第8話 悠飛の想い
あの日の彼の言葉が、脳裏に過り、何度もこだまする。
『今日は、ありがとうございました。付き合わせてすみません…それから…』
「……………」
「沙耶華、転勤が決まったんだ」
「えっ?転勤!?また、急だね」
「ああ。一回は断ったんだけど、どうしてもと頼まれて…」
「そう…」
「一人で大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
そして、澪ニは、一年間、転勤に行くのだった。
数日後――――
「沙耶華さん」
「うわっ!ビックリした!」
背後から声をかけられ驚く私。
振り返る視線の先には
「悠飛君」
「今から、いつもの所に行くんですか?」
「うん」
「じゃあ、俺も一緒に」
「悠飛君と一緒?誤解される!」
「そういう沙耶華さんもでしょう?」
「分かってて声かけてるんでしょう?まあ、私は、只今、旦那が1年の転勤で出張中だから、しばらく独身生活気分だけど」
「そうなんですか?…そう言えば…俺の奥さんも、そう言ってたなー」
「へえー、そうなんだ」
「もしかして二人は同じ所だったりしてー」
「それはないでしょう?まず、職場が違うし」
「同じ系列の企業さんの集まりみたいで、他社の企業さんとのコラボ企画で選別されてるから、ないとは言い切れないですよ」
「…そうなんだ…詳しく聞かなかった…でも、まさか、有り得ないよ」
「そう言い切れますか?断言出来るんですか?」
「悠飛君…結構言うね?」
「勿論!」
私達は飲みに行く。
「今日は二人で、おそろいかい?」
「偶然、そこでバッタリ会っちゃって」
「そうか」
「マスター、いつものね」
「相変わらず。俺は、ウーロンハイ下さい」
私達は、カウンターに腰をおろし、肩を並べて飲む。
色々と話をしつつ飲んでいた。
「マスター、お勘定お願い」
「はい」
「えっ!?もう帰っちゃうんですか?」
「28の私の肌には悪いし。じゃあねーー。悠飛君、程々にね」
「はーい」
私は先に帰り別れた。
「マスター」
「ん?」
「沙耶華さんって美人ですよね」
「ああ、そうだね。ここに来始めた頃は、色々なお客さんに声かけられてたよ」
「…それだけ…目立っているって事ですよね…」
「気になるのかい?」
「ならないと言うのは嘘になります」
「そうか」
「21歳で早く結婚して、今1年過ぎたけど…最近、すれ違いばっかりで…奥さんのいない方が気楽だって…今…家に帰るのが億劫で…」
「まだ、ラブラブな時期なんじゃ」
「…本来なら…そうなんですけど、奥さん2つ上で子供ほしいの日々。正直、参っちゃって…沙耶華さんといる方が気楽なんて…そう思う最低な男です」
「悠飛君…結婚すれば色々ある。子供が出来たら更に悩みも増える。みんな、それぞれ悩みはあるんだから」
「…でも…このまま…今の生活を続けても楽しいって思えるのかなー…すみません…帰ります」
「ああ。また、おいで」
「はい」
そして店を後に帰って行った。
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