第45話 情報交換

「俺達は猟や採取で生活してるが2人はどうしてるんだ?」

「僕、毎朝狩りしてるよ。薬草も採ってる」

「あとは町で買った野菜と、庭で育ててる果物と野菜かしら。時々ネモに肉と魚を交換したりもしてるけど」

「魚を?そいつは羨ましい」

「魚なんて長いこと食べてないわね」

ホークの言葉にダリが大きく頷いた


「レオール、今度一緒に狩りをしようぜ?」

そう言いだしたのはクマリだ

「一緒に?」

「おう。俺達も狩りは朝にしてるからな。大抵父さんとおっちゃん、兄貴と一緒だ」

「男だけ?」

「狩りはこの上の方ですることが多いの。私たちは下に向かって採取ね」

「僕上の方行ったことない。行ってみたい!」

期待を込めた目がこっちを向いた

「ホークたちが構わないなら一緒に行かせてもらいなさい」

「僕も一緒に行ってもいい?」

レオールは身を乗り出して訪ねる

「ああ、構わんぞ。こいつらも年の近い同性の知り合いが出来て嬉しいだろうからな」

「おじちゃんずるい。私たちは女の子のお友達が欲しいわ」

シビルが拗ねたように言う

「女の子、メイアは?」

「メイア?」

レオールの言葉にシビルとエリナは首を傾げた


「海にいるパリスの妹」

「海岸の洞窟に住む一家なんだけど、父親と娘があざらしの亜人で母親と息子はヒューマンなの」

「パリスが7歳でメイアが5歳だよ」

「海の生物は年の取り方がヒューマンよりだったかしら?」

「そう言ってた。ちょっと早いくらいだって」

「じゃぁ今のエリナと同じ頃ってところかしら?」

「お母さん!一緒に遊びたい!」

エリナとシビルが食いついた


「そう言えばあなた達の年は?」

「私が17、クマリが19でザックが21よ。レオールは?」

「僕15だよ」

「あら、エリナが13だからうまいこと2つずつ違うのね」

カイナがおかしそうに笑う


「ミリアもレオールもいつでもここに来てね。私達こっちに他に知り合い居ないから大歓迎よ」

「うちにも来て欲しいわ。そうだ、近いうちにネモ達も一緒に皆で食事はどう?」

「行きたい!」

「俺も行ってみたいな。麓の方に出ることは滅多にないから」

「俺出たことない」

「私も行ってみたいわ」

子供達が大はしゃぎだ


「お姉ちゃん」

「ん?」

「バーベキューしたい」

「そうね。皆で食べるならそれが一番いいかな」

「バーベキュー?」

不思議そうな顔をした皆を代表するかのようにダリが訊ねた

「外でね、適当な大きさに切った食材を焼きながら食べるの」

「ほぅ。なら俺達は肉を大量に持って行くぞ」

「じゃぁネモにはお魚を頼んで、私は野菜を用意しようかしら」

上手く分担できそうだ


「日の希望とかはある?」

「いつでもいいわよ」

「そう?じゃぁネモ達に予定を確認して…レオールに伝えさせるわね。一緒に狩りに連れて行ってくれるなら丁度よさそうだし」

「アネラも一緒?」

「ここまではね。その後はアネラの自由かな?」

「わかった」

「アネラってさっきの従魔…ペガサス、よね?」

「そうなの。とっても美しい女の子でしょう?」

「ねぇ、お母さん、女の子なら私達と一緒に採取しに行く方がいいと思うの!」

シビルが思いついたように言う

「あら、そうね。狩りは男性陣ばかりだものね」

カイネがクスクス笑いながら言う

「ふふ…その辺はアネモに任せるわ。一緒に行くというなら仲良くしてあげて?」

「もちろんよ!」

シビルはアネラが気に入ったらしい


その後、子供達が固まって遊んでる側で大人が話をして過ごす穏やかな時間が流れた

年の近い子ども達

その中に同性のレオールを導いてくれそうなザックがいることに安堵する

「私には亜人の年の取り方がまだよくわかってなくて…だからザックたちの存在は有り難いわ」

「肉体的な年齢と精神的な年齢か」

「ええ」

「まぁそこに見た目年齢も入るから余計か?レオールもあと1年ほどすればお年頃ってやつだな」

「1年?早すぎない?」

「そんなことないわよ。最近シビルがお洒落に目覚めてるし、ザックは少し落ち着いたけどクマリは反抗期真っただ中よ」

「反抗期…そう…」

レオールが反抗期

そう考えるとちょっと悲しい


「ははは、そう深く考える必要はないさ。亜人はそもそも獣に近い感性を持ってる。執着する相手以外にはあっけない物さ」

「執着…」

「そうね。まぁ執着すると言っても家族・友人・恋人くらいでしょうけどね」

「ミリア、ザックなんてどう?あなたは何となく年上の人が側にいた方がいいように思うんだけど」

「ええ?!」

突然のおすすめに思わず声を上げていた


「だめ!お姉ちゃんは僕の!」

どこから聞いていたのがレオールが飛びついてきた

「僕のお嫁さんにするからザックにはあげない!」

「レ、レオール?」

突然のプロポーズに開いた口が塞がらない

どことなく”子供の言うことだし”とは片付けられない何かを感じるのは気のせいかしら?

「安心しろレオール。お前からミリアを取ることは無いよ」

「絶対?」

「ああ、絶対だ」

ザックは苦笑しながら言う


「あらぁこれは…」

「そうね。ミリア、ヒューマンからしたら理解できないかもしれないけど…」

「え?何?」

「あなた逃げられそうにないわね」

「逃げる?」

「…その時になったら分かると思うけど…私はいいと思うわよ?」

「そうだな。俺も楽しみにしてるぞ」

口々に零される言葉に理解が追い付かない

「レオール、相談位ならいつでも乗ってやるからな」

「ありがと!」

何だろう

亜人ならではの何かがあるのだろうか?

この時の私はただ呑気にそう思っていただけだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る