「舟の国」

 その国は広い広い海の上にありました。

 今では大きなその国も最初は、小さな船から始まったといいます。小さな船をいくつも繋げて、流れてきた木などを加工して、時には島に降りて木々を集めたりしていたといいます。

やがて、船は集まり島のようになり、やがては大きな国になりました。

 最初は、他の船や、島や国に、木材や食料のお願いに行っていた船の国の人たちは、やがては自分達の国で作った木材や海で釣ったり、栽培した食料を売るまでになりました。


「俺たちは何でもできるんだ」


 船の国の人々は得意気です。


「俺たちの国は素晴らしい。他の国も俺たちの行動を真似すべきだ」


 船の国の人々は、いかに自分達が優れているか、陸の人々がいかに愚かであるかを言って回りました。

 しかし、周りの島や国の人々はなかなか話を聞いてくれません。


「俺たちの話を聞いてくれないのなら、無理矢理聞かせるまでだ」


 船の国の人々は戦争を始めました。

 初めは小さな船を襲いました。昔は、小さな船から始まったのに…

次に周辺の島を襲いました。昔は周りの島に助けてもらったのに…

 最後に周りの国を襲い始めました。今でも木材や食料を買ってくれていたのに…

 あと少しで、すべてを手に入れようとしたその時。

 大嵐がやって来ました。

 いかに大きかろうと、船の国は海の上です。大きな波に何度もぶつかってやがてはバラバラになってしまいました。


「助けてくれ!」


 船の国の人々は助けを求めましたが、誰も聞いてはくれませんでした。



「ロンよりショウコ」


ロン「昔、この海には大陸よりも大きい船があったんだ」


ショウコ「大陸よりも大きい船ですか」


ロン「最近、この世界では旧世界伝説が広がっているんだ」


ショウコ「旧世界伝説?」


ロン「かつてこの世界には、人が作った大陸があった」


ショウコ「さっき言ってた大陸よりも大きな船の話ですか」


ロン「そうさ、自分たちの力をおごった人間はやがて神の怒りに触れ一夜にして滅ぼされてしまったと言われているよ」


ショウコ「いろいろな神話に出てくる神様って…本当に短気ですよね」

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