第4話 こいつ、やっぱりチートだ!

 「って、やっぱ家じゃん!」


 薄々気づいていたけど! 

 家を通り過ぎてこっからどこか行くと思うじゃん!


 つまり朝の散歩を終えて俺は帰って来ただけ、ということになる。

 まあ良いがなかったわけではないけど。


≪顔がニヤニヤしてますよ≫


 う、うるさいっ。

 と思いつつも、一応キリッと表情を切り替えた上で家に入る。


「あらおかえり。早かったのね、散歩とやらは」


「う、うん……まあね」


 全く敵意は感じられない。

 けどやっぱり、あれを受けてすぐに元通りとはいかないよな、俺の方が。


≪普通に接すれば良いでしょう≫


 それが出来たら苦労しねーっつうの。

 

 そんな会話をノーズと交わしながら、向かう先は自室。

 それで、ここで何すんの?


≪動画を見ましょう。とにかくなんでも≫


「はあ?」


 急に何を言ってるんだこいつは。

 やっぱりエセか?


≪違います。私は人の動きを見れば、その者がどういった脳波で体を動かしているか理解できます。つまり、身体能力さえあればそのまま動きをコピー出来ます≫


「ガチ!?」


≪ガチです≫


「どんなものでも?」


≪どんなものでもです≫ 


 うっそだろ、おい!

 そんなのありかよ!?

 ごめん、やっぱ本物だ。


 ノーズに対する評価は手の平を返しすぎて、もうねじ切れそうだ。


≪さあさあ、早速≫


「おう!」


 そうとなれば動画だ!

 よーし見るぞ見るぞー!





「ふあ~あ」


 さすがに疲れた。

 横目で時計を確認する。十二時か。

 そりゃあ三時間もベットに寝転がって動画ばっか見てればなあ。


 結局見た動画は、格闘家の試合から世界的ダンサーの動画、あとはカンフーだったり色々なスポーツ選手の動画などなど。


≪もうインプットはよろしいのですか?≫


「もういいよ。ゲーム実況でも見よ」


 自分の為とはいえ、さほど興味もない動画を延々と見ても面白くはないものだ。


 俺は動画を漁る中で、ちょくちょく“次のおすすめ”に出てきていた動画を見る。

 今絶賛大人気のFPS(一人称の銃撃ゲーム)の実況だ。


「うまいなあ、やっぱり」


 まだ登録者はそれほどいながいが、この人は将来プロゲーマーになる人だ。

 前世でVTuberとコラボしていて、何度もプレイを見ていたから知っている。

 この時からこんなに上手だったんだ。


 まだ出たばかりのゲームで、前世の俺よりも上手い。

 やっぱ才能かなあ。


≪これぐらいの動き、余裕で出来ますが≫


「え!?」


 ノーズから発せられたのは衝撃の宣言。


「本気で言ってる?」


≪はい。ゲーム内の動きから、この者が実際に行っているキーボード・マウスの動きを算出。身体能力が大きく関わる事がないので、スポーツよりも幾分いくぶんか楽かと≫

 

 なにいいいい!

 この時点でこいつ、いやこのお方の評価は最大を限界突破した。


≪ふふん、そうでしょう≫


「てかさ、そんなに頭良いんだったら俺の代わりに勉強覚えてよ」


 ふと思ったことをそのまま口にする。

 切実な願いだった。

 まあそんなの、出来るわけが……


≪良いですよ≫


 イエーーース!!


 待ってました。それだよ、それ!

 もうやっと空気というか、お約束が読めるようになったね!

 育て親としては大満足だよ!


≪なんか不満です≫


 冗談じゃ~ん。


「よし」


 そうと分かればやるべきことはたくさんあるぞ!

 片っ端からやりたいこと、叶えたいことをノーズに記憶させて、全て身に付ける!


「龍虎~、昼ご飯よ~」


「はーい。今行くよー」


 昼飯の後から、まずはやりたいことを書き並べよう!


≪良い返事じゃないですか≫


「ん? 何か言った?」


 ノーズが喋ったような気がしたが、邪魔ジャミングされたような音声でうまく聞こえなかった。


≪いいえ、何も≫


「そっか」


 俺は鼻歌を歌いながらリビングへと降りていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る