2-8

 実家のドアを開けると、真琴の母が怪訝な顔で出迎える。

「おかえり。あんた仕事はどうしたん?」

 真琴の母いずみは、真琴の高校の体操服のズボンと、随分前に職場のビンゴ大会でもらったというくまモンのTシャツを着た姿で、夜勤明けらしいぼんやりした顔で尋ねる。

「やめた」

 あら、そう。と言っていずみは居間に引っ込んだかと思いきや、洗面所で手を洗う真琴の背後に立っていた。「ビール、飲む?」と言ったいずみのその両手には缶ビールが握られている。

 真琴はありがたく、よく冷えた缶を受け取る。

「何かあった?」 

 それとなく核心を突く母に対し、真琴は缶ビールを一気に喉に流し込みながら「東京の水は合わねえ」とおどけて答えた。

 いずみは顔をしかめたが、特にそれ以上は触れず、テレビのチャンネルを次々に回した。

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