第60話 計画(side:ナオト)
翌日、オルガ達と共に広場に出向いた
昼前だというのに既にかなりの人が集まっていた
昨夜と同様、オルガがこれまでの出来事に加えて俺の置かれた立場も説明してくれた
オルガの話は演説並みの饒舌さだった
これには素直に感心する
「我らの中には既に囚われ、そのまま命を奪われた者がいる」
怒りをかみしめながらそう言ったのは狼族の族長だった
「狼族の中で1~2を争う美しい娘だった。番である恋人は瀕死の重傷を負わされ、娘はさらわれた」
「なんと…」
息を呑む音無き音が聞こえる
「その1月後だ。恋人が娘の死をその身で感じたのは…」
絆の強い番ほど相手の感じている喜怒哀楽やその身に受けている事を感じることができるらしい
「最初の内は果てのない恐怖、そしてある時を境に絶望と悲しみ、体が引き裂かれるような痛みを感じたらしい。それがある日これまでにない恐怖と絶望を感じた次の瞬間何も伝わってこなくなった。恋人は娘の死を悟り、その内容だけを記して命を絶った」
あまりの内容にその場が静寂に包まれた
「我らはフルジリアを敵とみなした。あの日から、この国を出て復讐する相談を始めている」
狼族の族長の意思は固そうだ
「お前さん達が助かったのは喜ばしい。これから同様の犠牲者を出さぬよう協力も惜しまない。熊族すべてを敵に回す気はないが、関わった者にはあの娘と同様恐怖と苦痛を与えた上で死を…」
その震える声に周りに居る者が同調していくのが分かる
「熊族の者を鑑定し、人柄のランクがDとEの者を真実を見極める目で見てもらうつもりだ。そのためにまず熊族を抑え込み鑑定する必要がある」
「幸い、このナオト殿が協力をしてくれることになっているが、他に鑑定の出来る者がいれば協力を仰ぎたい」
「我々の中に1人いる。仲間想いの若者故協力は惜しまんだろう」
「私の娘も協力させましょう。一族のためにもなることだ。娘も反対はせんはずだ」
これで3人か
俺は他の族長を見渡す
隠してる感じはない
元々メジャーなスキルじゃないから本当にいないか、持っていても知られていないかのどちらかだろう
「俺達を送り込むのを失敗してる今焦ってることも考えられる。次の被害を出さないためにも慎重に素早くことを運ぶ必要がある。そのためにも熊族の族長に話をしなければな」
「なぁに、単純な男だ。鑑定を拒むならやましいことでもあるのかと言ってやれば、身の潔白を証明するためにも鑑定に応じるだろう」
そこ迄単純なのか?
さすがにそれはないと思うが…
いや、でもこの確信を持って言ってる辺り事実なのか?
結局その場でどんどん計画が組まれていき、気づいてみれば翌日に決行という話でまとまっていた
何だこの早さ?
大まかな担当割り振りも既に完了してるし、計画が狂った際の指示役もその場で任命されていく
そして翌日、鑑定し、ウルハが見た結果、裏切者の仲間は人柄Eランクの中にいた、その近親者ももれなくEランクだったことから当人は亜人を危機にさらしたとして処刑、近親者は幽閉となった
同時に熊族が単純だということも証明されてしまった
俺は亜人を敵に回さないと心に誓った
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