第40話 過去篇・サイコロの旅 前編

「何が出るかな、何が出るかな、それはサイコロ任せよ、そーれ♪」


コロコロコロコロ、コロ、、コロ、コロ


「出た、3!ミシェルさん、我々の行き先は松山に決定です♪」


「あのユウさん、こちらの世界で『松山』という名の地名も街も聞いた事が無いんですけど」


「それは残念ですねぇ、とりあえず情報収集をしながら内陸部に向かってみましょうか?」


「はい、穀物の生産地は内陸部に集中していますから妥当な選択かと思います。」


「では、れっつごー♪」




皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは、旅人のユウです。


私を勇者召喚した国はクーデターにより30分ほど前に滅亡してしまいましたので、今日からユウで行かせて貰いいます。


そして私とミシェルさんは美味しい料理を作る為に、味噌と醤油に必要な大豆を入手するべく大豆農家さんを探す旅に出発します。


今のところ大豆農家さんの情報がゼロなので、とりあえずサイコロを振って出た目に従って進もうとしたら


『3』が出たのでオレンジライナーに乗って松山に、、、


もとい!


徒歩で内陸部に向かいます。





という訳で、小麦の生産量が大陸で1番のアダムズ子爵領『ウィート』にやって来ました。


え?


毎度の事だけど色々な過程をすっ飛ばし過ぎ?


むしろ旅の途中のトラブルとか盗賊に襲われるとかのイベントで、3~4回ぐらい稼げ?


ちょっと意味が分かりませんけれど、私もミシェルさんもそれなり以上に体力があり足腰も強いですから、道中の移動は瞬き3回程度でだいたい何処でも到着します。



さてと


本題の大豆農家さん探しですけれど難航しております。


この辺りは『ウィート』という地名が付いているだけあって、立派な小麦畑は沢山あるのですが、肝心の大豆畑が見当たりません。


大豆という名前では無くて、単純に『豆』と呼んで育てている可能性もあるかもしれません


どちらにしてもはっきりしたのは、ウィートには小麦農家さんしか居ないという事です。



ウィートに来るまでにも、作物を運んでいた行商人に知っている『豆』を教えて貰うも


大豆の特徴と一致する豆の情報は得られませんでした(悲)



「完全に行き詰まりました。ミシェルさん、これからどうしましょうか?」


「宿に部屋をとってゆっくりしましょう。そして日が暮れてから酒場に行けば、昼間に外に出ていた商人や冒険者が居るはずですから、その人達から何か聞けるかもしれません。」


「なるほど、さすがミシェルさんです!では宿に行きましょう。」




ウィートの街の人気ランキング第4位の宿屋さんの前にやって来ました。


何故4位の宿を選んだかと言いますと、上位3つの宿は貴族も使うような高級宿だからです。


決して宿泊費を払えないからではなく、貴族は色々と面倒なんですよ


目が合うとそれだけで「不敬だ!」とか言うお馬鹿な貴族は普通に居ますから


万が一にもそんな事になると、相手のお馬鹿貴族の一族郎党がこの世から消え去ってしまいます。


誰がそんな事をするのかはあえて名前までは言いませんけれど、仮にも元勇者である私が止められない人というと


今も私の隣でニコニコしながら肉串を食べている、この人しか居ませんよね。



ミシェルさんがご機嫌なうちに宿の部屋でゆっくりしましょう。




カランコロンカラン♪



「こんにちはー、2人なんですけど部屋は空いてますか?」


「個室なら1泊銅貨7枚、大部屋なら1泊銅貨3枚だけどどうする?」



宿の扉を開けると受付カウンターに居た女性が対応してくれました。



「では個室を2」「女将さん、2人部屋はありますか?」


「え?ちょっ、ミシェルさん?!」



「悪いけど個室と大部屋しか無くてね、個室を2人で使っても良いけど料金は2部屋分貰うよ?」


「それで構いません。2人分の代金、銀貨1枚と銅貨4枚です。」


「まいどあり♪部屋は2階の1番奥だ。でも壁が薄いから旦那とヤる時は静かに頼むよ」


「はい、他のお客様に迷惑はかけないように致します。」


「汗を流す時は中庭の井戸を使っとくれ、無料だから遠慮は要らないよ♪」



何故かミシェルさんと宿の女将さんが謎の会話で盛り上がっています(汗)



「私達は夫婦では無いんですからミシェルさんもきちんと否定して下さい」


「私は夫婦になっても良いと思っているんですけど、ユウさんは嫌ですか?」



ぐはぁっ!


ミシェルさんの突然の告白に頭がクラクラします。


そりゃあ私がこちらの世界に来た時から、トイレ以外は常にミシェルさんと一緒に居ますし


夜のお世話もして頂いていますから、お互い好意を抱くのにさほど時間はかかりませんでしたけど、、、



「えっと、末長くよろしくお願い致します。」


「はい♪一生大事にしますね。」



何故でしょう、ミシェルさんが凄く男前に見えます。



とにもかくにも、今この瞬間から私とミシェルさんの夫婦としての人生がスタートしたのでした。






つづく。

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