冬堂凍都

冬堂凍都、氷雪系最強のヒーローと言われ、幼い時から騒がれ「次世代を担う少年」


そんなふうに言われて来た。


自分が周りと違うと気が付いたのは、小学校一年の時だった。


その日は学年で、近くの野外活動センターに遠足に来ていた。


そこまで大きな街でも無かった事もあり「学年」と言ったが、1クラスしか無かった。


十数人と全学年の中では比較的多い方だった。


みんなで仲良く歌を歌い、お弁当のおかずを交換する話をしたりと、楽しい遠足だ。


近付いて来たのか、サーサーと葉擦れの音が聞えて来た。


子供たちは早く遊びたい、お弁当にしたい。そんな思いが溢れ出しそうになっていた。


木々はそんな子供たちを、辛抱たまらん、といった様子で木々が葉を鳴らし、それに答える。


「みんな、あともう少しだよ」


「はーい」


野外活動センターの入り口が見えて来た。もう少し。


そして歩いていると、一人の男が出て来た。


出て来た男が子供たちの方に向かって歩いて来ている時、突如爆炎が起きた。


一瞬で辺りは炎に囲まれ、子供たちはパニックに陥った。


すると、最後尾を歩いていた教頭が走って来た。


列の真ん中辺りまで来ると大きな声で叫んだ「みんな、私の所に集まりなさい早く!」


教頭は普段、つまらないギャグを言ったり、昼休みに子供達と遊んでくれたりする良い人だ。


そんな教頭が突然叫んだことに、驚いたが子供たちはすぐに駆け寄った。


全員集まった事を確認した教頭は、空に向かって両手を伸ばすと、ドーム状に半透明な壁が作られた。




・個性「シェルター」中に居る限り、外からの攻撃は効かない。


外から入る事は不可能だが、中から外に出る事は可能。




「水野先生、ドームの外に水を早く!」


「はい!」


担任教師の水野が叫んだ「インベル」するとドームの上に雨が降って来た。


決して強い雨では無いが、確実にドーム内を冷やしている。




・個性「雨インベル」一定範囲に雨を降らせることが出来る




「それで防いだつもりかよ」


爆炎を起こした男が語り掛けて来る。その何処か不気味な雰囲気は常に首元に刃物を突き付けられている様な、血の気が引く恐怖があった。


「ミニムム・ソル」


男が口にした瞬間、濡れていたドーム表面が乾き、ドーム内はサウナと化した。




・個性「小さな(ミニムム)太陽ソル」ビー玉サイズの太陽を出現させ、その高温高熱を放つ




ドーム内は地獄と化した、高温になった事で中は暑くなり、インベルで濡れていた土は乾いたが、それによりドーム内は瞬く間に蒸し風呂となってしまった。


教員はある程度我慢が出来たが、高湿サウナなどには行った事のない子供たちは、パニックになりながら泣きわめいている。


「もうお終いかよ?もっと楽しませろよ」


両手を広げて、自分に酔いしれる男。




「先生、僕ならアイツ倒せるよ」




「なにを言っているの、アナタはまだ子供よ」




「大丈夫、僕が皆を守るよ」






ドームの外に一人の男の子が出て行った。




「おいガキ?お前なんで立ってられんだよ」




「僕がお兄さんより強いからだよ」




「生意気言うじゃねぇか、クソガキがよ!」


男が動こうとした時




「アイスロック」


男の子が小さな声で言った。


すると、男の体が氷塊で固められ身動きが取れなくなった。




「アイス・プリュイ」


男の子が言うと、氷雨が降って来た。それは広大な範囲に降り、男が燃やした木々を次々と鎮火して行った。




「お前何もんだよ」




「僕は冬堂凍都」




その事件により、小学生、教員の多数が病院に運ばれたが、命に別状はなかった。


犯人を一人で捕まえた少年は一躍、メディアの的となり連日カメラを向けられた。


日常生活にも影響が出始め、少年の両親は引っ越す事に決めた。


引っ越す事が嗅ぎつけられると困るので、今まで一緒に過ごして来た友達とは、別れの言葉も交わせず、ただ寂しく、友達を守りたかった。それだけで友達とは離れる事になった。






「それが、冬堂凍都の根暗で人間嫌いになった過去だ」


大鐘が今までの過去を語っていた。




「うっうっ、お前!辛い時は俺に言うだぞ!」


大粒の涙を流しながら冬堂を見つめる赤波




「私は私は!アンタが少しでもポジティブになれる様に協力するよ」


春木も号泣していた。




「よし!分かった!今日は冬堂君の歓迎会も兼ねて豪華に焼き肉だぁ」




「イェーイ!」


歓迎会?赤波と春木の頭の上に?マークが並んだ。




「大鐘さん」


「おい、モジャモジャ」




「二人ともどうした?」




「歓迎会ってなに?×2」




「何って今日から新しく加わるメンバー、冬堂凍都歓迎会だよ」




「なんじゃそりゃ~×2」




「今日からよろしくな」


冬堂は自ら手を出して握手を求めた。




「おう!よろしくな」


赤波と握手をした・・・




「お前さっき殴って気絶させた事、忘れないから」




「お前が攻撃して来たからだろ」




「だとしても気絶させる必要は無かっただろ?」




「俺の個性は相手を倒さないと解除出来ねぇんだから、しょうがないじゃん」




「分かった、今度お前を殴らせろ!」




「嫌だよ!また個性発動するじゃん」




「うっせいよ!殴らせろ!」






貧乏事務所に新たな仲間が加わった。

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