第61話 報告
「お姉ちゃんおはよ」
いつものように支度をして下に降りるとレオールが飛びついてくる
「おはようレオール」
しっかり抱きしめて返すと嬉しそうに笑う
うん。ものすごく可愛い
「お姉ちゃんパーシェが来てる」
「パーシェが?」
私は首を傾げながらデッキを見た
そこにはすでに寛いでいるパーシェがいた
「パーシェ、おはよう」
「ああ、おはよう」
「珍しいね?こんな朝から来るなんて」
勇者の事で何か起きたのかしら?
「その通りだ」
何となく思い当たった考えに肯定の意が返された
私が斜向かいのベンチに座るとレオールが横に座った
とりあえず簡単につまめそうなサンドイッチとコーヒーをアイテムボックスから取り出して並べておくことにした
その途端勢いよく食べ始めたレオール
どうやら朝ごはんを待ち構えていたらしい
「勇者3人の最後の一人アキナの特訓が終わった」
「あれ?まだ終わってなかったんだ?」
そっちに驚いた
確かサキとエミは結構前、みんなで町に行くより前に終わってたはず
「魔法の適性が低かったようだな。いや、適性というよりはイメージ力が足りな過ぎたか…」
パーシェはボソボソとつぶやくように続けた
要は想像力が足りないってことかな?
「それだ」
即答されて苦笑する
「これから彼女たちは?」
「これからというかサキとエミは既に行ってるが…それぞれに騎士とパーティーを組んで北東の森の討伐に入ってるな」
「北東の森?魔獣が出るのは闇の森だよね?」
「そうだ。闇の森では中心部になるほど強くなる。その魔獣を騎士では討伐出来ないから召喚されたのが勇者だな」
だったらなんで北東の森なんだろ?
「初っ端から闇の森は無理だ。魔物討伐すらままならないうちに魔獣と向き合うなど死にに行くようなものだからな」
「確かに突然魔獣と戦うなんて無理だろうけど…じゃぁ今闇の森は?ナオトさんもフルジリアを出てかなり経つはずよね?」
「ああ。今はウサギ族と行動しているらしいから当然闇の森は手つかずだ。一体何を考えているのかは分からんな」
「ウサギ族?なんでまた…?」
「そこまでは知らん。俺達は断片的な情報しか拾えないからな」
断片的…
そもそもどうやって情報をひろってるんだろ?
「例えるなら遠くから眺めてる感じだな。動いてる姿は見れても会話までは分からん」
「…なるほど」
無音声の映画を見てる感じに近そう
なぜかチャップリンが頭に浮かんだ
便利なのか不便なのか微妙だわ
「今サキとエミはどのくらいまで進んでるの?」
「まだ300m程度だな」
半月以上かけて300m…魔獣は出ないんだよね?
「大した力ではないってことだな」
パーシェは声を上げて笑う
いや、笑い事ではないような…?
「とはいえ短期間の訓練で騎士に比べれば強いという意味では流石勇者というべきか?」
そんなのであの子たち大丈夫なの?
「力が足りないからって追い出されたりとかは…?」
「ないだろうな」
言い切った?
そのことに首をかしげてしまう
召喚された後は王宮に住まわせてもらってるはず
期待した活躍が出来ないならごく潰しと変わらないものね
「フルジリアのことだ。期待した活躍が出来なかったとしても、騎士の代わりの捨て駒にするには充分だろうからな。実際現状で中堅の騎士程度の力はある」
召喚しといてそれか…本当サイテー
あの3人がこれまでにしてきたことがフルジリアに劣らず酷いことばかりだったから同情する気は全くないけど、フルジリアという国の在り方自体が気に入らない
だからって私がどうこうできるわけじゃないんだけどね
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