第67話 誕生日プレゼント
レオールの成長は早い
それは月を追うごとに身に染みて来る
出会った頃、肉体年齢15歳、精神年齢6歳だったレオールは今月、肉体年齢17歳、精神年齢9歳の誕生日を迎える
私なんてあと2か月でようやく1歳年を取るというのにこの差はなんなんだろう?
種族による差とは言えここまで急激に成長されると自分の中の感覚が置いていかれるばかりで困ってしまう
ちなみにレオールの精神年齢は一般的な子より2~3歳くらい上だとダリ達が言っていた
ただ、幼いうちに身の上に起きた出来事のせいで年よりも脆い部分も見受けられるとも…
そんな複雑な精神状態を抱えたレオールも、一般的にはお年頃といわれる年齢にさしかかってるんだよね
最近では引っ付いてくることも減った
それがものすごく寂しい
高いクオリティのモフモフが以前ほど堪能できないのが悲しい
その分アネラをモフる頻度が増えたけど…
「レオール」
「なにー?」
「誕生日のプレゼント、何がいい?」
恒例の質問にいつもなら即答してくるレオールが少し沈黙した
「レオール?」
「…モノじゃなくてもいい?」
絞り出すように紡がれたのはそんな質問
モノじゃないプレゼントって一体?
即座には思い浮かばなくて戸惑った
「一応、聞いてみようか?」
聞いてから判断するしかないよね?
「…ザック達みたいな自分の部屋、欲しい」
「部屋…」
そういえばザックとクマリは自分の部屋があったんだっけ
シビルとエリナは2人部屋だけど自分たちの部屋
バリスとメイアは部屋というほどではないけれど洞窟内で自分専用のスペースのような場所がある
レオールに関しては保護した時の状態が酷かったからそのままになってたことを思い出す
「よし、じゃぁ作っちゃおう」
「…いいの?」
その返事が意外だったとでもいう様にキョトンとする
「もちろんよ。レオールがここに来た時に部屋を用意しようとしたけどあまりにも弱ってたからね。そのまま忘れてしまってただけだもの」
年頃の男の子
秘密にしたいことも出て来るだろう
そう思いながら答えると満面の笑みが返ってきた
しかも半獣のモフモフタイムが付いてきた
この甘えタイムは減ったとは言え継続中だから貴重だわ
「レオールどんな部屋がいい?」
「どんな?」
あーとりあえず“部屋”が欲しかった感じか…
「ん~部屋に置くモノで欲しいものとかある?」
「…フカフカのベッド。あと素材を置いとく場所…」
「うんうん。それは必要ね。他には?」
「ん…あ、姉ちゃんが買ってくれた服をしまう場所と大きなクッション!」
レオールはよく床に寝転がる
その時にその体を受け止めるサイズのクッションを気に入っている
「じゃぁカーペットもあった方がいいわね」
私はレオールの希望を図に描いていく
場所は私の寝室の隣でベランダからはアネラの家が見える
レオールの事だからベランダからそのまま出ちゃうかな?
だとしたら…
「こんな感じかな?」
平面図に家具なんかを書き込んで見せるとレオールは耳と尻尾を発現させた
「あ…」
「気に入ったみたいね?」
「ん」
「じゃぁ創っちゃおうか」
呆然とするレオールを促して2階の部屋の扉を開けた
イメージするのは今描いた間取りを立体化した部屋
『創造』
しっかりとイメージしたら後は念じるのみ
「すごい…」
レオールの言葉に閉じていた目を開くと描いた通りの部屋が広がっていた
「どう?」
「ありがと!姉ちゃん」
飛びついてきたレオールを抱き留める
ピクピクする耳にブンブン揺れる尻尾
うん。ちゃんと気に入ってくれたみたいだね
言葉よりも雄弁に語る耳と尻尾に思わず笑みがこぼれた
この日からレオールは自分の部屋で過ごす時間が増えた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます