第50話 みんなで町へ

シビルのハンカチが出来上がったタイミングで町に行くことになった

女性陣から話を聞いた男性陣も行きたいということで、レオールも一緒に皆で行くことになった

「アネラはいかないの?」

「そうよ。アネラは町が好きじゃないみたいでね。だから今日はアネラの仲間のところに行くみたいよ」

「そっか。残念だけど嫌なところにわざわざ行く必要はないもんね」

シビルは本当に残念そうに言う

「今度会った時に相手してあげて」

「もちろん!」

即答するシビルにカイナと顔を見合わせた

実はアネラ自身もシビルの事は気に入ってるらしい

心から慕ってくれてるのが分かるらしく一緒にいても楽しいようだ


「町まではどれくらい?」

「ゆっくり歩いて40分くらいかな」

「ふ~ん。そんなに近かったんだ?」

ザックはちょっと驚いた様子だ


「ザックたちも冒険者登録できる?」

「そうね。ザックたちがその気なら誰でも登録できるよ。狩りしてること考えたら登録した方がいいかもしれないね」

「どういうこと?」

「依頼に出てる素材の買取は割高なんだって」

「あの森の素材結構出てる」

「そういうことなら俺らも登録しとくか」

「定期的に誰かが売りにくりゃいいんだろ?」

「俺早く行きたくなってきた。先にいっていい?」

我慢できなくなったのはクマリだ


「あはは。じゃぁ男性陣は冒険者登録するってことね?レオール」

「ん?」

「案内できる?」

「できるよ。登録と売却でいい?」

「ええ。私たちは商会に行ってからギルドに行って市場かな」

「わかった。帰りは一緒?」

「うまく出会えたら一緒に帰るくらいでいいんじゃないかな?見当たらなかったらそれぞれで帰っても問題ないわよね?」

「ええ。私達もそれでいいわ」

ダリが答えるとホークたちも頷いた


「じゃぁ先行く」

「あ、ギルド内ではレオールの事はレオと呼んでくれる?念のため登録名を変えてあるの」

「レオ?何か愛称みたいでいいじゃん。これからずっとそう呼んでいいか?」

「俺は別にいいけど…」

「短くて呼びやすいな。よし行くぞレオ」

シロヤが笑いながら言ったと思ったらいきなり走り出した

「あ、おっちゃんずるいって!」

クマリが真っ先に後を追い、残りの男性陣がその後に続いた


「相変わらず元気よね」

「体力有り余ってるんでしょ」

「ホークは夜もお盛んだものね。そのうち3人目かしら?」

「シロヤだって似たようなものでしょ。どうせできるなら次は男の子が欲しいわ~」

「私も弟欲しい!」

「エリナも!」

「あはは。じゃぁうちは女の子が欲しいわ」

ダリもまんざらではない


「…そういう話ってそんな開けっぴろげにするもの?」

「まぁ…亜人では珍しくないと思うけど」

「ヒューマンは違うのかしら?」

普通のヒューマンと私は違うから何とも言えないんだけど…

「ほら、亜人は執着が凄いって言ったじゃない?」

「うん。前に聞いたね」

「その執着もね、強い種族になればなるほど強くなって、番って関係になるの」

「番?」

「そう番。執着通り越して重すぎる愛って言われることもあるんだけど、番に出会った時から他の人の事は眼中にない状態になるみたいなのよね」

「溺愛って言葉が一番近いのかしら」

「そうね。それも男性にしかわからないらしいんだけど」

カイナもダリも自分が感じたことは無いという


「…ホークやシロヤにとって2人は番ってこと?」

「うちはそこまでじゃないのよ。そこまで強い種族じゃないから。でも狐族は強さで言えば中間くらいかしら?」

「そうね。番まではいかないけど近いものはあるかな。ネモにとってのシーラは番みたいだけど」

「そうなの?」

それはそれで驚きだ

あざらしは強い方に入るのか?それとも海の生物はまた違う何かがあるんだろうか?


「まぁ番まで行かなくても亜人は性別問わず誰かを好きになったら一途よね。離縁とか浮気なんて聞かないし」

「好きになったら一途…」

何となく嫌な予感がした

「だからね、レオールからは逃げられないと思うの」

「!」

出会った頃の言葉を再び言われて顔に熱が集まるのが分かる


「でもレオールはまだ子供で…」

って私も大人と言い切れないけど

「亜人の成長は早いわよ?見かけなんてあと2年もすれば一気に変わるだろうし」

「そうね。クマリもこの1年で一気に変わったもの。レオールは精神的にも歳より大人びてるからミリアに追いつくのは早いんじゃない?」

「必死でクマリとザックの真似してるものねぇ」

楽しそうに言う2人にいたたまれなくなってきた


「まぁ、今は弟として見ててもいいと思うけど、私はミリアもレオールに惹かれていくと思うわよ?」

「その根拠は?」

「どんな意味合いであれ、好ましく思ってる相手から溺愛されて惹かれないわけないじゃない?」

「私とホークだって兄妹みたいに育った仲だしね」

「そうだったの?」

そこに食いついたのはシビルだった


これは…なんとなくよめたかもしれない

カイナを見ると微笑みながら頷いてきた

あれ?でもどっちだろう…肝心のあの2人はどう思ってるのか…?

先が少し楽しみになった

そんな話をしてるうちに町に到着した


「本当に簡単に入れるのね」

「でしょう?」

カードを見せただけですんなり通れたことに呆気にとられるカイナとダリに、閉じた世界で過ごしてるとこうなるのかと妙に納得した

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