3-9
「学生の頃に二人で作成したやりたいことリストを消化する」という宮部の計画に沿って、二人はイルミネーションを見に行ったり、回らない寿司をたらふく食べたり、ホームシアターで映画を見たりした。
その日は朝からショッピングモールへ行って揃いのスニーカーを買い、互いの服を選び、夕方に帰宅して、夕飯として皮から手作りして餃子を焼いた。
食後、宮部と真琴は隣り合ってソファに掛け、宮部のスマホで猫や犬の動画を見ていた。
一日歩いて疲れたのか、宮部は時折船を漕ぎ、スマホを落としかけ、真琴が代わって宮部のスマホを握った。
スマホを落とす心配もなくなり安心しきった宮部は、真琴の肩に頭を乗せて寝息を立て始める。
片手には宮部のスマホ。揺すっても宮部は起きない。魔が差してはかぶりを振って、良からぬ考えを打ち消す。しかしそれは徒労に終わる。
『おーい失恋ゾンビ、生きてるかー』
画面上部に表示されるLINEの通知。心拍数が上がる。
半ば反射的に、画面上部に表示されているそれが消えないうちにタップする。グループラインが開く。メンバーは五人で、グループ名は『1年3組ゲーム班』。
宮部が特に仲良くしていたというゲーム仲間たちは、高校一年生のときにクラスが一緒になったメンバーだったと聞かされていたことを思い出す。
心臓は強く鼓動するのに、スマホを触る指先からに血液が届かない。
右肩に載る宮部の頭からできるだけスマホを遠ざけ、LINEを遡る。一件の宮部の発言を見つけ、遡る指が止まる。
『千冬さんに振られた。他に好きな人ができたらしい』
送信日付は今から一ヶ月前、真琴に手紙を寄越す一週間前だった。真琴は更に核心に迫るため、別のトーク画面を探す。
目当てのものはすぐに見つかった。「chifuyu」というアカウント名、アイコンは髪の長い女性が猫を抱いた写真だ。
『私みたいなおばさんのことを好きになってくれてありがとう。でもごめんね。さよなら』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます