第11話 それでもいいから
次の日――――
「お疲れ様」と、悠飛君。
「お疲れ」
「マスター、チューハイ。何でも良いので下さい」
「はい」
「悠飛君、大丈夫なの?」
「何が?」
「昨日、泣きつかれたんでしょう?真っ直ぐ帰った方が良くない?」
「一杯だけ飲んだら帰るよ」
「いや…真っ直ぐ帰った方が良いと思う」
「沙耶華さん…そんなに追い返さなくても」
「帰したくなるよ!私だったら…真っ直ぐ帰って来てほしいし!」
「そう?」
「そうです!」
そして、悠飛君は、一杯飲んだら帰って行った。
「沙耶華ちゃん。本当はまだ一緒にいたかったんじゃないかい?」
「…それは…だけど、悠飛君の場所は私の隣じゃなくて、奥さんの所でしょう?」
「まーね」
俺は店を出て帰っている途中。
「あれ…?…夕佳…?」
偶然に見掛ける、夕佳の姿。
隣には男の人を連れて歩いていた。
「…仕事…仲間…かな?だけど…」
そして――――
「おかえり。夕佳。遅かったね?」
「あ、ただいま。悠飛、早かったね?帰ってたんだ」
「うん」
「街で偶然、友達と会って、飲みに行ったの。ごめん」
《友達…男の?》
疑問を抱くも、何も聞かずにいた。
「いいよ」
「すぐ、ご飯の支度するね」
「あ、大丈夫。済ませたから」
「そう?」
「うん」
次の日――――――
「えっ!?何かの間違いでしょう?」
私は悠飛君から、奥さんの話を聞いた。
「だと良いんだけど…」
「そっか…じゃあ、何かあったら飛んで来てあげるね」
「旦那さんがいても?」
「それは…痛い所つくなー…悠飛君」
「嘘」
ポンと頭をした。
ドキン
「大丈夫。メールで我慢する」
「そう?…あっ!帰らなきゃ」
「えっ!?帰るの!?」
「明日までに仕上げないといけない書類があるの。じゃあ」
私は帰る事にした。
「俺も帰ろうかなー?でも家に帰りたくないしなー。やっぱり帰ります。ごちそうさまでした」
「はい」
そして――――――
「沙耶華さん!」
呼び止められた。
「悠飛君?どうしたの?私、何か忘れ物でもした?」
「忘れ物?…そうですね…」
グイッと引き寄せ、オデコにキスをした。
ドキーーッ
突然のキスに驚く中、私の体全身が熱くなった。
「悠飛君っ!?」
クスクス笑う悠飛君。
「だ、誰かに見られたりでもしたら、どうするの!?」
グイッと再び引き寄せ――――
ドキッ
耳元で囁く悠飛君の言葉(セリフ)に、赤面する私。
『沙耶華となら別に気にしない』
そう言われた。
「な、何言って…」
「逆に沙耶華が、他の男といるのは嫌かも」
「ゆ、悠飛君…それは…」
「そんな事より、俺にも手伝わせて下さい」
「えっ?」
「明日までに仕上げなきゃいけない書類あるんでしょう?まあ、俺が、もう少し一緒にいたいのもあるけど…同じ職場で働いていたんだから、俺にも何か出来る事あると思います」
「悠飛君…ありがとう。でも…奥さんは大丈夫なの?」
「昨日、あんな所を目撃して、嘘つかれているなら尚更、帰りたくありませんよ。後で、連絡します」
「そうか…分かった。じゃあ、海山悠飛君、手伝って頂けますか?特別手当ては発生しないけど」
「特別手当てはいりません。その変わり何かご褒美下さい♪」
「ご褒美?考えとく」
「ヤッタ!」
ドキン
無邪気な笑顔に胸が大きく跳ねる。
普段は同級生(タメ)口交じりで
話をしてくれるあなた
急に敬語になると
上司と部下の関係に
なれてしまう………
私は、仕事の手順を説明し悠飛君は手伝ってくれた。
予定より早く終わり、私はコーヒーを作ると私達は、まったりしている。
「ありがとう。お陰で助かった」
「いいえ。お力になれて良かったです」
「あっ!奥さんに連絡は?」
「大丈夫です。仕事で帰れそうにないから、朝になるかもって連絡はしておきました」
「そっか…」
「女の人の所にいるのに初めての嘘」
「…悠飛…君」
「この前の状況を見て、あれは演技だったのかな?って……疑いたくなります」
抱きしめたい
・・・でも・・・
ブレーキをかける
自分がいる
「今日は…泊まってく?」
「えっ?」
「あ、いや…ほら、帰る気ないなら。それはもちろん帰った方が良いんだろうけど……家は旦那は出張中だから大丈夫だし…」
本来なら、奥さんも出張中だけど、既に出張先からは戻ってきている。
同じ出張先じゃなかったとは言い切れないけど、多分、全く関係なかったんじゃないかと……
「まあ、ゆっくり考えて。私、シャワー浴びるね。あっ!のぞかないでね」
「のぞきませんよ。人妻ですよ。すみません、トイレ借ります」
「うん」
私はシャワーを浴びる。
そして―――――
「悠飛君は良い?」
「えっ?」
「洋服替え出すよ」
「じゃあ…お言葉に甘えて」
「うん。分かった。じゃあ、用意しておく」
「はい。お願いします」
《カップルになったら…こんな感じなのかな?》
しばらくして戻ってくる悠飛君。
「…沙耶華さん…」
「何?」
「この人が…旦那さん?」
結婚式の写真立てを見ながら尋ねた。
「あ、うん。そうだよ」
「今…出張中…なんですよね?」
「うん。3ヶ月くらい経つけど」
「そうか…」
「どうして?」
「いや…夕佳の連れていた男の人に似てるから…」
「えっ?やだなーー、冗談。出張中なのに、悠飛君の奥さんといたなんて…」
「…ごめん…余りにも似てたから…すみません。違うかもしれないし…」
「………………」
私は、悠飛君の隣に行く。
「…沙耶華さん…すみません…気になりますよね?」
「…もし本当に、旦那が、悠飛君の奥さんと一緒にいたとしたら…お互い様だね。私も旦那も…自分のパートナーじゃない異性といるから」
「…沙耶華さん…」
「私なんて部屋まであげてるし」
グイッと抱きしめる悠飛君。
ドキン
「…俺も…妻に嘘ついてる…最低な夫だよ…」
「そんな…だって仕事は本当に…」
私達は体を離し向き合う。
私は悠飛君の両頬を優しく包み込むように触れる。
「…沙耶華…さん…」
「悠飛君は悪くないよ。仕事、手伝ってくれたからこそ早く終わったんだから」
「…本当なら、すぐ、ここの部屋を去るべきでしょう?」
「それは…」
私は触れていた両頬から離す。
「昨日の事があって帰りたくないのなら、俺はビジネスホテルでも行く。ここにいてはいけない」
「…………………」
「…でも…今日は…」
グイッと引き寄せると、キスをされた。
ドキーーッ
至近距離で見つめ合う私達。
「…悠…」
再びキスをし、首筋に唇が這う。
「ゆ、悠…飛…ま、待って…私達は…」
「…ブレーキ…かけれない…」
ドキン
「何言って…バレたら…」
「バレないようにすればいい。秘密にしてれば良い。何の為に連絡先交換したの?」
「…悠飛…」
「…沙耶華にとって…少しは特別だって…そう思っていたけど…違う?」
「…それは…」
自分の想いも伝えたかった
・・・だけど・・・
言えなかった
溢れる想いに
私は・・・
ブレーキをかけた・・・
「俺は、沙耶華の事、少しは特別だって言える…」
「…悠飛…」
再びキスをし、何度も何度も角度を変えキスを交わす。
フワリと抱きかかえられ、ベッドにおろすと私を股がり私の両手を押さえた。
ドキン…
「沙耶華…俺の…一人の女になって…」
ドキン…
キスをされ深いキスをされる
「………………」
すると、私から、一旦、おりると、横になり、片肘をつき、私を見つめる仕草をする。
「沙耶華…1つだけ…確認したい」
「何?」
「妊娠しない理由」
「えっ!?」
「旦那さんと夫婦関係あるんだよね?」
「…うん」
「旦那さんから、子供ほしいって言われてて妊娠しない理由は?不妊症?」
私は首を左右にふった。
「…旦那は…結婚前から…子供ほしいって言っていたから…私は…それを避けたかった…だから…病院から…処方してもらった薬を飲んで出来ないようにしてきたの…」
「……旦那さん知ってるの?」
私は首を左右ふる。
「…俺の奥さんと沙耶華の旦那さん同じ考えなんだ…だったら…一層の事、二人がくっついた方が良いね…」
「えっ…?」
「俺の奥さんも妊娠しないのは…前に話した通り。俺出来ないようにしてるから。最低な夫だよ」
「…悠飛…」
「良い言葉並べて、納得させてるから」
私の上に股がり、両手を押さえた。
ドキン……
「砂耶香となら、同じ人生歩めそう…この関係に終止符(ピリオド)は打たせない」
ドキン
「…悠…」
キスで唇を塞ぎ、そのまま深いキスをされる。
唇は徐々に下へ下へとおりていく。
私は吐息が洩れる。
「…悠飛…待って…やっぱり…」
「沙耶華…こんな状態で、今、辞めたら…」
「…でも…」
「ここまできて、今更、中断しろって?…もしかして…不安?」
私は頷く。
「それは、俺も一緒だよ。でも…沙耶華となら…」
悠飛は、私の頭を撫でながら至近距離で
優しい眼差しで見つめる。
ドキン…
私の胸がザワつく。
「それに、お互い同じ立場だからこそ、一緒に乗り越えられたらと思う…」
なんとかなる?
ねえ悠飛・・・
このままこの関係を続けたら
終止符(ピリオド)を
打つことにならない?
不安で仕方がない
悠飛……私…
本当は凄く怖いんだよ……
スッと片頬に触れる悠飛。
「そんな顔するなよ。沙耶華…」
ドキン…
「沙耶華の気持ち、分かっているつもりだから。俺は裏切ったりしない。沙耶華は、普通に過ごしていれば良いから……」
浮気相手かもしれない
ただの身体の関係だけに
なるかもしれない
――――でも―――――
私にとって悠飛は
一人の男だった
あなたを
心から
愛しています・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます