第13話 別々の道

私達の関係は相変わらずで、そして澪二が、転勤から戻ってきた。




「ただいま」

「おかえり」

「沙耶華…見ない間、綺麗になったんじゃないか?」

「えっ?や、やだなー…帰って早々…」



キスをする澪二。




乾いたようなキス


新鮮さなんて・・・なかった






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「悠飛…あのね…赤ちゃん出来たみたい…」

「えっ…!?」

「二人の子供だよーー」



「………………」



「やっと、コウノトリが運んできてくれたみたい」

「…そう…なんだ…」


「悠飛…嬉しくない?だって、要約、子供が授かったんだよ」



「あ、いや…突然の事だったから…」


「あ、それもそうだよね?だって、パパになるなんて実感すぐに湧くわけないか」


「…そうだね…」




《子供?》

《本当に俺の子供?》





俺は疑った。


俺は出来ないようにしてきた。


授かるなんてあるのだろうか?


何かしらの理由がない限りは


授かるはずがないと俺は確信していた





✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「沙耶華…」



背後から抱きしめる澪二。




「1年ぶりだな?」

「…そ、そうだね…」



澪二は、私に体を求める行動や言動をしてくる。





悠飛……私……




拒むわけにはいかず、私は仕方なく身を委ねる。






悠飛じゃなきゃ嫌だよ……



私達は別々の道を歩み始めるのでしょうか?








それから私達は会う事が徐々に減り始めた。





そして・・・



全然会う事もなくなってしまい


逢いたくて 仕方がなくて


毎日のように




【悠飛に…逢いたい…】




送れないメールを


一切 届かないメールを




ただ・・・ただ・・・


打つ事しか


出来なかった・・・






そんなある日の事―――――




「それじゃ、マスター…帰ります」と、私。


「うん、気を付けて」と、マスター。





そして―――――




「こんばんは」




ドキン


振り返る視線の先には悠飛君の姿。





「…悠飛君…」


「…沙耶華…さん…」




私は慌てて店を出る。





「待って!」




グイッ


私の腕を掴む。



ドキッ

胸が大きく跳ねる。



バッと掴まれた腕を振りほどく。




「…さようなら…」


「沙耶華さんっ!」




後を追われ再び腕を掴まれた。




「待てよっ!」



ドキン



「さようなら…って……どういう意味……?」

「そのまま…だよ…」

「…えっ…?」



掴まれた腕からスルリと離れる。




「……私達は…別々の道を歩み始めてる…」

「…沙耶華…さん…」


「元々、別だったけど、結果不倫関係だし、旦那が戻って来たんじゃ、前みたいに会えない…それが……現実」



「………………」



「それじゃ」




グイッと引き止め背後から抱きしめられた。


ドキン…




「……分かった…それが…沙耶華の望みなら…最初で最後の関係で…俺達…終わりにしよう……」




ズキン…



私は涙がこぼれそうになった。




「………………」



私は首を左右に振る。




「…沙耶華…」



私は振り返ると、顔を悠飛の胸に埋めた。



「…ごめん…」




そう言うと離れ始める。




グイッと引き止められキスされた。


唇が離れ、すぐに掴まれた腕を離さず歩き始める。





「ちょ、ちょっと…!悠飛っ!離してっ!」


「離さないっ!」


「駄目だよっ!」


「騒がないで!黙ってついてきてほしい!」



「…………………」



「…そんなの…目に見えてるでしょう…?悠飛は……」




「………………」




ホテル街に足は向かっている。




「悠飛っ!」


「本当に最後ならっ!最後くらい幸せだったって…別れさせてくれよ…!…沙耶華…」




悠飛も辛く悲しい表情を見せた。




「…俺達…本当に…終わりかもしれない…から…」



「……悠飛……」




私達はホテルに入る。



キスをし、深いキスを繰り返す。


一先ずシャワーを浴びる私達。


私達は、最初で最後愛し合いながら、悠飛から奥さんの事を聞いた。




「妊娠?」

「そう。だから…本当に最後だと思う」

「…そう…幸せになってね」

「…なんで…?…どうして…平気なの…?」

「元々、それが本当で現実でしょう?だって…私達は…」




泣きそうになった。



「沙耶華にとって…本当に…それが望んでいた事…?」

「当たり前でしょう?」


「…俺は…沙耶華との未来描いてた…いけない恋だって分かってたけど…俺にとって…これからも同じ道…歩めるって…」



「…悠飛…」



「本当は、毎日、毎日、スッゲー会いたくて仕方なかったのに……メールは送れない…そんな事、分かってんのに…届かないはずのメール、いつも打って自分の気を紛らわせてた……本当…バカ…」




《私と一緒…》




私は悠飛の両頬を優しく包み込むように触れる。




「…私だって…辛くて仕方なかったよ…でも…私達は……それなのに…最初で最後とか…忘れられなくなるような事…しないでよ…」




私は我慢の限界で涙が溢れ、悠飛に抱きつく。




「…あなたに…出逢わなければ良かった…そうすれば…こんな想いしなくて済んだのに……」




体を離す。



「悠飛の事…本気で心から愛してた…」


「…沙耶華…」




私達はキスをし、深いキスを何度も何度も角度を変え繰り返す。





ドキン…

耳元で囁かれた。



「…えっ…?…悠…」



キスで唇を塞ぐ。




お互いブレーキをかけず


アクセルを踏む



最初で最後




もうお互い


我慢の限界だったのかもしれない




でも・・・




お互いの想いは


いけない恋だとしても


1つになっている瞬間だった……




でも後悔はしていない



彼との時間は本当に幸せだったのだから――――




そして……




この時はまだ気付いてなかった……




もう1つの生命と


本当の真実が


私達の中で


待ち受けていたなんて――――



























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