第38話 ジャーキーづくり

「さ、ステータスや魔法の事はまた後にしてジャーキーづくりを始めようか」

庭の一角はジャーキーづくりを始め燻製を作るための場所にしてある

その場所に皆を案内した


「手順としてはまず下味を付ける、それを乾燥させてから焼く。ちなみにここで干してるのは今朝レオールが狩ってきたお肉に下味を付けたものね」

「かなりたくさんあるけど…?」

「頑張った!」

うん。張り切って沢山狩ったね


「とりあえず、ネモが持ってきてくれたレッドトラウトに下味を付けて、それを干してる間にこの肉の方を焼こうと思うの」

「その為に先に干してあるのか?」

「そう。手順は簡単だけどどの工程も時間がかかるからね」


「どうしてあんなに小さくするの?」

「いいところに気付いたわね、メイア。小さくすれば味がしみ込むのも、乾かすのも焼くの、大きいままよりも短い時間で済むのよ」

「じゃぁ、お父さんの持ってきたお魚も小さくするの?」

「そういうこと。とりあえず私たちが切って、子供達が下味を付けていくのでいいかな?」

「そうね。パリスはお父さんが切ったものを、メイアは私が切ったものをお願いね」

「わかった」

「僕はお姉ちゃんの?」

「そうなるね。いけそう?」

「うん」

レオールも頷いたので私たちは早速切り始めた


単調な作業だけど大勢だと楽しくなるから不思議だ

しかも途中からは勝負が始まった

体力的なものもあって勝ったのはネモだった

それでも勝っても負けても皆が笑顔なのが気持ちいい


「次はこれをフライパンを使ってじっくり時間をかけて燻製していくよ」

「くんせいって何?」

「燻煙材…さっきメイアたちが作ってくれたチップを乾かしたものの燻し煙をあてる調理法よ。燻製にすると長い時間保存できるから便利なの」

燻製チップのつくり方は焼いてる間にレオールがパリスとメイアに教えていた

乾燥させてからしか使えないから枝のサンプルと一緒に持って帰ってもらう予定だ

亜人は嗅覚も優れてるから、パリスが適当に集めてもメイアがきちんと仕分けしてくれるだろう


途中、子供達が退屈しかけた頃にアネラが出てきて相手をしてくれたので助かった

3人と草原を走り回ってアネラも楽しそうだった

「やっぱり子供たちは元気だわ」

「本当に。でもあの子たちレオールと一緒に過ごすのがかなり楽しかったみたいで、昨日からずっとレオールの話ばかりよ?」

「そうなの?」

「ええ。私たちはグズリスでもソトニクスでもうく存在だから仕方ないんだけどね」

シーラは少し申し訳なさそうに言う


亜人とヒューマンの婚姻はかなり珍しいという

「グズリスではそこまで差別されるわけではないけど、子供は心無い言葉をそうと知らずに使うことも多いでしょう?だからあまり子供たちをつれていきたくないの」

「そっか…」

そればっかりはどうしようもないのかもしれない


「だから私達もミリアと知り合えたのは凄くうれしいわ」

「私もよ」

何といってもこの世界最初の友人だ

いつか元の世界の事も話せるときが来たらいいなと思う


思ったよりも焼くのに時間がかかったから、別に火を熾して皆でバーベキューを堪能した

勿論使った食材はこっちの野菜とレオールの狩ってきた肉だ

「大勢の食事は楽しいね」

「新しいこと知れるのも新鮮だもんな」

メイアもパリスも満面の笑みで言う

ずっと同じ生活を続けていれば、少しの変化でも大きな違いがあるのかもしれない

それが新しい友達となれば格別だろう

これからお互いに教え合っていけたらと思わずにいられない


「こんなに貰って行っていいの?」

帰り際に魚と肉のジャーキーをどっさり渡すとシーラが申し訳なさそうに聞いてくる

「レオールがあげるって言ってるから気にしないで」

「こんないいモノのつくり方を教えてもらった上にありがたいことだ」

「ふふ…じゃぁ今度から肉と魚を交換してもらうってことでよろしくね?」

「こっちにとってもありがたい話だからな。それは大歓迎だ」

「俺も頑張って漁の手伝いする。そのうち俺が捕った魚とレオールの狩った肉を交換しような」

「約束?」

「ああ、約束だ」

2人が互いに交換し合う様になるのは少し先のことになる

何よりこの世界で初めて親しくなった一家とはこの先もいい関係が築けそうでよかった

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