勇者に追放された男、何でもこの世から消滅させるスキル「追放」で古竜も一撃で倒し、王家専属のSランク冒険者に成り上がる!〜今まで魔物もダンジョンの罠も全部俺が消していたって、ちゃんと説明したよね?
第6話 冒険者ギルドで、仲間を追放した三下にケンカを売る
第6話 冒険者ギルドで、仲間を追放した三下にケンカを売る
「……ッ!」
ギルドの入口ホール。
冒険者に再登録するため、俺たち三人はやって来た。
かつてそれぞれS級パーティなどに所属していた俺たちだったが、追放されてかつてのプロフィールは抹消されている。
ふたたび登録しなおさなくては、冒険者として活動ができない。
というわけで、一休みしてからギルドに向かった――のだが。
「こんなところで何やってるんだよ。まだ冒険者やってるのか」
ガラの悪い男が、マキに向かって話しかけてくる。
「……あ……あの……」
マキは急にガタガタと震え始める。
おびえている。言葉も出せない状態だ。
「お前、俺たちから追放されただろうが。何でこんなところに用があるんだよ」
「……え……ごめんなさい……」
なぜか謝ってしまうマキ。
「あれは……」
ザードが俺に耳打ちしてくる。
「マキの元パーティ……みたいだな」
俺は様子をうかがう。
「俺の前をうろつうんじゃねぇよ」
男の声が怒気を孕んだものになった。
「……」
「相変わらずむかつく顔だぜ。お前のせいで、どれだけ俺たちが迷惑したかわかってんの?」
「……す……すみません……」
「俺たちから追放されただけじゃ、自分ってものがわかってないみたいだなぁ!?」
「……すみませ……」
「こっちは、お前がいなくなって、他の魔法使いを探したり、ダンジョン攻略ミスったり、面倒ばっかりなんだよ」
「なんだか、様子がおかしいですね」
ザードが呟く。
全くだ。俺は頷く。
「ウゼェな! 何とかしゃべったらどうだ、ああん?」
ガン!
男が床を強く蹴り上げる。
「ヒッ!」
マキがすくみ上がる。
「俺たちから追放されただけじゃ、わからねえのか?」
ガン!
「ヒッ……す、すみません……」
マキの目から、涙がこぼれ始める。
「こっちはいらついてるんだ。両足へし折って、二度と出歩けないようにしてやろうか!」
「そこまでにしないか」
「あん?」
たまらず声をかけた俺に、男が向き直る。
「彼女は、今は僕の仲間なんだ。ひどいことをしないでくれ」
「へ……へえ……」
男は、今度は俺を、ねめつけるように見始めた。
「あんた、冒険者ランクは?」
「まだない。今日、登録に来たんだ」
「そちらのお嬢さんは?」
「私も、未登録ですね」
「へえ……ド素人じゃねえか」
こちらが格下だと知った男は、急に態度を変えた。
「俺は魔法戦士ノーキン。冒険者ランクAのチーム『ロンリーウルフ』のリーダーだ」
「……」
俺たちは黙っている。
「このギルドでも、名前が知れ渡っている。まあ、ちょっとした有名人だな。
お前達には、まあ、足下にも及ばない存在なのさ」
「……」
「ああ、お前達は名乗らなくていい。これから会うこともないだろうからな。
一言だけ忠告しておくと、あのマキって女はやめといたほうがいいぜ」
「……」
「知人の頼みでチームに入れたんだが、まあ、使えない使えない。
魔法もロクに使わないし、いつもめんどくさいし……。
俺がリーダーになったんで、早速追放したんだ」
「……」
「まあ、あんたらみたいなのにはお似合いかも知れないけどな。
あんたらも冒険者みたいな、実力のいる仕事は辞めて、別の仕事さがしたほうが……」
「ご忠告痛み入りますわ。でも、マキは私たちの大事な仲間です。
あなたがたのロクでもない冒険者チームから逃げられて、本当にラッキーでした」
静かに言うザード。
一同が凍りついた。
「……」
「先ほどのあなたの話を伺っていると、あなたがたがマキを正しく仲間として遇していなかったように思えます」
「……」
「そもそもチーム名が『ロンリーウルフ』ってダサすぎますよね。何でチームなのにロンリーなんですか」
「……」
「察するところ、脳筋の体育系が宿便みたいな脳味噌で考えたものでしょう」
「……」
「勝手にAランクでもなんでも取って構わないですから、私たちの仕事の品格を下げるのは止めてもらえませんか」
「……」
「あげく元チームメイトにパワハラですか。
宿便並みなのは脳味噌だけじゃなくて、メンタルも同じですね」
「こ……この……」
稀代の白魔法使いで、歴代最年少のアークプリーストであるザードは、正義の心も強い。
それでまあ、たまにちょっと言いすぎてしまうこともある。
「リーダーのディーンは、ランクこそありませんが、あなたよりずっと素敵でずっとやさしくて、ずっと誠実な人間です。
貴方なんて、ちょいちょいのちょいでぶっとばされます」
「ちょ、ちょっと!」
おい。
なんで俺の話になってるんだ。
「貴方の宿便並の脳味噌も、ディーンの爪の垢を煎じて飲めば少しは浄化されるはずです。いやいっそ、爪の垢を脳味噌にしてもらえば、貴方もちっとはましな人生を送れると思います」
「こ、このアマ……」
憤怒の形相を見せるノーキン。
「と、とりあえず今日は、冒険者登録だけを済まそう!」
今にも飛びかかろうとするノーキンが、周囲に押さえつけられているうちに、俺たちは登録カウンターに急ぐ。
さっさと登録して、今日は退散だ。
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