付いてボロボロと砕けて落ちる。
それを見た俺の視界にウィンドウが現れた。
【フォースシールドが技リストに登録されました。フォースシールドが使用可能になりました】
なんだ?これ、使えるようになったって?
こんな表示初めて見た。
ものまねの効果なのかな。
「ふぉ、フォース、シールド」
俺も真似して右手を前に突き出してみる。
「真似しててかわい〜♡ミズキ〜出来るわけないっすよ〜♡だって〜これ神様専用の技っすよ〜」
そう言いながら振り向いてくるハーデスの顔が引き攣る。
「な、何で出来てるんすか?私出来るようになるまで10年かかったんすよ?神様の私で10年っすよ?!」
「くっ」
パリン!
シールドが割れてしまった。
多分だけどこの感覚は魔力切れだと思う。
でも、一旦切れた魔力が急速に回復してるのを感じる。
多分この世界限定の効果なんだろう。
元の世界じゃこんなに回復速くなかったし。
「シールド出せたのに割れちゃった」
「いや、展開出来るようになるのがおかしいっすよ。な、何者なんすか?ミズキは」
彼女が俺にそう聞いている時後ろではケルベロスが立ち上がっていた。
「ウガァァァァァァ!!!!!」
突っ込んでくるケルベロス。その直前までハーデスは気付いてなくて
「フォースシールド」
俺が先にシールドを貼ってケルベロスを押し返す。
パリパリパリパリ!
ガラスのように割れていくシールド。
半分くらい割れた。
でも防ぎ切る事に成功した。
「で、出来たけど強度が」
俺がそう言ってる横でハーデスは餌やりを済ませるとさっさと俺の手を掴んでフェンスの外に出てきて、ニヤッと口許を歪める。
「へー。面白いじゃないっすか」
決めたっすと俺を見てくるハーデス。
「とりあえず家に戻りましょっか。ちなみにあれはハーデス城っす。覚えててくださいね」
そのまま俺はハーデスと共にそのハーデス城とやらに帰る。
帰って早々ハーデスが椅子にふんぞり返って小さく口を開く。
「集まるっすよー」
彼女がそう言うと、シュン!!!!と現れる謎の2人組。
「お呼びでしょうか?ハーデス」
金髪の方は礼儀正しく挨拶するが、銀髪の目つきの悪い方は
「……」
無言で立ち尽くしている。
そんな態度も気にせずハーデスは俺に目を向ける。
「金髪の優しそうなのはヘルヘイム、罪人をムチでしばくやばい奴っす。銀髪はシバルバーっす。口は悪いけど実は美少女な人っす。両方私と同じ神様なので頼りになるっす」
そう説明してくるハーデスだけどいきなりの事でついていけない俺
「そこの男の子は私のフォースシールドを1目見ただけで発動させたっす」
彼女がそう言うと
「それは本当?」
シバルバーと説明された銀髪が俺を見た。
えっと、何が起きるの?
もしかして使っちゃダメだったのかな?あの魔法。
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