第19話

 変態の宴は夜になってお開きとなった。


 で、まず帰宅したのは詩さんと柚葉さん。


 聞けば、詩さんはイリアさんの彼氏である司さんの幼馴染だそう。

 で、NTRをこよなく愛する変態。


 柚葉さんは司さんの妹。

 で、なんかよくわからんけど変態。

 

 あれこれ説明を受けたがよくわからなかった。

 ていうか聞きたくなかった。


「ふう、パーティーはこれからね」

「なんでまだあなたはいるんですか」


 で、イリアさんはなぜかまだリビングに居座っている。

 ひなさんも。


「あら、私はこれからひなちゃんと卒業後に開業予定の喫茶店について相談するところよ」

「へえ、飲食店なんか興味あるんですか」

「ないわよ。ノーパン喫茶をこの令和に復活させるのが私の夢よ」

「その夢はかなわないからあきらめろ!」

「あら、夢は必ずかなうわ」

「なんかあんたからは聞きたくねえセリフだな」

「まあ私が見たいのは淫夢の方だけど」

「あんたが淫夢そのものだよ」

「それなら作者に次回作はサキュバスのヒロインをかいてもらうようにお願いしようかしら」

「いきなりメタなこと言うな!」


 次元も超越してきやがった。

 ていうかこういうの嫌われるからやめて……。


「とにかく、今日はあまねとの初夜でしょ。気合入れなさい」

「いや、別に付き合ったからってすぐに何かするわけじゃないでしょ」

「え、それじゃ何のために付き合うの?」

「いっぱいあるでしょ!」

「ああ、いっぱい穴はあるけど」

「何の話だよ!」

「え、だからどの穴から開発するかってことでしょ?」

「違うわ!」


 童貞と処女が先にそんなマニアックなこと経験してたまるか!


「固いのね。ひなちゃん、帰るわよ」

「あら、帰るの? イリアさん、司先生待たなくていいの?」

「いいわよ、そのうちかえってくるし。ひなちゃんがいたら司、理性失うし」

「私はその方が都合いいんですけどね。ま、今日は帰りますか」


 ようやく、変態達が重い腰を上げた。

 で、帰った。


「……はあ、終わった」


 ようやく、変態たちの宴が終焉。

 俺はその場に腰をおろしてへたりこんだ。


「そうちゃん、大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも……これ、今日だけだよね?」

「まあ、みんな忙しいだろうし。でも、私たち付き合ったんだよね?」

「……あ」

「ね、ね、付き合ったならいっぱいいろんなことできるよね?」

「い、いやそれは」

「できるよね?」

「……」


 そういや、勢いに負けてあまねと付き合ったんだった。

 でも、今更さっきのはなかったことに、なんて失礼な話もできないし。


 どうしよう……。


「そうちゃんは責めるのがいい? 守るのがいい?」

「ん、んと……サッカーの話、かな?」

「足でするのがいいの?」

「い、いやそうじゃなくてだな」

「えへへ、私ね、イリアお姉ちゃんからとっておきの技をいくつか教えてもらったんだあ。早く試したいなあ」

「そ、そんなのまだ早いって」

「えー、今日は朝までそうちゃんとイチャイチャできるのかなって思ってたのに。ね、道具取ってきていい?」

「……だめだ」

「むう」


 俺は流されてしまった。

 あまねと付き合うことになってしまった。

 いや、しまった、なんていうのはあまねに失礼な話だが、こいつの変態性は一切改善していないどころかイリアさんのせいで日々進化している。


 ただ、俺はまだそのすべてを受け入れる覚悟がない。

 ていうかこれから先、あまねがイリアさんみたいになったら耐えられない。

 早くなんとかしないとだし、今受け入れてやるわけには……。


「ね、そうちゃんは私のこと好きなんだよね?」

「え、そ、それは」

「好きじゃないのに、付き合ってくれたの? なんで?」

「す、好きじゃないなんて言ってない、だろ」

「じゃあ、好きって言って?」

「……好き、だよ」


 そう、俺だって基本的にあまねが好きだ。

 でも、だからこそちゃんとしてほしいし高校生らしい付き合い方をしたいのだ。

 イリアさんで言うところの突きあいではなく付き合いをしたい。


 いや、突きあいもしたいけど普通に、というかもっとうぶな感じでというか。


「そうちゃん、今日は付き合ったんだから一緒にいてくれるよね?」

「……いるだけならな」

「 うん。あのね、今日はそうちゃんと一緒に寝たいな」

「寝るだけ、ならな」


 と、いいながら俺は部屋に向かう。

 するとあまねもこそこそと俺の後ろをついてくる。


 だが、無視を決めてそのまま部屋のベッドへ入ると、そのままあまねも布団へ来る。


「お、おい」

「寝るだけなら、って言ったよね?」

「い、言ったけど」

「寝るだけだもん。一緒に寝よ?」

「あ、ああ」


 というわけで、少し早いが眠ることになった。

 同衾、といっても本当に俺は寝るだけのつもりなのでそのまま目を閉じると、横にいるあまねも静かになった。


 このまま、今日が終わるようだ。

 あまねのやつ、なんだかんだ言ってやっぱり聞き分けはいいやつだ。


 ……いや、彼女、なんだよな?

 彼女だったら、一緒の布団にいたら触ってもいい、のか?


 い、いやダメだ。

 まだあまねのことを完全に信用したわけじゃない。


 今日はおとなしく寝よう。

 で、目が覚めて何もなかったらその時また考えればいい。


 ……でも、なんでこんなにドキドキするんだろう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る