2-6
「真琴、僕は」
「別れたくない、以外でどうぞ」
宮部と真琴の二人は、宮部の家の近くのドトールのテーブル席で向かい合っていた。
「あんたが私にしてること、キープって言うんだけど。知ってた?」
「違う、僕は真琴と離れてみて、やっぱり自分を支えてくれてたのは真琴だってわかった」
「何も違わないよ。身の回りのことしてくれて、孤独を癒やしてくれる、便利な人間がいなくなって困るだけでしょ」
宮部は言葉に詰まった。
「一樹さ、別に最初から私のことが好きで付き合ったわけじゃないの、知ってるからね」
「なんでそんなこと言うんだよ……なんでそんなふうに思うんだよ」
「私みたいな陰気で地味な女なら付き合えると思った?」
真琴は、いつもより明らかによく回る自分の口に驚いた。
「とりあえず手近な女と付き合っとけって、あいつなら押せばなんとかなるって、どうせ周りから言われたんでしょ?」
歯止めが聞かないというよりむしろ、何かに焚き付けられるようにとにかく真琴は宮部を責める言葉を吐いた。
「本心を悟られず隠しきれるとでも思った? 残念、私みたいなガリ勉地味女でもわかるんだよね、『女の勘』ってやつで」
宮部は開いた口が塞がらないといった様子で、大人しかったはずの恋人の顔を見つめる。
その表情は、自分の発言が図星ついているのだということを真琴に痛感させる。
「ねえ、千冬さんって小柄で可愛らしいタイプでしょ? 私みたいな地味顔で、色気のないデカい女じゃなくて。千冬さんに似たような可愛らしい華奢な女の子と付き合うんじゃなく、正反対の私みたいなのと付き合った方が、思い出さずに済むもんね?」
「じ、自分のことを、そんなふうに言っちゃだめだよ」
ようやく反論する宮部にほんの一瞬ひるんだが、それもつかの間だった。
「言わせてる本人が言うことじゃないでしょ? 最初からあんたが私に近付いて来なければ私はこんなふうに傷付かなかったんだから」
テーブルを叩きつけられ、宮部は一瞬肩をびくつかせる。
「会計よろしく」
叩きつけた右手がテーブルから離れると、千円札が一枚横たわっていた。
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